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第92話 ティータイム、再び
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ライブを終えた翌日、俺は大聖堂の中庭にやってきた。前に事件があった場所が目に入らないように席が設けられており、すでにレティシアとミレーヌは着席していた。
「お! リリス! こっちだ」
俺に気付いたレティシアが手招きしてくれる。
「よく来たな。座れよ」
「うん」
俺が空いている席に座るなり、レティシアが話を切り出してきた。
「よう。またスカったそうじゃねーか」
「え? どうしてそれを……?」
「そりゃあ、アスタルテ教会だって一枚かんでるからな。情報はいくらでも入ってくるぜ」
「そ、そっか。うん。そう簡単には上手くいかないと思っていたけど……」
「これでたしか四度目だっけか? 連中、相当鼻が利くみてぇだな」
「そうなの。ちゃんと準備してたんだけど……」
「あらましは聞いてるぜ。雑貨店がもぬけの殻だったんだってな」
「うん」
「で? あたしらは何をすればいいんだ?」
「ええっ?」
「驚くところか? アルテナ様にとって大事な麻薬の捜査で盛大に空振りしたんだ。で、昨日の今日でここに来たっつーことは、あたしらになんか助けてほしいんだろ?」
「う、うん。まあ、そうなんだけど……」
「で? なんだ?」
「実はね。ちょっと魔法と魔道具について教えて欲しいの」
「魔法? 魔法はリリスのほうが得意なんじゃねーか? エルフなんだしよ。この間は空まで飛んでたじゃねーか?」
「そ、そうじゃなくて、たとえば誰かを操ったりとか、考えていることがわかったりとか、そういう魔法ってあるのかなって」
「ん? なんだそれ? 他人を操る魔法なんて聞いたことねーな。考えてることが分かるとか、それこそ神って呼ばれるような存在じゃねーと無理じゃねーか?」
「そうなの?」
「ああ。当たり前だろ。そもそも魔法ってのは、神や精霊に力を借りてるだけだからな。あ! まあ、エルフは違うのかもしれねぇが……」
え? そうなの? ということは空を飛んだのは駄女神の力を借りたってことか?
いや、だがそんな感覚は一切なかったぞ。魔法を使うと腹が減るってことは、自分の力を使ってるんじゃないのか?
「おい? 聞いてるか?」
「う、うん」
「で、どうしたんだ? そんなあり得ねえ魔法があるか聞いてくるなんて」
「うん。実はね。どうやって私たちが捜査に踏み込むことが分かったのか分からなくって……」
「たまたまじゃねーのか?」
「一回ならそうかもしれないけど、毎回らしいの。だから情報がどこかから漏れてるんじゃないかって……」
「で、悩んだ結果、誰かが操られたって思ったのか?」
「うん……」
「あ、あはははははっ」
それを聞いたレティシアは腹を抱えて笑い始めた。
「え? レティシア?」
「いやぁ、悪い悪い。リリス、お前本当にいい奴だな。いいか? そういう場合だったらまずは誰かが裏切ってるって考えるのが普通だと思うぜ。なぁ?」
「うん、そうだね。リリス、私もレティの言うとおりだと思うよ」
「ううっ……じゃ、じゃあ盗聴しているとか?」
「盗聴ってなんだ?」
「ほら、遠くで喋っている声を聞くとか、部屋の中に仕掛けておいて話し声を記録するとか……」
「おいおい、声を記録するんだったらそれはアルテナ様の司る分野だろ? アルテナ様の神器ならまだしも、普通は無理だと思うぜ? アルテナ様が麻薬の密売組織に協力してるっつーんなら別だろうけどよ」
た、たしかに。いくら駄女神でもさすがにそれはないだろう。
「あと、遠くから声を聞くってのも多分無理だな」
「え? どうして? 遠くの声を大きくすれば聞こえるんじゃないの?」
「ああ、音を大きくするっていう魔法はあるな」
「ならその応用で……」
「いや、それは無理だぜ」
「どうして?」
「どうしてって、そりゃあくまで音を大きくするだけだからな」
「え? どういうこと?」
「たとえばだ。この中庭の反対側でその魔法を使ったとするだろ? そうすれば今あたしが喋った声はたしかに大きくなって聞こえるはずだ」
「なら……」
「でもな。あたしの声以外も一緒に大きくなるんだよ」
「え?」
「要するに、遠くの音を聞こうと思っても、近くのより大きい音のほうがもっと大きくなるんだ。だから使い物にならねぇだろうな」
「う……じゃ、じゃあネズミとか昆虫を操るっていうのは……」
「それも無理だろうな。人間を操るよりはまだできるかもしれねーが、普通は無理だぜ。そんなん聞いたこともねぇ」
「じゃ、じゃあ気配を消すとか、姿が見えなくなるとかは?」
「そうだなぁ。意味ねぇと思うが、気配を消すくらいならできるかもしれねーな。でも、姿を見えなくするのは無理だぜ」
「え? それってどういう……」
「だって、姿が見えなくなるってことは、そいつを見ている奴全員がそいつを認識できなくするってことだろ? それって人を操るのと根本的には同じだからな」
「あ……」
「だから、神じゃなきゃ無理だろうな」
「じゃ、じゃあ気配を消す魔法は……」
「気配を消すっつーのが音を消すってことならできるぜ。そういうことなら音を大きくするのの反対をすればいいだけだ。だから魔道具を作れば可能性はあるかもな」
「じゃ、じゃあその可能性も……」
「いや、だから意味ねぇって」
「え? なんで?」
「なんでって……魔法を使うと痕跡が残るだろ? だからすぐにバレるはずだぜ」
「え? 痕跡?」
「ん? 魔法が使えるのに痕跡が見えねぇのか? じゃあ、あそこを見て見ろよ」
そう言ってレティシアは大聖堂の中を指さした。その先には石造りの壁があるが……おや? 何やらうっすらと白いものが?
「ほら、あっただろ? あれがあたしの治療の痕跡だぜ。あのあたりにあたしの治療室があるからな」
「消えないの?」
「いや、何日かすれば消えるぜ? でもすぐには消えねぇ。ゆっくり消えるんだ。だからもし近くで音を消す魔法なんか使われたら、リリスは一発で気付くはずだ。帰ったら気にして見てみるといいぜ」
「う……」
ぐぬぬ。せっかく視聴者さんからもらったアドバイスが全否定されてしまった。
「お! リリス! こっちだ」
俺に気付いたレティシアが手招きしてくれる。
「よく来たな。座れよ」
「うん」
俺が空いている席に座るなり、レティシアが話を切り出してきた。
「よう。またスカったそうじゃねーか」
「え? どうしてそれを……?」
「そりゃあ、アスタルテ教会だって一枚かんでるからな。情報はいくらでも入ってくるぜ」
「そ、そっか。うん。そう簡単には上手くいかないと思っていたけど……」
「これでたしか四度目だっけか? 連中、相当鼻が利くみてぇだな」
「そうなの。ちゃんと準備してたんだけど……」
「あらましは聞いてるぜ。雑貨店がもぬけの殻だったんだってな」
「うん」
「で? あたしらは何をすればいいんだ?」
「ええっ?」
「驚くところか? アルテナ様にとって大事な麻薬の捜査で盛大に空振りしたんだ。で、昨日の今日でここに来たっつーことは、あたしらになんか助けてほしいんだろ?」
「う、うん。まあ、そうなんだけど……」
「で? なんだ?」
「実はね。ちょっと魔法と魔道具について教えて欲しいの」
「魔法? 魔法はリリスのほうが得意なんじゃねーか? エルフなんだしよ。この間は空まで飛んでたじゃねーか?」
「そ、そうじゃなくて、たとえば誰かを操ったりとか、考えていることがわかったりとか、そういう魔法ってあるのかなって」
「ん? なんだそれ? 他人を操る魔法なんて聞いたことねーな。考えてることが分かるとか、それこそ神って呼ばれるような存在じゃねーと無理じゃねーか?」
「そうなの?」
「ああ。当たり前だろ。そもそも魔法ってのは、神や精霊に力を借りてるだけだからな。あ! まあ、エルフは違うのかもしれねぇが……」
え? そうなの? ということは空を飛んだのは駄女神の力を借りたってことか?
いや、だがそんな感覚は一切なかったぞ。魔法を使うと腹が減るってことは、自分の力を使ってるんじゃないのか?
「おい? 聞いてるか?」
「う、うん」
「で、どうしたんだ? そんなあり得ねえ魔法があるか聞いてくるなんて」
「うん。実はね。どうやって私たちが捜査に踏み込むことが分かったのか分からなくって……」
「たまたまじゃねーのか?」
「一回ならそうかもしれないけど、毎回らしいの。だから情報がどこかから漏れてるんじゃないかって……」
「で、悩んだ結果、誰かが操られたって思ったのか?」
「うん……」
「あ、あはははははっ」
それを聞いたレティシアは腹を抱えて笑い始めた。
「え? レティシア?」
「いやぁ、悪い悪い。リリス、お前本当にいい奴だな。いいか? そういう場合だったらまずは誰かが裏切ってるって考えるのが普通だと思うぜ。なぁ?」
「うん、そうだね。リリス、私もレティの言うとおりだと思うよ」
「ううっ……じゃ、じゃあ盗聴しているとか?」
「盗聴ってなんだ?」
「ほら、遠くで喋っている声を聞くとか、部屋の中に仕掛けておいて話し声を記録するとか……」
「おいおい、声を記録するんだったらそれはアルテナ様の司る分野だろ? アルテナ様の神器ならまだしも、普通は無理だと思うぜ? アルテナ様が麻薬の密売組織に協力してるっつーんなら別だろうけどよ」
た、たしかに。いくら駄女神でもさすがにそれはないだろう。
「あと、遠くから声を聞くってのも多分無理だな」
「え? どうして? 遠くの声を大きくすれば聞こえるんじゃないの?」
「ああ、音を大きくするっていう魔法はあるな」
「ならその応用で……」
「いや、それは無理だぜ」
「どうして?」
「どうしてって、そりゃあくまで音を大きくするだけだからな」
「え? どういうこと?」
「たとえばだ。この中庭の反対側でその魔法を使ったとするだろ? そうすれば今あたしが喋った声はたしかに大きくなって聞こえるはずだ」
「なら……」
「でもな。あたしの声以外も一緒に大きくなるんだよ」
「え?」
「要するに、遠くの音を聞こうと思っても、近くのより大きい音のほうがもっと大きくなるんだ。だから使い物にならねぇだろうな」
「う……じゃ、じゃあネズミとか昆虫を操るっていうのは……」
「それも無理だろうな。人間を操るよりはまだできるかもしれねーが、普通は無理だぜ。そんなん聞いたこともねぇ」
「じゃ、じゃあ気配を消すとか、姿が見えなくなるとかは?」
「そうだなぁ。意味ねぇと思うが、気配を消すくらいならできるかもしれねーな。でも、姿を見えなくするのは無理だぜ」
「え? それってどういう……」
「だって、姿が見えなくなるってことは、そいつを見ている奴全員がそいつを認識できなくするってことだろ? それって人を操るのと根本的には同じだからな」
「あ……」
「だから、神じゃなきゃ無理だろうな」
「じゃ、じゃあ気配を消す魔法は……」
「気配を消すっつーのが音を消すってことならできるぜ。そういうことなら音を大きくするのの反対をすればいいだけだ。だから魔道具を作れば可能性はあるかもな」
「じゃ、じゃあその可能性も……」
「いや、だから意味ねぇって」
「え? なんで?」
「なんでって……魔法を使うと痕跡が残るだろ? だからすぐにバレるはずだぜ」
「え? 痕跡?」
「ん? 魔法が使えるのに痕跡が見えねぇのか? じゃあ、あそこを見て見ろよ」
そう言ってレティシアは大聖堂の中を指さした。その先には石造りの壁があるが……おや? 何やらうっすらと白いものが?
「ほら、あっただろ? あれがあたしの治療の痕跡だぜ。あのあたりにあたしの治療室があるからな」
「消えないの?」
「いや、何日かすれば消えるぜ? でもすぐには消えねぇ。ゆっくり消えるんだ。だからもし近くで音を消す魔法なんか使われたら、リリスは一発で気付くはずだ。帰ったら気にして見てみるといいぜ」
「う……」
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