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第96話 日本では……(18)
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「おい、にっしーってお前だろ」
リリスのライブ配信の翌日の放課後、剛たちはいつもどおり校舎裏に集まっていたが、西川の姿を見るなり山本がそう切り出した。
「え? ど、どうしてそれを……」
動揺した様子の西川に山本は呆れた表情を浮かべる。
「だってお前、自分で警官のおじさんに見てもらうって言ってたじゃん。あんなコメントしたらバレるに決まってるだろ?」
「う……で、でも……」
「まあ、俺ら以外知らないから良くね?」
「だな。あ、でも委員長にもバレてるんじゃね?」
「あ! でもまあ、委員長なら」
「たしかに」
「悪いことするわけないよな」
そう言って剛たちはうんうんと頷き合った。
「でさ。どう思う?」
「何が?」
「ほら、犯人だよ。リリちゃんは隊長さんも調べるって言ってたけど」
「どうだろうなぁ。っていうか、隊長って誰だよって感じ? これまで全然動画に出てきてないし、こいつが犯人ですって言われても知らない奴じゃなぁ」
「だな。精々さ。規律の鬼とかいう副長くらいまでじゃね? 許せるの。あいつなら一応、動画には出てきてた し」
「たしかに。一度も出てきてない隊長が犯人だと唐突過ぎてヤバいな」
「だろ? でもどうせならさ。この国の王様が麻薬売ってましたってほうが面白そうじゃね?」
「ぶはっ。一気に話がデカくなったな」
「でも、話はデカいほうが面白いって」
「いやいや、限度があるだろ」
そんな風に笑いながら話している剛たちのところへ、またもや両手にゴミ袋をぶら下げた藤田がやってきた。
「あら? もしかして土曜日のリリちゃんのライブの話?」
「あ、委員長。そうそう。委員長も見た?」
「ううん。ちょうどその時間、出掛けてたのよね。相変わらずアーカイブもないし、どんな感じだったの?」
「それがさ」
剛たちはリリスのライブの様子を説明した。
「ふーん。そうなの」
藤田がじっと考えるそぶりを見せると、剛たちは固唾を飲んでその様子を見守る。するとそれに気づいた藤田は驚き、そして少し頬を赤らめた。
「ちょ、ちょっと、なんでそんな真剣にあたしのことを見てるのよ」
「いや、だって……」
「ほら、委員長ならひょっとして裏切り者が誰かわかったりするのかなって……」
「え? そんなの分かるわけないじゃない。ライブ、見てもいないのよ?」
「そっか。そうだよな……」
藤田の回答に剛たちは一様にがっかりした表情になった。それに対して藤田はなぜか繕うように早口で話し始める。
「そ、そうね。確信があるわけじゃないけど、やっぱりその副長は怪しいかもしれないわね。だって、すぐに処刑しちゃうんでしょ? もちろん向こうの世界の常識だっていう設定なのかもしれないけど、ほら、こういうのってバックにはちゃんとしたシナリオライターがいるのよ。だからその常識っていう設定を逆手にとって、実は口封じでしたってなったらあたしたちはビックリするじゃない。それにほら! いい人って感じに紹介されてる人がまさかの犯人って、やっぱりミステリーなんかでもよくある展開だもの」
「あ! そっか! シナリオライターがいるんだもんな」
「たしかに。そう言われてみると、副長が犯人だと面白いかもな」
「そ、そうよ。だからシナリオライターがどうやってあたしたちを錯覚させようとしているかを考えたら答えなんて自ずとわかるものよ」
「さすが委員長。頭いいな」
「そ、それほどでもないわよ。それに、これはただの予想だからね。外れてるかもしれないわよ」
「そうなんだ。じゃあ他にはどんな予想があるの?」
「え? 他に? そうね。あとは、実は警備隊じゃなくて近衛隊のほうに裏切り者がいるってパターンも面白いんじゃない? ほら、リリちゃんと一緒に行動している女の人がいるじゃない。あの人が実は麻薬組織が送り込んだスパイだったとか。それで副長さんは実は近衛隊の妨害をどうにかしようとしていた人で、このあと失踪してやっぱり副長が、ってなったところで実は拉致されてたことがバレるとか」
「え? でも、前から情報が漏れてたんじゃなかったってっけ?」
「それはスパイが一人じゃないからよ。本当は色んな所にスパイがいて、近衛隊の偉い人がリリちゃんが捜査チームに加わるっていうのを聞いて、それで堂々とスパイを送り込んできたっていう話。で、二チームに分けたってことはスパイが疑われているって判断して、今回は末端で問題ないから逮捕させちゃって、それで視聴者を欺くっていうのもアリじゃない?」
早口でまくしたてる藤田の推理を剛たちは尊敬のまなざしで見ていた。
「え? な、何よ。予想だからね?」
「いや、さすが委員長だ。よくすぐにそんな色々考えつくよな」
「ホントホント」
「そ、そんな……ほ、ほら。まだまだ分からないし、それに予想しすぎてもつまらなくなっちゃうわよ」
明らかに照れ隠しをしていると分かる態度で藤田はそうまくしたてる。
「あ! あたし、ゴミ捨てに行かなきゃ。じゃあね」
慌てた様子で藤田はそう言うとゴミ袋を持ち上げて立ち去ろうとしたが、それを西川が呼び止める。
「おーい! 委員長! 今日も茂手内が手伝いたいってよ!」
「え? 本当? ありがとう。じゃあ、これお願いね」
藤田は声のトーンを一段上げ、嬉しそうな表情で剛にゴミ袋を差し出した。
「あ、ああ。そっちも持つよ」
「いいの? 悪いわね」
こうして剛は藤田の持っていたもう一つのゴミ袋を受け取り、そのままゴミ捨て場へと歩いていくのだった。
================
※作中では描写していませんが、リリスは定期的に日常の様々な動画を公開しており、その中には副長やレオニーも登場していました。
リリスのライブ配信の翌日の放課後、剛たちはいつもどおり校舎裏に集まっていたが、西川の姿を見るなり山本がそう切り出した。
「え? ど、どうしてそれを……」
動揺した様子の西川に山本は呆れた表情を浮かべる。
「だってお前、自分で警官のおじさんに見てもらうって言ってたじゃん。あんなコメントしたらバレるに決まってるだろ?」
「う……で、でも……」
「まあ、俺ら以外知らないから良くね?」
「だな。あ、でも委員長にもバレてるんじゃね?」
「あ! でもまあ、委員長なら」
「たしかに」
「悪いことするわけないよな」
そう言って剛たちはうんうんと頷き合った。
「でさ。どう思う?」
「何が?」
「ほら、犯人だよ。リリちゃんは隊長さんも調べるって言ってたけど」
「どうだろうなぁ。っていうか、隊長って誰だよって感じ? これまで全然動画に出てきてないし、こいつが犯人ですって言われても知らない奴じゃなぁ」
「だな。精々さ。規律の鬼とかいう副長くらいまでじゃね? 許せるの。あいつなら一応、動画には出てきてた し」
「たしかに。一度も出てきてない隊長が犯人だと唐突過ぎてヤバいな」
「だろ? でもどうせならさ。この国の王様が麻薬売ってましたってほうが面白そうじゃね?」
「ぶはっ。一気に話がデカくなったな」
「でも、話はデカいほうが面白いって」
「いやいや、限度があるだろ」
そんな風に笑いながら話している剛たちのところへ、またもや両手にゴミ袋をぶら下げた藤田がやってきた。
「あら? もしかして土曜日のリリちゃんのライブの話?」
「あ、委員長。そうそう。委員長も見た?」
「ううん。ちょうどその時間、出掛けてたのよね。相変わらずアーカイブもないし、どんな感じだったの?」
「それがさ」
剛たちはリリスのライブの様子を説明した。
「ふーん。そうなの」
藤田がじっと考えるそぶりを見せると、剛たちは固唾を飲んでその様子を見守る。するとそれに気づいた藤田は驚き、そして少し頬を赤らめた。
「ちょ、ちょっと、なんでそんな真剣にあたしのことを見てるのよ」
「いや、だって……」
「ほら、委員長ならひょっとして裏切り者が誰かわかったりするのかなって……」
「え? そんなの分かるわけないじゃない。ライブ、見てもいないのよ?」
「そっか。そうだよな……」
藤田の回答に剛たちは一様にがっかりした表情になった。それに対して藤田はなぜか繕うように早口で話し始める。
「そ、そうね。確信があるわけじゃないけど、やっぱりその副長は怪しいかもしれないわね。だって、すぐに処刑しちゃうんでしょ? もちろん向こうの世界の常識だっていう設定なのかもしれないけど、ほら、こういうのってバックにはちゃんとしたシナリオライターがいるのよ。だからその常識っていう設定を逆手にとって、実は口封じでしたってなったらあたしたちはビックリするじゃない。それにほら! いい人って感じに紹介されてる人がまさかの犯人って、やっぱりミステリーなんかでもよくある展開だもの」
「あ! そっか! シナリオライターがいるんだもんな」
「たしかに。そう言われてみると、副長が犯人だと面白いかもな」
「そ、そうよ。だからシナリオライターがどうやってあたしたちを錯覚させようとしているかを考えたら答えなんて自ずとわかるものよ」
「さすが委員長。頭いいな」
「そ、それほどでもないわよ。それに、これはただの予想だからね。外れてるかもしれないわよ」
「そうなんだ。じゃあ他にはどんな予想があるの?」
「え? 他に? そうね。あとは、実は警備隊じゃなくて近衛隊のほうに裏切り者がいるってパターンも面白いんじゃない? ほら、リリちゃんと一緒に行動している女の人がいるじゃない。あの人が実は麻薬組織が送り込んだスパイだったとか。それで副長さんは実は近衛隊の妨害をどうにかしようとしていた人で、このあと失踪してやっぱり副長が、ってなったところで実は拉致されてたことがバレるとか」
「え? でも、前から情報が漏れてたんじゃなかったってっけ?」
「それはスパイが一人じゃないからよ。本当は色んな所にスパイがいて、近衛隊の偉い人がリリちゃんが捜査チームに加わるっていうのを聞いて、それで堂々とスパイを送り込んできたっていう話。で、二チームに分けたってことはスパイが疑われているって判断して、今回は末端で問題ないから逮捕させちゃって、それで視聴者を欺くっていうのもアリじゃない?」
早口でまくしたてる藤田の推理を剛たちは尊敬のまなざしで見ていた。
「え? な、何よ。予想だからね?」
「いや、さすが委員長だ。よくすぐにそんな色々考えつくよな」
「ホントホント」
「そ、そんな……ほ、ほら。まだまだ分からないし、それに予想しすぎてもつまらなくなっちゃうわよ」
明らかに照れ隠しをしていると分かる態度で藤田はそうまくしたてる。
「あ! あたし、ゴミ捨てに行かなきゃ。じゃあね」
慌てた様子で藤田はそう言うとゴミ袋を持ち上げて立ち去ろうとしたが、それを西川が呼び止める。
「おーい! 委員長! 今日も茂手内が手伝いたいってよ!」
「え? 本当? ありがとう。じゃあ、これお願いね」
藤田は声のトーンを一段上げ、嬉しそうな表情で剛にゴミ袋を差し出した。
「あ、ああ。そっちも持つよ」
「いいの? 悪いわね」
こうして剛は藤田の持っていたもう一つのゴミ袋を受け取り、そのままゴミ捨て場へと歩いていくのだった。
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※作中では描写していませんが、リリスは定期的に日常の様々な動画を公開しており、その中には副長やレオニーも登場していました。
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