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第116話 罪の自覚
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「ショーズィさん、教皇はそれほどの魔力を持っているのですか?」
エルドレッド様は慌てた様子でショーズィさんに質問をする。
「え? いや、そんな風には見えませんでしたけど……」
「ですが、ショーズィさんは教皇によって召喚されたのですよね?」
「はい。そうみたいです」
「……妙ですね。別の世界の存在は示唆する文献はいくつもありますが、世界の境界を渡るなど、人族はおろか私たち魔族の魔力を以てしてもまるで足りません。それこそ神でもなければ……」
「それじゃあ、ものすごい人数を集めて協力したんじゃないですか?」
私の疑問にエルドレッド様は首を横に振った。
「多人数で協力して魔法を行使することは現実的に不可能です。魔力の質が少しでも異なれば魔法が暴走してしまいます。完全に同質の魔力を持っているのであれば可能ですが、そんな相手はこの世に一人いるかどうかでしょう。ですからその可能性はほとんどありません」
「そうなんですね。じゃあ、他に強い魔力を持っている人がいたとか?」
「魔力なら団長のほうが多いと思います」
「団長? 団長というのは聖騎士団の団長のことですか?」
ショーズィさんの言葉をエルドレッド様が確認する。
「はい。……あれ? 顔と名前が思い出せない。たしかに会って話をしたはずなのに……」
「……なるほど。そういうことですか」
「そういうこと?」
「あ、いえ。こちらの話です」
エルドレッド様はそう言って話を煙に巻く。
「ホリーさん、私は大丈夫です。どうぞ続けてください」
「あ、はい」
急に話が戻ってきたが、私はショーズィさんの身の上話に興味は全くない。
次の患者さんも待っているし、薬師としての仕事に戻ろう。
「ショーズィさん、他に体調不良はありませんか?」
「……はい」
歯切れが悪いので質問を変えてみる。
「昨晩はきちんと眠れましたか?」
「……いえ。ちょっと色々とフラッシュバックしちゃいまして……」
正気に戻り、罪悪感に駆られているようだ。だが、そればかりはお薬でどうにかしてあげることはできないため、ショーズィさん自身に乗り越えてもらうしかない。
「でははちみつ入りのカモミールティーを寝る前にお出しします」
私にできることといえばこのくらいだ。
「ありがとうございます」
「他には何かありますか?」
「……」
ショーズィさんは黙っている。何かまだ抱えていそうだが、今日のところはこのくらいでいいだろう。
「それじゃあ、私はこれで失礼しますね」
そう言って席を立ち上がろうとすると、ショーズィさんが呼び止めてきた」
「あのっ!」
「はい? なんでしょうか?」
「その、ホリーさんに本当に酷いことをして、すみませんでした。俺、どうしてあんなことを当然のことように思っていたのか分からなくて、でも呪いって言われたら納得したんですけど、でもやっぱりそれは言い訳でしかなくて……」
どうやら本来のショーズィさんはかなり真面目な性格のようだ。
「だから俺、その分は働きます。まだ戦争は続いているんですよね? だったら俺が今までやってしまった分の埋め合わせを!」
だがその真面目さゆえか、おかしな提案をしてきた。
「……もしかして、私たちの側について戦うって言うんですか?」
するとショーズィさんはしっかりと頷いた。
私は患者さんの前だというのに、思わず大きなため息をついてしまった。
「ショーズィさんは今、心に深い傷を負っています。そんな人が戦いに行くなんてことを私は薬師として認めるわけにはいきません。それに裏切って戦ったら人族たちから裏切者扱いされて、あちらに帰れなくなるんじゃないですか? いくら別の世界の人とはいえ、仲のいい人やお世話になった人くらいはいるんじゃないですか?」
「……それは、全部聖導教会の……」
「あ……失礼しました」
「いえ」
私たちの間に気まずい空気が流れた。するとエルドレッド様が代わって話をしてくれる。
「ショーズィさんは現在我々の捕虜です。贖罪しようというその心意気は結構ですが、現実問題として今ショーズィさんをここから出すわけにはいきません。戦争が終わるまではここで大人しくしていてください」
「……はい」
ショーズィさんは力なくうなだれた。
そんなショーズィさんを残し、私たちは病室を後にしたのだった。
◆◇◆
ホリーの姿が鉄格子の向こう側に消えていくのを将司は食い入るようにして見つめていた。
まるで熱病に浮かされているかのようだったが、すぐにハッとなって唇を噛む。
「俺、どうしてあんなことを……。ホリーさんが拒否していたのに無理やり連れて行こうとして、それに顔の前にあんな危険な魔法を展開するなんて……」
自分のしたことが信じられないといった様子でぶつぶつと呟いている。
「ゾンビだって、魔族が生み出しているわけじゃないって分かってたのに……」
そして拳をぐっと強く握る。
「それに俺たちのほうから約束を破って侵略して、大勢の魔族を殺して……」
将司は肩を震わせている。
「それに魔族を殺したくて、居ても立ってもいられなくなるなんて……」
将司はそのままベッドにうつ伏せになり、枕に顔を埋めた。するとすぐに嗚咽が漏れ聞こえてきたのだった。
エルドレッド様は慌てた様子でショーズィさんに質問をする。
「え? いや、そんな風には見えませんでしたけど……」
「ですが、ショーズィさんは教皇によって召喚されたのですよね?」
「はい。そうみたいです」
「……妙ですね。別の世界の存在は示唆する文献はいくつもありますが、世界の境界を渡るなど、人族はおろか私たち魔族の魔力を以てしてもまるで足りません。それこそ神でもなければ……」
「それじゃあ、ものすごい人数を集めて協力したんじゃないですか?」
私の疑問にエルドレッド様は首を横に振った。
「多人数で協力して魔法を行使することは現実的に不可能です。魔力の質が少しでも異なれば魔法が暴走してしまいます。完全に同質の魔力を持っているのであれば可能ですが、そんな相手はこの世に一人いるかどうかでしょう。ですからその可能性はほとんどありません」
「そうなんですね。じゃあ、他に強い魔力を持っている人がいたとか?」
「魔力なら団長のほうが多いと思います」
「団長? 団長というのは聖騎士団の団長のことですか?」
ショーズィさんの言葉をエルドレッド様が確認する。
「はい。……あれ? 顔と名前が思い出せない。たしかに会って話をしたはずなのに……」
「……なるほど。そういうことですか」
「そういうこと?」
「あ、いえ。こちらの話です」
エルドレッド様はそう言って話を煙に巻く。
「ホリーさん、私は大丈夫です。どうぞ続けてください」
「あ、はい」
急に話が戻ってきたが、私はショーズィさんの身の上話に興味は全くない。
次の患者さんも待っているし、薬師としての仕事に戻ろう。
「ショーズィさん、他に体調不良はありませんか?」
「……はい」
歯切れが悪いので質問を変えてみる。
「昨晩はきちんと眠れましたか?」
「……いえ。ちょっと色々とフラッシュバックしちゃいまして……」
正気に戻り、罪悪感に駆られているようだ。だが、そればかりはお薬でどうにかしてあげることはできないため、ショーズィさん自身に乗り越えてもらうしかない。
「でははちみつ入りのカモミールティーを寝る前にお出しします」
私にできることといえばこのくらいだ。
「ありがとうございます」
「他には何かありますか?」
「……」
ショーズィさんは黙っている。何かまだ抱えていそうだが、今日のところはこのくらいでいいだろう。
「それじゃあ、私はこれで失礼しますね」
そう言って席を立ち上がろうとすると、ショーズィさんが呼び止めてきた」
「あのっ!」
「はい? なんでしょうか?」
「その、ホリーさんに本当に酷いことをして、すみませんでした。俺、どうしてあんなことを当然のことように思っていたのか分からなくて、でも呪いって言われたら納得したんですけど、でもやっぱりそれは言い訳でしかなくて……」
どうやら本来のショーズィさんはかなり真面目な性格のようだ。
「だから俺、その分は働きます。まだ戦争は続いているんですよね? だったら俺が今までやってしまった分の埋め合わせを!」
だがその真面目さゆえか、おかしな提案をしてきた。
「……もしかして、私たちの側について戦うって言うんですか?」
するとショーズィさんはしっかりと頷いた。
私は患者さんの前だというのに、思わず大きなため息をついてしまった。
「ショーズィさんは今、心に深い傷を負っています。そんな人が戦いに行くなんてことを私は薬師として認めるわけにはいきません。それに裏切って戦ったら人族たちから裏切者扱いされて、あちらに帰れなくなるんじゃないですか? いくら別の世界の人とはいえ、仲のいい人やお世話になった人くらいはいるんじゃないですか?」
「……それは、全部聖導教会の……」
「あ……失礼しました」
「いえ」
私たちの間に気まずい空気が流れた。するとエルドレッド様が代わって話をしてくれる。
「ショーズィさんは現在我々の捕虜です。贖罪しようというその心意気は結構ですが、現実問題として今ショーズィさんをここから出すわけにはいきません。戦争が終わるまではここで大人しくしていてください」
「……はい」
ショーズィさんは力なくうなだれた。
そんなショーズィさんを残し、私たちは病室を後にしたのだった。
◆◇◆
ホリーの姿が鉄格子の向こう側に消えていくのを将司は食い入るようにして見つめていた。
まるで熱病に浮かされているかのようだったが、すぐにハッとなって唇を噛む。
「俺、どうしてあんなことを……。ホリーさんが拒否していたのに無理やり連れて行こうとして、それに顔の前にあんな危険な魔法を展開するなんて……」
自分のしたことが信じられないといった様子でぶつぶつと呟いている。
「ゾンビだって、魔族が生み出しているわけじゃないって分かってたのに……」
そして拳をぐっと強く握る。
「それに俺たちのほうから約束を破って侵略して、大勢の魔族を殺して……」
将司は肩を震わせている。
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