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雲より高い場所
九話 : スピーチの日、求めた変革
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僕は今日、その日を迎えた。
今日が来るのはあまりに早くて、あまりに突然だった。
空は曇っていたが、果てしなく遠くにある陽の光は届いていて、雲の上の晴天を僕に深く認識させた。
多分、今の僕は落ち着きから最も遠い存在だ。
心臓は嵐の日の海みたいに、大きく荒れていた。
僕は今、明確に緊張していて、山で壊れかけていた気持ちが修復されてしまったようだった。
体も鎖で縛られたみたいに重かった。
本当に上手くできるのか不安になったが、練習を思い出しながら自分に対して、呪文のように上手くいくと言い聞かせながらスピーチまでの時間を過ごした。
呪文のような言い聞かせと緊張のせいで、午前の授業は全く頭に入ってこなかった。
それをダメなことだと思うほどの余裕もなかった。
昼休みに読みなれた原稿を見直したが、全く違う文章に思えてしまった。
そして、昼休みも流れるように終わり、全校生徒が体育館に集められた。
冷たい体育館に人が敷き詰められ、一瞬で温度が上がった気がした。
スピーチをする人は体育館の左側に整列をした。
事務的な始まりの挨拶が終わり、ついにスピーチが始まった。
立候補者と応援演説者が壇上に上がり、饒舌に話を進めてゆく。
それに伴って、僕の緊張感も増加していった。
僕の前の人が段々といなくなっていって僕が先頭になった。
今の人のスピーチが終わったら、いよいよ僕の番だ。
押し殺そうとしても、殺せないほどに強い不安が僕を支配する。
そして、気持ちが整わないまま、僕の番を迎えた。
朝陽がスピーチを始めた。流暢に話すその姿は何一つ悪いところはなくて、ただかっこよくて、僕もそうなりたいと望んだ。
朝陽のスピーチが終わり、僕のスピーチが始まった。
だが、思うように言葉が出なかった。
マイクは僕の心臓の音だけを拾っていた。
僕が求めた変革がとてもとても、恐ろしかった。
その時、朝陽は僕の背中を弱い力で強い思いを込めて、ぶん殴った。
僕は、はっとして、山に行った時と同じ感覚を味わった。
不安も緊張も消え、縛っていた鎖がなくなり、軽くなって、雲の上まで行けそうだった。
朝陽のおかげで、弱い自分が壊れた気がした。
背中を向けたまま、声には出さず朝陽に礼を言って、スピーチを始めた。
朝陽や他の人ほど上手くはないが、不安も緊張もなく、笑って過去一番のスピーチができた。
最高の気分だった。
スピーチを終えた僕らは、その場を離れた。
そして、すぐに次の人がスピーチを始めた。
僕は元の位置に戻ったあと
「ありがとな」
とぎりぎり朝陽に聞こえる声でそう言った。
朝陽は笑顔を見せたが、何も言わなかった。
そして、全員のスピーチが終わり、投票が始まった。
結果は後日公表されるらしい。
いつもより多く心臓が動いていたが、緊張によるものではなかった。
雲は重みを増して、雨が降り始めたが、今の僕には晴れが見えた。
僕は最高の気分のまま今日を終えて、一瞬で公表の日が訪れた。
いつも通りに動く時計を見ながら身支度を終え、学校に着くと、当選をした人を丁寧に書いた紙が張り出されていた。
僕は躊躇わず、生徒会長の欄を見た。
そこに書かれていた名前は予想通りにも、予想外にも思えるものだった。
今日が来るのはあまりに早くて、あまりに突然だった。
空は曇っていたが、果てしなく遠くにある陽の光は届いていて、雲の上の晴天を僕に深く認識させた。
多分、今の僕は落ち着きから最も遠い存在だ。
心臓は嵐の日の海みたいに、大きく荒れていた。
僕は今、明確に緊張していて、山で壊れかけていた気持ちが修復されてしまったようだった。
体も鎖で縛られたみたいに重かった。
本当に上手くできるのか不安になったが、練習を思い出しながら自分に対して、呪文のように上手くいくと言い聞かせながらスピーチまでの時間を過ごした。
呪文のような言い聞かせと緊張のせいで、午前の授業は全く頭に入ってこなかった。
それをダメなことだと思うほどの余裕もなかった。
昼休みに読みなれた原稿を見直したが、全く違う文章に思えてしまった。
そして、昼休みも流れるように終わり、全校生徒が体育館に集められた。
冷たい体育館に人が敷き詰められ、一瞬で温度が上がった気がした。
スピーチをする人は体育館の左側に整列をした。
事務的な始まりの挨拶が終わり、ついにスピーチが始まった。
立候補者と応援演説者が壇上に上がり、饒舌に話を進めてゆく。
それに伴って、僕の緊張感も増加していった。
僕の前の人が段々といなくなっていって僕が先頭になった。
今の人のスピーチが終わったら、いよいよ僕の番だ。
押し殺そうとしても、殺せないほどに強い不安が僕を支配する。
そして、気持ちが整わないまま、僕の番を迎えた。
朝陽がスピーチを始めた。流暢に話すその姿は何一つ悪いところはなくて、ただかっこよくて、僕もそうなりたいと望んだ。
朝陽のスピーチが終わり、僕のスピーチが始まった。
だが、思うように言葉が出なかった。
マイクは僕の心臓の音だけを拾っていた。
僕が求めた変革がとてもとても、恐ろしかった。
その時、朝陽は僕の背中を弱い力で強い思いを込めて、ぶん殴った。
僕は、はっとして、山に行った時と同じ感覚を味わった。
不安も緊張も消え、縛っていた鎖がなくなり、軽くなって、雲の上まで行けそうだった。
朝陽のおかげで、弱い自分が壊れた気がした。
背中を向けたまま、声には出さず朝陽に礼を言って、スピーチを始めた。
朝陽や他の人ほど上手くはないが、不安も緊張もなく、笑って過去一番のスピーチができた。
最高の気分だった。
スピーチを終えた僕らは、その場を離れた。
そして、すぐに次の人がスピーチを始めた。
僕は元の位置に戻ったあと
「ありがとな」
とぎりぎり朝陽に聞こえる声でそう言った。
朝陽は笑顔を見せたが、何も言わなかった。
そして、全員のスピーチが終わり、投票が始まった。
結果は後日公表されるらしい。
いつもより多く心臓が動いていたが、緊張によるものではなかった。
雲は重みを増して、雨が降り始めたが、今の僕には晴れが見えた。
僕は最高の気分のまま今日を終えて、一瞬で公表の日が訪れた。
いつも通りに動く時計を見ながら身支度を終え、学校に着くと、当選をした人を丁寧に書いた紙が張り出されていた。
僕は躊躇わず、生徒会長の欄を見た。
そこに書かれていた名前は予想通りにも、予想外にも思えるものだった。
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