15 / 35
ジェームズトンプソンと深紅の男
決死の侵入
しおりを挟む
「リーパー刑事!」
レオンは真摯な顔で彼に迫った。
「まったく、今度はなんだね」
リーパーは、僕たちの行動など気にも留めていないようだった。
「ジェームズと、教授の居場所が分かったんです!」
レオンがそう言い放つも、リーパーは見下したような目つきで「ふむ」と漏らすばかり。
「とりあえず、聞こうじゃないか。私はジェームズなどとは違って、子供だからといって無視したりはしないからね」
僕たちは、身振り手振りでトンプソンのものらしき血痕、積荷目録、出航記録について説明した。リーパーは終始上から目線だったが、ちゃんと理解してくれているようだった。
「君たち、なかなかやるじゃないか」
「だが証拠が薄いぞ。その血痕とやらは調べてみるが、今のところ部隊は動かせない」
「そんな!」
僕は思わず声を上げた。
「なら俺たちだけで行きますよ!」
レオンがもっと大きな声で言い、リーパーに背を向けて去ろうとする──僕も後を追おうとした。だが歩みを進める前に、肩に力強く手を置かれた。
「気を付けることだ」
そう後ろから囁かれた──返答しないまま、レオンの後に続いて港を後にした。
「貨物船は、ここからそう遠くない別の港に停まってる。国境はまだ越えていない。車で向かっても間に合うと思う」
「分かった。またタクシーを拾わないとな」
大きな道路に出て手を伸ばし、タクシーを待つ間──レオンはやけに神妙な顔になっていた。
「チャック……覚悟は出来てるか? 計画は船に侵入して、二人を助け出す。それだけだ。だけど、ほぼ確実に危険が伴うぞ」
「一人で背負わせたりしないさ」
と僕は頷き、苦笑いしてみせた──タクシーが停まった。地獄へのものとも見て取れるドアが開き、僕たちは息をついて乗り込んだ。
夜は更け、貨物船の影が霧に浮かぶ。乗り込むための橋は降ろされていない。貨物船は巨大で、ときおり波に打たれて派手な衝撃音を出している。
「さて、どうやって侵入するんだ?」
僕は挑戦するように囁いた。
「船の碇についている鎖を伝っていくぞ」
「おい正気か!?」
「ここへ来て侵入しようとしている時点で、とうに正気じゃないだろ!」
レオンは軽く怒鳴り、その「鎖」を掴みに行くためだと言って、大きく息を吸って堤防の縁を蹴り、海に飛び込んだ。
しばらく不安げに水面を眺めていたが、船の甲板へとつながる鎖全体に目を凝らしてみると、中間あたりで必死によじ登るレオンが見えた。
「さあ、来い!」
息をのみ、レオンとは対照的に、堤防に腰かけ徐々に海水に浸かっていった。水は究極という程ではないがとても冷たく、瞬く間に僕は凍え始めた。
震える体をがむしゃらに動かし、鎖へとたどり着いた。レオンはすでに甲板まで数歩のところにいる。水から上がっても、体は激しく痙攣していて、伝っていくのは至難だった。
〈守りたい──〉
その言葉を呪詛のように頭で繰り返し唱え、手足を動かしていく。か細いうなり声を上げまくり、喉がボロボロになっていく。
「なんだろう?」
僕でもレオンでもない声が、すぐ近くから響いた。
僕は痙攣を気合いで鎮め、その男が去るのを待っていた──
「だれなんだよ、君は!」
男がヒステリーを起こした──レオンが見つかってしまったのだ。
幸い、レオンは僕の視界からすぐに消え、甲板に乗り込んだ。男の声は、ちょっとしたうめき声を境に、聞こえなくなった。
なんとか自分も甲板まで上がることに成功し、船の縁にある手すりをくぐった。目の前に横たわっていたのは、記憶の片隅にかろうじて残っていた弱弱しい男──あの古びた城で、リアムという男に威圧されていた奴だ。
つまり、ここにはリアム本人もいる可能性が高い──
錆びた甲板が軋む中、辺りを神経質に見回し、船底へ続く階段を見つけた。静かに降りていくと、一つの重い扉が目に入った。そこからは、正体不明の、不気味なこもった声が、幽霊のように扉を通り抜けて語り掛けてくる。
扉は重く、隙間から薄い光が漏れる。力強く、かつそっと開けてみると──思わずハッと息をのんだ。
なんということか。縄でパイプに固定された、教授と思わしき若い女性と、トンプソンが見えた──そしてもう一人。灰色のローブに深紅の仮面、長身で不気味な笑いを漏らす人物がいた。
あとがき
ここまで読んでいただきありがとうございます!ご意見いただけると嬉しいです!いいね・お気に入り登録もお願いします!
レオンは真摯な顔で彼に迫った。
「まったく、今度はなんだね」
リーパーは、僕たちの行動など気にも留めていないようだった。
「ジェームズと、教授の居場所が分かったんです!」
レオンがそう言い放つも、リーパーは見下したような目つきで「ふむ」と漏らすばかり。
「とりあえず、聞こうじゃないか。私はジェームズなどとは違って、子供だからといって無視したりはしないからね」
僕たちは、身振り手振りでトンプソンのものらしき血痕、積荷目録、出航記録について説明した。リーパーは終始上から目線だったが、ちゃんと理解してくれているようだった。
「君たち、なかなかやるじゃないか」
「だが証拠が薄いぞ。その血痕とやらは調べてみるが、今のところ部隊は動かせない」
「そんな!」
僕は思わず声を上げた。
「なら俺たちだけで行きますよ!」
レオンがもっと大きな声で言い、リーパーに背を向けて去ろうとする──僕も後を追おうとした。だが歩みを進める前に、肩に力強く手を置かれた。
「気を付けることだ」
そう後ろから囁かれた──返答しないまま、レオンの後に続いて港を後にした。
「貨物船は、ここからそう遠くない別の港に停まってる。国境はまだ越えていない。車で向かっても間に合うと思う」
「分かった。またタクシーを拾わないとな」
大きな道路に出て手を伸ばし、タクシーを待つ間──レオンはやけに神妙な顔になっていた。
「チャック……覚悟は出来てるか? 計画は船に侵入して、二人を助け出す。それだけだ。だけど、ほぼ確実に危険が伴うぞ」
「一人で背負わせたりしないさ」
と僕は頷き、苦笑いしてみせた──タクシーが停まった。地獄へのものとも見て取れるドアが開き、僕たちは息をついて乗り込んだ。
夜は更け、貨物船の影が霧に浮かぶ。乗り込むための橋は降ろされていない。貨物船は巨大で、ときおり波に打たれて派手な衝撃音を出している。
「さて、どうやって侵入するんだ?」
僕は挑戦するように囁いた。
「船の碇についている鎖を伝っていくぞ」
「おい正気か!?」
「ここへ来て侵入しようとしている時点で、とうに正気じゃないだろ!」
レオンは軽く怒鳴り、その「鎖」を掴みに行くためだと言って、大きく息を吸って堤防の縁を蹴り、海に飛び込んだ。
しばらく不安げに水面を眺めていたが、船の甲板へとつながる鎖全体に目を凝らしてみると、中間あたりで必死によじ登るレオンが見えた。
「さあ、来い!」
息をのみ、レオンとは対照的に、堤防に腰かけ徐々に海水に浸かっていった。水は究極という程ではないがとても冷たく、瞬く間に僕は凍え始めた。
震える体をがむしゃらに動かし、鎖へとたどり着いた。レオンはすでに甲板まで数歩のところにいる。水から上がっても、体は激しく痙攣していて、伝っていくのは至難だった。
〈守りたい──〉
その言葉を呪詛のように頭で繰り返し唱え、手足を動かしていく。か細いうなり声を上げまくり、喉がボロボロになっていく。
「なんだろう?」
僕でもレオンでもない声が、すぐ近くから響いた。
僕は痙攣を気合いで鎮め、その男が去るのを待っていた──
「だれなんだよ、君は!」
男がヒステリーを起こした──レオンが見つかってしまったのだ。
幸い、レオンは僕の視界からすぐに消え、甲板に乗り込んだ。男の声は、ちょっとしたうめき声を境に、聞こえなくなった。
なんとか自分も甲板まで上がることに成功し、船の縁にある手すりをくぐった。目の前に横たわっていたのは、記憶の片隅にかろうじて残っていた弱弱しい男──あの古びた城で、リアムという男に威圧されていた奴だ。
つまり、ここにはリアム本人もいる可能性が高い──
錆びた甲板が軋む中、辺りを神経質に見回し、船底へ続く階段を見つけた。静かに降りていくと、一つの重い扉が目に入った。そこからは、正体不明の、不気味なこもった声が、幽霊のように扉を通り抜けて語り掛けてくる。
扉は重く、隙間から薄い光が漏れる。力強く、かつそっと開けてみると──思わずハッと息をのんだ。
なんということか。縄でパイプに固定された、教授と思わしき若い女性と、トンプソンが見えた──そしてもう一人。灰色のローブに深紅の仮面、長身で不気味な笑いを漏らす人物がいた。
あとがき
ここまで読んでいただきありがとうございます!ご意見いただけると嬉しいです!いいね・お気に入り登録もお願いします!
0
あなたにおすすめの小説
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
痩せたがりの姫言(ひめごと)
エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。
姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。
だから「姫言」と書いてひめごと。
別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。
語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる