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科学施設の陰謀
リーパーの激怒
しおりを挟む俺は一週間ぶりに、再開したジェームズの事務所に出勤する。レンガのビルは相変わらず不気味で、側面の螺旋階段の軋みが背筋を冷やす。木製の扉に、正式に預かった合鍵を押してみた。
〈カチリ〉
という、なかなか気持ちの良い音がして、俺は建物内に入った。前に俺が汚してしまったカーペットは染み一つ残っておらず、相変わらず廊下にいくつか設置してある複数の扉は、好奇心をそそる。
オフィスに入ると、机に脚を載せ、書類だかなんだかに大雑把に目を通すジェームズがいた。
「来たな」
返事を忘れて、横目で本棚をにらむ──あの怪物のような躍動感あふれる彫刻、ここは外も内もさながら幽霊屋敷のようだ。
赤紫のソファーにドサッと腰かけた。
「なにか、進展はあったんですか? あのブラッドに関して」
「遺憾だが、全くない」
ジェームズは後ろめたそうに、書類で顔を隠した──しばらくして気が変わったのか、書類を少し乱雑に机に落とし、勢いをつけて立ち上がった。
「しかし、君が乗り気になりそうな、興味深い依頼がある。またしてもフェリシアからのものだ」
何だって!──俺はフェリシアの笑顔を思い出し、胸を焦がした。
「正確には、彼女の働く宇宙開発センターからだ。なんでも、新プロジェクトをスパイが狙っているそうだ。プロジェクトとは、新型宇宙服の開発らしい」
彼はため息をつき、続ける。
「困ったことに、その宇宙服の試験体として、僕が推薦されてしまったんだ」
〈へぇ、ジェームズが、宇宙飛行士の恰好をするのか──!〉
「宇宙服?──かっこいいじゃないか!」
適当に褒めたたえてみたが、ジェームズは鼻で笑う。
「これは遊びじゃないぞ。まして見学旅行なんて絶対に思うな。この陰謀にはブラッドが絡んでいる可能性もある」
「は!? 進展はないってさっき言ったじゃないか!」
「あくまで僕の想像だ、囚われ過ぎるな」
そう冷たい声で言うと、漆黒のスーツをはためかせ、オフィスから出ていった。他の部屋に行くのだろうか──
俺の拳が無意識に震える。おそらく、ブラッドという人物が憎いためではなく、純粋に畏怖しているからだ。
ふと外の方から、わめき声が聞こえてきた。が、考え事に集中していた俺は完全に無視していた。近くからドアを強く締める音がして、ようやくそちらに意識を向けた。まもなくオフィスに、烈火の表情をしたリーパー刑事が入って来た。
「私の手帳を返せッ!!」
「あ、そうだったな……」
ぼそりと小さく呟いた。怒涛の勢いでリーパーは迫って来る。
「まぎれもない公務執行妨害だぞ!!」
どうしようかと慌てていると、オフィスの入り口にひっそりとたたずむチャックが見えた。
〈こいつ告げ口したな──まあ、彼に吐くよう脅されたのなら、仕方ないか〉
彼の謝罪を含みつつニヤリとした笑顔を見れて、かえって安心する。なにしろ、あの誘拐事件以来、まともに話をしていなかった──俺たちは、いまリーパーにされているほどではないが、喫茶店の店長に長い叱責を受けた。そのときの気まずい雰囲気がしばらく続いていて、どうにも会えずにいたのだ。
ジェームズが足音荒く、登場する。
「リーパー、一体どういうつもりだ?」
「この子が、私の警察手帳を盗みおったんだ!」
「そうなのか?」
ジェームズは思ったより穏やかに聞いてきた。
「──ええ。港の管理事務所に問い合わせるために、やむを得ず」
「許してやれ。彼がそうしていなければ、あの事件は解決できなかった」
ジェームズは、あたかも他人事のようにそう語った。
「さぁ、これでもう今日はあんたに用はない。さっさと帰ってくれ」
リーパーは顔を引きつらせ、独り言で悪態をつきながら、出ていった。その際、イラついた足取りで螺旋階段を派手に軋ませているのが聞こえた。
「さて、邪魔者はいなくなったし、依頼についてじっくり話し合おうか」
あとがき
ここまで読んでいただきありがとうございます!第三編、「火星の計画」 乞うご期待!いいね・お気に入り登録、お願いします!
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