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科学施設の陰謀
オースティンの情
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次の日は休みだったが、代わりに喫茶店の仕事があった。オースティンがコーヒー豆をすり、俺が運ぶ。チャックはレジを担当していて、彼がときおり客に見せるスマイルは、どうあがいても皮肉めいたものにしか見えなかった。
コーヒーを客に運ぶたび、「ここにジェームズはいないだろうか?」と考えてしまう。あの男は、良くも悪くも人に影響を与えるのがうまい。
何度か往復した後、客が少なくなったタイミングでオースティンが話しかけてきた。
「おいレオン。お前もチャックも最近、仕事が適当になってるぞ」
アハハ、とぎこちなく笑う。なぜ彼はこんな時に限って几帳面になるのか……
「もしかして、副業でもやってんのか?」
少し悩んだ後、思い切って口を割った。
「……いいや、別の仕事を掛け持ちしてるんだ」
「なるほどな。だけど、ミラーは許したのかよ?」
俺は黙り込んでしまった。それも、一番不謹慎な沈黙の仕方だ。笑いをこらえて、視点を漂わせている。
「さてはアイツ、意地の悪い骸骨男が絡んでるんだろ」
「⁉」
なんだなんだ? どうしてわかる? 俺より遥かに探偵みたいじゃないか──
「君こそ、一体どうした? なんで知ってるんだよ⁉」
「ただの地獄耳さ。あの骸骨男が最後に来たとき、お前たち話をしてただろ? それを必死こいて聞いていただけだぜ。俺が分かったのは、アイツが何かを提案して、お前らがそれを了承したってことだ」
俺はため息をつき、ぼそりと呟いた。
「君こそジェームズの助手になるべきだね……」
ふいにオースティンは明るい顔に苦笑いを浮かべた。
「あの男の名前か? 冗談でも勘弁してくれよ、あんな態度の悪い奴といっつも顔を合わせてるなんてまっぴらごめんだぜ」
「ていうか、助手?──ひょっとして、奴は探偵なのか! そんでもってお前らは、その助手になったってわけだ」
「そりゃここの仕事の質も落ちるわな。かなりストレスあるだろ?」
「か、勝手に話を進めるなよ!」
実際、彼は事実しか言っていないが、それを認めたくなかった。あまり詮索されると、ジェームズに叱責されないか不安なのだ。
「ちょくちょく休んでいたのはそのせいだったんだな……間に合っていなければ、力になるぜ」
「そうだな、必要になったら伝えるよ。今は大丈夫。それより、ミラーさんには言っといたけど、俺たちは探偵の仕事で、明日からしばらく宿泊するんだ。その間、君一人で店を回すのは大変だろうから……ごめん。何か解決策があれば良かったんだけど……」
「構わねえさ。まぁなんとかできるだろ」
オースティンはとても凛々しいスマイルをしてみせた。ほんと、いい奴だな──
「とにかく、頑張れよ。もしあのジェームズに乱暴とかされたら、すぐ俺に言ってくれ。俺なりにやり返してやるから」
それを聞くと、心底救われたような気がして目の奥が熱くなった。この言葉は、すぐ近くにいるチャックにも聞こえただろうか? 彼はうつむいて、レジをカタカタいわせている。うっすら見えた彼の唇はへの字に曲がっており、いくつか歯の後がついていた。目をしきりに開閉している──
そして、あっという間に時間は過ぎ、俺とチャックはジェームズの極めて黒い車に乗り込もうとしていた。あぁ、ついに出発のときか。
あとがき
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コーヒーを客に運ぶたび、「ここにジェームズはいないだろうか?」と考えてしまう。あの男は、良くも悪くも人に影響を与えるのがうまい。
何度か往復した後、客が少なくなったタイミングでオースティンが話しかけてきた。
「おいレオン。お前もチャックも最近、仕事が適当になってるぞ」
アハハ、とぎこちなく笑う。なぜ彼はこんな時に限って几帳面になるのか……
「もしかして、副業でもやってんのか?」
少し悩んだ後、思い切って口を割った。
「……いいや、別の仕事を掛け持ちしてるんだ」
「なるほどな。だけど、ミラーは許したのかよ?」
俺は黙り込んでしまった。それも、一番不謹慎な沈黙の仕方だ。笑いをこらえて、視点を漂わせている。
「さてはアイツ、意地の悪い骸骨男が絡んでるんだろ」
「⁉」
なんだなんだ? どうしてわかる? 俺より遥かに探偵みたいじゃないか──
「君こそ、一体どうした? なんで知ってるんだよ⁉」
「ただの地獄耳さ。あの骸骨男が最後に来たとき、お前たち話をしてただろ? それを必死こいて聞いていただけだぜ。俺が分かったのは、アイツが何かを提案して、お前らがそれを了承したってことだ」
俺はため息をつき、ぼそりと呟いた。
「君こそジェームズの助手になるべきだね……」
ふいにオースティンは明るい顔に苦笑いを浮かべた。
「あの男の名前か? 冗談でも勘弁してくれよ、あんな態度の悪い奴といっつも顔を合わせてるなんてまっぴらごめんだぜ」
「ていうか、助手?──ひょっとして、奴は探偵なのか! そんでもってお前らは、その助手になったってわけだ」
「そりゃここの仕事の質も落ちるわな。かなりストレスあるだろ?」
「か、勝手に話を進めるなよ!」
実際、彼は事実しか言っていないが、それを認めたくなかった。あまり詮索されると、ジェームズに叱責されないか不安なのだ。
「ちょくちょく休んでいたのはそのせいだったんだな……間に合っていなければ、力になるぜ」
「そうだな、必要になったら伝えるよ。今は大丈夫。それより、ミラーさんには言っといたけど、俺たちは探偵の仕事で、明日からしばらく宿泊するんだ。その間、君一人で店を回すのは大変だろうから……ごめん。何か解決策があれば良かったんだけど……」
「構わねえさ。まぁなんとかできるだろ」
オースティンはとても凛々しいスマイルをしてみせた。ほんと、いい奴だな──
「とにかく、頑張れよ。もしあのジェームズに乱暴とかされたら、すぐ俺に言ってくれ。俺なりにやり返してやるから」
それを聞くと、心底救われたような気がして目の奥が熱くなった。この言葉は、すぐ近くにいるチャックにも聞こえただろうか? 彼はうつむいて、レジをカタカタいわせている。うっすら見えた彼の唇はへの字に曲がっており、いくつか歯の後がついていた。目をしきりに開閉している──
そして、あっという間に時間は過ぎ、俺とチャックはジェームズの極めて黒い車に乗り込もうとしていた。あぁ、ついに出発のときか。
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