悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ

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19 24歳 ④

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アルバートの執務室へ入るとアルバートは頭を抱えていた。


「イーサン隊長、ありがとう。少し二人にしてくれないかしら」

「はい」


イーサン隊長が部屋を出て行き、


「なあ、リリーアンヌ、どうしてだ…。どうして子爵が…。彼は俺に信頼を持ってくれていた。俺も彼を信頼していた。なのに、何故だ…」

「何故?どうして?そんなのも分からないの?崇敬する気持ちが強ければその分裏切られた時私怨を抱きやすい。子爵があんな事をしたのはアルバート、貴方が貴族達を信じたからよ。信じて通行料の上限を決めなかったからよ。

何度も領地と帝国を行き来する子爵家には通行料が負担だったの。

これからだってどこかの家で通行料を支払う為に領民にしわ寄せがいくわ。迫害を受ける領民が暴動を起こすかもしれない」

「それでも貴族達だぞ。貴族の矜持を持つ貴族達だぞ」

「貴族達だって自分達の生活の方が大事でしょ。今まで通りの生活をすれば自ずと領民にしわ寄せがいくわ。寝ずに働け、支給するものを減らす、当主が決めた事に領主も領民も何も言えないわ。

アルバート、貴方が貴族達を信じる気持ちは良い事よ。それでも上限を決めるべきだった。子爵が今回反乱を起こしたのはアルバートが貴族達を信じ招いた結果よ。

今すぐ全ての貴族達が負担にならない額を設定するべきだわ。そうしないと第二の子爵が今後も現れる」

「分かった。額を設定する」

「それが良いと思うわ」

「今回は俺の招いた事だ。子爵には罪はない」

「何を言ってるの?アルバートが国王になって1年目の祝賀パーティーで、貴族達が全員見ている前で子爵は王に刃を向けたの。どんな理由があろうと王に刃を向けた以上罰は免れないわ。

それを許したらどうなると思うの?

今後反乱を起こしても、謀反を起こしても、暴動を起こしても、理由があれば許されるって事よ?

それに周辺諸国はこのことをどう見ると思う?甘い王だとなめられるわ。戦を仕掛けても理由があれば許すの?謝ればなかったことにするの?そんな事出来ないでしょ?

騎士達は国を護る為に民を護る為に命を掛けて戦うわ。同時に王を護る為に戦うの。だから騎士達は命を掛けると王に忠誠を誓うの」

「子爵と戦は違うだろ」

「同じ事なのよ。王に刃を向けた時点で子爵は貴方に反旗を翻したの。誰よりも王を崇敬していた子爵が貴方に背いたのよ…。それを貴方は重く受け止めるべきだわ。

子爵の件は私が全て処分を決めます。子爵領は国が保有し領民は私が責任を持って次の受け入れ先を見つけます」

「分かった。よろしく頼む」

「陛下は速やかな対応を」

「分かっている」


私はアルバートの執務室から出て私室へ戻った。今日だけはアルバートと一緒のベッドでは寝れない。

次の日私は騎士服を着て馬に跨り内密に子爵家へ来た。

子爵夫人と子爵令息と話をする。


「妃殿下がどうして」

「今回あなた方の処分、領民達、私が責任を持つ事になりました。

単刀直入に言います。子爵が王に反旗を翻したのは知っていますか?」

「あ、あぁぁぁ…、」

「母上は違う部屋に。俺が王妃殿下と話します」

「子爵夫人、そうしなさい」


子爵夫人がよろけながら部屋を出て行き、


「王妃殿下、父上はもう」

「今は牢屋に入っています」

「我々一族は父上を止める事が出来なかった。ですが父上を止めた所で自害するしか残された道はありませんでしたが」

「私は残念です。一言私に相談をしてくれれば、そう思いました」

「妃殿下に相談して何になりますか。通行料を廃止してくれるんですか?」

「そうね、廃止を決定するのは王の采配、私ではないわ。それでも他の道を探したわ。この手を貸したわ」

「領民達はどうなりますか」

「領民達は私が責任を持って受け入れ先を見つけます。ただしこの国ではなく帝国で」

「帝国ですか」

「ええ。この国の他の領地へ行っても迫害されるのが目に見えています。それよりも帝国に行き陶器を作る職人になれるように頼む予定です。彼らが作る陶器は温かみがあって素晴らしいと私は思っています。

それは同時に領地が過ごしやすいからだと思っています。過ごしやすい領地作りをした当主の気遣いです。心です。

心の潤いはものづくりに反映されると私は思います」

「はい……」

「だからこそ無念でなりません。悔しい。大事な臣下を領民を我々が失うのが…。せめて謁見の間だったのなら隠し通す事が出来たのに。どうして祝賀パーティーで…。

それだけ恨みが強かった、という事ですね」

「はい」


子息は真っ直ぐ私を見つめる。その瞳は覚悟を決めた瞳だった。


「今日の夜、闇夜に紛れ一族総出で王宮にある塔の牢屋へ入ってもらいます」

「毒ですか」

「いずれは。ですが、少しの間だけでも家族で過ごす時間を、と思いました。塔の牢屋は外に声が漏れません。それに王宮の敷地の外れにあり人は滅多に行きません。塔には表口と裏口があり表口だけ監視がいます。裏口から出ると隠し通路があり街へ出れます。それと塔を監視するのは私付きの近衛隊だけです」

「妃殿下は何を言いたいのですか」

「私は塔の説明をしただけです」

「はあ、はい、ありがとうございます」


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