47 / 107
41 タワーム公爵
しおりを挟む次の日私はタワーム公爵家に来ている。目の前で怖い顔をしているのはタワーム公爵。
「公爵、世間話をしても仕方がないわ。単刀直入に言わせてもらうわね。
謀反はやめなさい」
「妃殿下、どうしてそれを、」
「私も独自に情報くらい掴むわ」
「それは出来ません」
「フォスター公爵へ復讐する為?」
「それもあります」
「アルバート陛下を排除する為?」
「それもあります」
「ジェイデン殿下を隣国へ行かせた私への復讐も入っているのかしら」
公爵の膝の上に置かれている握り拳に力が入った。
「そう、分かったわ」
「どうしてジェイデン殿下を隣国へ行かせたのです。あの無能のアルバート殿下を行かせれば良かったんだ。貴女も分かっていたはずだ。アルバート殿下は王に相応しくないと。
今のアルバート王を見てみなさい。フォスター公爵の傀儡になったアルバート王に誰がしたとお思いか」
「私ね」
「そうだ。ジェイデン殿下ならこうはならなかった。ジェイデン殿下も貴女のお父上も王に相応しい者は王位に興味がなく、王になるのは無能ばかり。
貴女も貴女だ。王妃の座に収まり影から手を回す。善はアルバート王の手柄に、悪は全て自分に向けさせる。
……………本当に、貴女はお父上に良く似ている……」
公爵は私を真っ直ぐ見つめる。
「リリーアンヌ王妃殿下、私は貴女を王にしたい。この命掛けて貴女を王に私がする」
私も公爵を真っ直ぐ見つめる。
「アルバートは死ぬわ。私が止めなければ直に帝国がこの国へ攻めてくる。幼い頃交わした約束を守る為に…」
「それは、」
「だから謀反を起こす必要はないの。アルバートは殺される。第二夫人のナーシャもフォスター公爵も、ね。そしてこの国は滅びる」
「妃殿下」
「アルバートやフォスター公爵がどうなろうと私にはどうでもいい。それでも関係ない民は違うわ。
だから公爵、
私とアルバートが離縁出来るようにフォスター公爵へ助言してほしいの」
「離縁してどうするおつもりですか」
「帝国へ行き止める。それしか今は方法がないの。皇帝は既に準備をしているわ。声明文を出したら一気に攻めてくる。もう時間がないの」
「ですがそれはもう戦です」
「ええ、戦よ。だから戦になる前に止めるしかないの。帝国に戦いを挑んで勝てる訳がない」
「はい。武力も人数も帝国は桁違いだ。皇帝の守護神と呼ばれる赤の鬼神、青の鬼神、黄色の鬼神、白の鬼神、その者達が道を開け最後に黒い悪魔が出て来たら国は滅ぶと言われています」
「ええ、だから止めないといけないの。今回は黒い悪魔が先陣きって出てくるから…。
止める方法は離縁しかないの。私は王妃には相応しくないと廃妃にするように声をあげてほしいの。元々悪女だの言われているんだから大丈夫だと思うけど、王の権限を勝手に使ったとか、男を誑かしたとか、そうね、子爵の領民を帝国に奴隷として売った、そう噂を流してほしいの」
「妃殿下、それは出来ません」
「大丈夫、そのように私は動いてきた。実際王の権限も使ったわ。それに私付きのローレン隊長には私の情夫のように振る舞ってもらった。それに子爵領の領民を帝国へ行かせたのは本当なの。その時奴隷商人を雇ったわ。だから大丈夫」
「分かりました。そこまで言うのなら悪名を広めましょう」
「ありがとう。廃妃されれば離縁と同じ。私は直ぐに帝国へ向かい止める。
だから貴方はできるだけ噂を大きくしてほしいの」
「分かりました。ですがそこまでして護る価値はアルバート王にありますか?」
「今のアルバートにはないわ。それでも以前のアルバートなら…。
それにジェイデンの王の器、それに伴う脅威を遠ざけたのは私だもの。アルバートを王に、幼い頃からアルバートと共に目指した夢だったから……。
だからアルバートの王位を確実にし王として皆に慕われ敬われる存在に、その為なら私は悪にもなれる。私の悪名が広がり私が廃妃されてもアルバートが王ならそれでいいの。アルバートの側で支え護る者は私でなくても、いいのよ…。私の死でアルバートが変わってくれれば」
「妃殿下?」
「ん?なあに?」
「妃殿下は何を考えているんですか?」
「ふふっ、私は貴方を止めたいだけよ。
それに、私はこの国をこの国の民を護りたいだけ。それに私的ないざこざで関係ない民が巻き込まれるのは違うもの」
私はタワーム公爵家を後にした。
幼い頃の約束を守る為にお兄様は攻めてくる。でもそれは私的な事。
アルバートが王として誓った約束。王になった今、例え忘れてもいても、例え口約束だったとしても、お兄様はアルバートを容赦しないと思う。それだけあの約束は重要な事だった。
お兄様の善悪ははっきりしているから。悪になったアルバートに死以外の選択はない。
ジェイデンがグレイソンがもしアルバートの敵討ちをしようものなら返り討ちにあうだけ。
皇帝の守護神の力を私は知ってる。力では勝てない。もし可能性があるなら、コナーだけ。
11
あなたにおすすめの小説
本物の『神託の花嫁』は妹ではなく私なんですが、興味はないのでバックレさせていただいてもよろしいでしょうか?王太子殿下?
神崎 ルナ
恋愛
このシステバン王国では神託が降りて花嫁が決まることがある。カーラもその例の一人で王太子の神託の花嫁として選ばれたはずだった。「お姉様より私の方がふさわしいわ!!」妹――エリスのひと声がなければ。地味な茶色の髪の姉と輝く金髪と美貌の妹。傍から見ても一目瞭然、とばかりに男爵夫妻は妹エリスを『神託の花嫁のカーラ・マルボーロ男爵令嬢』として差し出すことにした。姉カーラは修道院へ厄介払いされることになる。修道院への馬車が盗賊の襲撃に遭うが、カーラは少しも動じず、盗賊に立ち向かった。カーラは何となく予感していた。いつか、自分がお払い箱にされる日が来るのではないか、と。キツい日課の合間に体も魔術も鍛えていたのだ。盗賊たちは魔術には不慣れなようで、カーラの力でも何とかなった。そこでカーラは木々の奥へ声を掛ける。「いい加減、出て来て下さらない?」その声に応じたのは一人の青年。ジェイドと名乗る彼は旅をしている吟遊詩人らしく、腕っぷしに自信がなかったから隠れていた、と謝罪した。が、カーラは不審に感じた。今使った魔術の範囲内にいたはずなのに、普通に話している? カーラが使ったのは『思っていることとは反対のことを言ってしまう魔術』だった。その魔術に掛かっているのならリュートを持った自分を『吟遊詩人』と正直に言えるはずがなかった。
カーラは思案する。このまま家に戻る訳にはいかない。かといって『神託の花嫁』になるのもごめんである。カーラは以前考えていた通り、この国を出ようと決心する。だが、「女性の一人旅は危ない」とジェイドに同行を申し出られる。
(※注 今回、いつもにもまして時代考証がゆるいですm(__)m ゆるふわでもOKだよ、という方のみお進み下さいm(__)m
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します
凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。
自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。
このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく──
─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─
見捨てられた逆行令嬢は幸せを掴みたい
水空 葵
恋愛
一生大切にすると、次期伯爵のオズワルド様に誓われたはずだった。
それなのに、私が懐妊してからの彼は愛人のリリア様だけを守っている。
リリア様にプレゼントをする余裕はあっても、私は食事さえ満足に食べられない。
そんな状況で弱っていた私は、出産に耐えられなくて死んだ……みたい。
でも、次に目を覚ました時。
どういうわけか結婚する前に巻き戻っていた。
二度目の人生。
今度は苦しんで死にたくないから、オズワルド様との婚約は解消することに決めた。それと、彼には私の苦しみをプレゼントすることにしました。
一度婚約破棄したら良縁なんて望めないから、一人で生きていくことに決めているから、醜聞なんて気にしない。
そう決めて行動したせいで良くない噂が流れたのに、どうして次期侯爵様からの縁談が届いたのでしょうか?
※カクヨム様と小説家になろう様でも連載中・連載予定です。
7/23 女性向けHOTランキング1位になりました。ありがとうございますm(__)m
妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる
ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。
でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。
しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。
「すまん、別れてくれ」
「私の方が好きなんですって? お姉さま」
「お前はもういらない」
様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。
それは終わりであり始まりだった。
路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。
「なんだ? この可愛い……女性は?」
私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる