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閑話 アルバート視点
しおりを挟む「ッ!痛た…。どれだけ飲んだんだ」
目が覚め、辺りを見渡す。
執務室のソファーで寝ていたみたいだ。ソファーの前の机の上には空になったワイン数本と飲みかけのグラスが置いてあった。
リリーアンヌに何も言わずナーシャを娶った事で、リリーアンヌは何もしないと言うと本当に何もしなくなった。
何もしないと言ってもリリーアンヌだけは俺を見捨てない、そうどこかで思っていた。今までみたいに俺を助けてくれると、そう信じていた。
リリーアンヌを悪女だの、無慈悲だの、噂は耳にする。それでも俺は知っている。リリーアンヌは悪にはなれない。
心根の優しい女性
それがリリーアンヌだ。
机の上の山積みの書類
「はあぁ…」
今まではリリーアンヌと二人で手分けしてやっていた。ボビーも手伝ってくれていた。
フォスター公爵に年配のボビーをもう隠居させてはどうかと言われた。
父上の時から執事として王族に仕えていたボビーはもう年配だ。隠居させるにも代わりがいない。厳しかったが俺にも仕えてほしいと思っていた。
渋っていたらフォスター公爵は勝手にボビーを辞めさせ代わりの執事を連れてきた。公爵に優秀と聞いていたがボビーには劣る。
この前も…、
俺は書類を見ていた。
『ジミー資料を取ってくれ』
『資料は手元にはありませんが』
『ならどこにある』
『事務官の所でしょうか』
『はぁ、出来れば書類と資料は揃えてほしい』
『資料など見ずとも書類を見れば分かると思いますが』
『それでも照らし合わせる事は必要だ』
ボビーなら書類と資料は揃えて置いてあった。それにわかりやすく印もしてあった。
リリーアンヌの手伝いもなくなり、ボビーの手助けもなくなり、側には役に立たない執事。俺は毎日2時間くらいの仮眠だけしか取れない。
それでも減らない書類の山
急ぎの書類は別に渡してくれと伝えたが…。フォスター公爵が持ってくる書類は急ぎとは思えない書類ばかり。それでも急ぎと言われれば目を通すしかない。それに印を押すまで部屋から出て行かない。そうすると他の書類に目を通す事も出来ない。
イーサンの代わりに付いた騎士はフォスター公爵を通すなと言っても通してしまう。イーサンの謹慎はいつ終わるのか…。
『妃殿下のお許しが出ませんので』
フォスター公爵はそう言っていた。
リリーアンヌのメイドを襲い謹慎になったが、なぜ襲った場所がリリーアンヌの私室だったのか…。イーサンに限って俺を裏切る事はしない。もしかしてイーサンはリリーアンヌの事が…、好きなのか?
昨日の昼間、リリーアンヌにイーサンの事を許してもらえるようにメイドに口添えを頼もうと思っていた。それにまた俺を手伝ってほしいと頼むつもりでいた。
それでもそんな時間もなくて諦めたんだった。
ナーシャとももう何日一緒に寝ていないかも覚えていない。もう限界にきていた俺は騎士達を下がらせお酒に溺れた。
そこまでは覚えている。
でも目が覚めた時、俺は幸せな夢を見ていたような気がした。人肌で心が休まり、幼い頃リリーアンヌを抱きしめて寝ていた頃のような安らぎを感じた。その人肌を求めナーシャに癒やしてもらった。久しぶりに触れたナーシャの肌…、ナーシャと繋がり営みをした。
俺はどんな夢を見ていたのか…
欲求不満、そうか、それか…。
ナーシャは俺の子を懐妊してから段々一緒のベッドで寝ていても肌に触れる事を嫌がるようになった。今では抱きしめて眠る、それさえも嫌がる。
お腹が少し膨らんだのかその姿を見られたくないと俺は執務室のソファーで寝る事が多くなった。
まあ、部屋に戻る時間も無いほど書類を処理しているんだが…。
そうだった。久しぶりにナーシャの寝顔を見に行こうと思っていたんだった。それでもいつの間にか寝ていたんだな…。
今日こそは寝顔を見に行こう
ナーシャの寝顔を見ているだけで癒やされる。俺の疲れは吹き飛ぶ。
俺はソファーから椅子に腰掛け書類を処理し始めた。
一枚の書類を手にとった。
数ヶ月前に送られていた皇帝からの書簡
俺は執務室を出て事務官がいる部屋に行った。
「誰だ、この書簡は帝国の皇帝からだぞ!なぜ急ぎの書類として持ってこなかった!」
一人の事務官が書簡を見た。
「こちらは陛下の執事にお渡ししました。急いで返答を、と。
陛下、もしかしてまだ返答をしていないのですか?」
「今見た。それに通常の書類の中に紛れていたぞ」
「そんなはずはありません。急ぎの書類だとこちらはお伝えしました」
皇帝からの書簡
《第二夫人を娶るに至った理由を知りたい。御国は王一人に対し妃一人だと周知していたが》
これだけ書かれた書簡に俺は背筋が凍った。
第二夫人を娶る理由、それはナーシャが俺の子を懐妊したからだが…。
この国は王が娶れる妃は一人。それは昔からだ。王妃のリリーアンヌとの間に子が出来ないから、それだけでは理由にはならない。
昔の王に王妃との間に子が出来ない理由で離縁し新たに妃を娶った事があるが、その時代は国内で反乱が多い時代だった。
荒れた国
立て直すのに何世代とかかり、その時、法が出来た。王に子が出来ない時は王位継承権を持つ者の子が王位を継ぐ。
過去にも同時に二人の妃を娶る王はいなかった。
俺が初めてだ
ナーシャがリリーアンヌよりも賢く王妃の影武者として娶った。
それも駄目だ
帝国の皇帝に目を付けられたらこの国などひとたまりもない。皇帝はこの国だけでなく他国の動向も知っているだろう。
他国ではリリーアンヌの評価は高い。それに隣国へ行ったジェイデンもリリーアンヌを高く評価している。
俺から見てもリリーアンヌは王妃として完璧
そのリリーアンヌがナーシャに劣るなどともし言ったのならどんな無理難題を吹っかけられるか分からない。
どう返事をしたらいいものか…
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