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閑話 ジェイデン視点 ③
しおりを挟む牢屋へ向かう途中、昼間の兄上との会話を思い出していた。
「国王陛下、ご返答を」
「王妃を連れて行け」
「王妃殿下を人質にすると」
「あぁ、私の子を産むのは家柄さえ良ければ誰でも良い」
「陛下は妃殿下を愛していないと?元王妃殿下を捨ててまで愛したのではないんですか?」
「だが、国が掛かってる時に愛も何もないだろう」
「国王陛下、いや、兄上、これは弟として言わせてもらう。
リリーアンヌを私に下さい。私はリリーアンヌを幼い頃から慕っていた。私の思いは兄上も知っていた。知っていて兄上はリリーアンヌを婚約者にし婚姻した。
兄上は私にリリーアンヌを幸せにすると言った。
リリーアンヌは幸せでしたか?兄上の妻になりリリーアンヌは幸せでしたか?第二夫人に王妃の部屋を奪われ、兄上の寵愛を奪われ、兄上はリリーアンヌを都合の良い駒にしただけだ」
「ジェイデン!」
「本当に出来たか出来てないのか分からない子を殺しただけで処刑ですか?」
「ナーシャは子を身籠っていた」
「ならその子を見ましたか?」
「俺は知らなかった。死んだ事も知らされなかった。それもこれも一人で王として政務をこなしていたからだ。あの女が全て投げ出しさえしなければ俺も子の死に目に会えたんだ、全てあの女のせいだ」
「政務は元より一人でこなすもの。リリーアンヌの力など借りずにです。
王の子が死んだのにも関わらず兄上には知らせがなかった。その方が重罪ではありませんか?王の子ですよ?
元からいないのなら知らせないとは思いますが」
「子はいた。ナーシャの腹は大きくなっていた」
「そこまで育った子ならば王宮内は騒がしくなったはずだ。いくら兄上が政務をしていても気付かない訳がない。
ならその子の墓は」
「父上達が眠る墓地に埋葬された」
「墓を掘り起こし確認したんですか?」
「死者を冒涜する行為だ」
「我が子の死に目にも会えず、我が子を確認もせず、ナーシャの言葉だけを信じてリリーアンヌを処刑ですか?」
「ナーシャは被害者だ。ナーシャの言葉だけで十分だ」
「ならリリーアンヌがやっていないと言えばそれを信じたと?」
「嘘をつくかもしれないだろう」
「兄上は何年リリーアンヌと育ったんです。リリーアンヌが嘘を言った事がありますか?」
「ジェイデンは知らないだろうが、あの女は変わったんだ」
「変わったのは兄上の方だ!
リリーアンヌを処刑などさせない。リリーアンヌは人質として私が隣国へ連れて行く」
「処刑は決まった。お前にリリーアンヌは渡さない。もし連れて行くのならナーシャを連れて行け」
「ナーシャなどいらない。私が欲しいのはリリーアンヌだけです」
「お前はいつもそうだ!いつも俺のものを欲しがった。リリーアンヌも王の椅子も」
「兄上、私は王の椅子など欲しくなかった。欲しいのはリリーアンヌだけです。リリーアンヌを妻にする為だけに王になりたかっただけで王の椅子など興味もなかった。
兄上はリリーアンヌを捨てました。捨てたものを拾っても問題はありませんよね」
「問題は、ある」
「問題?何です」
「この国の問題で国を出たお前には関係ない事だ」
「まぁ良いでしょう。今や私がこの国の者ではないのは事実だ。それよりもリリーアンヌだ。
王の子を殺したから?それも事実確認もない子を?
兄上、いい加減目を覚ましたらどうです。兄上は今の王宮がどうなっているのか知っていますか?」
「フォスター公爵が回してくれている。俺は政務が忙しい」
「政務、政務、口を開けば政務。兄上、王宮内を回すのも王の役目です。それこそ政務は事務官にでも執事にでも手を借りる事が出来る。ですが、王宮内を牛耳られたら終わりですよ」
「フォスター公爵は俺の味方だ。公爵に限って俺を裏切る訳がない」
あぁ、兄上に王は、この国を背負う事は、重かった。
父上から隣国の王配に、その話しを聞いた時、もっと反論するべきだった。
王女には慕う者がいて俺にも慕う者がいる。お互い形だけの夫婦、それをお互い受け入れた。義理の父親、現国王が亡くなれば離縁しようと契約をした。
王女には幼い頃から婚約者がいた。王配としての教育も受けていた婚約者とは相思相愛で、俺と婚約する為に無理矢理婚約を解消させられた。今でもお互いに思い合う二人はいずれ婚姻し、この国とは同盟を結ぶ予定でいた。
離縁した後、俺はこの国に帰ってきて兄上を支えようと思っていた。
少しでもリリーアンヌの側に
それが俺の思いだった。
妻には出来なくても一生側で支え一番の理解者になろうと。
数年国を空けるだけ、その数年でここまで国が変わるとは思ってもいなかった。
歯止めになっていたルヴェンド公爵とシャドネー公爵の死。リリーアンヌとの離縁。
フォスター公爵がここまで王宮内に浸透しているとは思わなかった。
何としてでもリリーアンヌを逃さないといけない。
リリーアンヌを処刑させない。
必ず、必ず護ってみせる。
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