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77 託す者
しおりを挟む「ジェイデン、今はグレイソンの身の安全が最優先よ」
ボビーの前にいたジェイデンが私の前に来た。
「グレイソンももう子供じゃない。自分の事は自分で決めれるし自分の身くらい自分で護れる」
「確かにグレイソンはもう子供じゃないわ。それでも、今回は違うの」
「辺境でローレンの奥方に聞いた。帝国が攻めてくるんだろ?」
「ええ、そうよ。グレイソンは王族、ここにいるとどうなるかは分かるでしょ。ジェイデン、それは貴方もよ。隣国へ行ったといってもこの国の王族なのは変わらないわ。だから早くグレイソンを連れてこの国を出てほしい」
私はジェイデンを真っ直ぐ見つめた。何も隠さないで見つめたのはいつぶりだろう…。それだけジェイデンとは向き合ってこなかった。見透かされそうで怖かったから…。ジェイデンの目が、ジェイデンの王の素質が、私は怖かった…。
だから、もう、包み隠さず教えるわ…。
「ジェイデン、貴方が誰かと未来の王として口約束をしたとする。所詮口約束よ、でも、貴方ならその口約束をどう取る?」
「未来の王としてした約束なら俺はそれを守る。例え口約束だとしても約束だ。王にならなかったら破棄するしかないだろうけど王になったのならそれは守る事だ」
「もし貴方が忘れていたら?」
「俺も忘れる事はある。でも王としてした約束は忘れてはいけない事だ。例え幼い頃だったとしても覚えていないといけない事は覚えている」
「アルバートは忘れたわ。約束をしたのは現皇帝。お互いまだ王にはなってなかった。それでも皇帝は皇帝になる定めだったし、その頃は第一王子としてアルバートが王になる予定だった。
そしてお互い王になり約束は確固たるものになった」
「出来もしない約束をした兄上の自業自得だ」
「そうね。でも、王としてではなくアルバート個人で約束をしていればまだ国は助かったわ。王として約束した以上、この国も入った約束なの。今更国は関係ないとは通らないのよ」
「当たり前だ。国を背負うのが王だ。王の背には国と民がある、それを考えないで安易に約束をした兄上の責任だ」
「ええ、だから戦になる。戦になればグレイソンは王族として殺される。何も知らない何も関係ないグレイソンを私は助けないといけない。それにジェイデンも。
二人共、私の大切な人だから…。これからも生きてほしい人だから…。
だから、お願い、グレイソンを連れて逃げて。隣国にいるジェイデンにしか出来ない事なの。隣国はこのことには関係ない、だから、だからお願い…」
「リリーアンヌ、聞いていい」
「ええ」
「ローレンは今どこにいる?」
「ローレンは今、帝国と接触してもらっているわ。私が北の離宮へ行けば皇帝は北の離宮へ来る」
「一緒に暮らしていたんだって?」
「ええ、子供の頃数年だけど、その数年で私達は兄妹のように家族のように育ったの」
「どうしてその時教えてくれなかったんだ」
「お兄様は身を守る為にこの国へ来ていたから極秘だったの。陛下は知っていたけど陛下も極秘にした。この国で次期皇帝が暗殺されるなんて事、あってはならないから。お兄様はお父様を本当の父と思ってるの。そのお父様が処刑されて、今度は…。
この国の崩壊、もうそうなる運命なのよ。
だから、グレイソンを連れて早く隣国へ行ってほしいの。もう既に帝国の隠密部隊がこの国に入っているわ」
「白の鬼神か」
「ええ、ローレン達には手紙を託したの。白の鬼神と接触してもらい皇帝に伝える為に。お兄様は王宮ではなく北の離宮に来る手筈になっていた」
「北の離宮なら姿を消せ国を守れた。帝国へ行ったリリーアンヌを探し出しても帝国相手に兄上も手は出せない」
「ええ、その通りよ」
「そこまでして国を守りたかったのか?兄上の為に?」
「アルバートの為、そうね、それもあるわ。ここを出た時はアルバートを国を守れるのならそれで良いと思った。それでも離宮へ向かう道中でお父様とよく地方へ行った事を思い出したの。その時のお父様の言葉も。
だから今は、お父様が愛したこの国を、生まれ育ったこの国を守るのが私の使命だと思ってるわ」
「それでも処刑されたら意味はない」
「ええ、だからジェイデンに託すの。この国の未来を」
「俺に?」
「私の処刑は必ず執行される」
「どうして!」
「アルバートは私の首を皇帝に渡しこの国を守ろうとしているから」
「そんな事をすれば皇帝が許す訳がない」
「ええ、皇帝はアルバートの首を落とす」
「なら!」
「ねぇ、ジェイデン、貴方なら皇帝からこの国を取り返せる。何年かかっても必ず取り返せる。そして貴方が王になりなさい。
新たな国の新たな王に
ジェイデンには王冠が似合う。王配に収まる器じゃないわ。貴方は王になる器。
それは陛下もお父様も望んだ事。それを私が捻じ曲げた。貴方を王にならせない為に、アルバートを王にする為に。
今の現状は私が招いた結果なの。アルバートを王にした私が招いた結果なの…。
アルバートは無能じゃない、有能じゃないだけ。私が側で支えれば、そうすれば大丈夫だと思ったわ。
でもね、有能じゃない者に王は務まらない」
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