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閑話 フォスター公爵視点
しおりを挟む元第二王子ジェイデンが第三王子グレイソンを連れて王宮から去って行った。
「少し寂しくなりますね」
「あぁ」
扱いやすいこの馬鹿だけが残り、遂に私に運が向いてきた。目障りな男は始末した。小娘は牢屋、頭の切れるジェイデンは隣国へ帰った。
ハハハッ
遂に私のものだ!
この国も
あの玉座も
遂に私の、私のものだ!
後は、この馬鹿を皇帝に始末をしてもらいご退場頂こう。
ハハハハハッ
笑いが、笑いが止まらない。
「陛下!」
突然入って来たのはグレイソンの主治医のトムソン。
「陛下、ご無礼を承知で突然伺いました。急ぎご報告があります。リリーアンヌ元王妃殿下のお腹には陛下の子が宿っています。リリーアンヌ元王妃殿下の処刑をお止めください。せめて子が産まれるまででも、お止めください」
「リリーアンヌに子だと?」
「はい。昨日診察し確認しました」
「本当に子が?私の子が、腹に、宿っているのか?」
「はい。それに先程ナーシャ王妃殿下に妊娠中の症状を確認しました。本当にナーシャ王妃殿下は子を宿していたのでしょうか」
「私はそう聞いている」
「それにしてはおかしな事を仰っていました。胎動はどんな風に感じられたかとお聞きしても曖昧な返事。それにたとえどんな形で子が流れたとしても大きくなった子には性別も分かったはずですが、どちらか知らないと。確かに亡くなった子を見せないようにしたのでしょうが性別くらいは聞いてもおかしくはない」
「ナーシャはまだ若い。辛い記憶を残したくなかったのだろう」
「ならなぜその記載が載っていないのです。ナーシャ王妃殿下に直接伝えなくても記載はするはずです。王の子です。妊娠中も事細かに記載する義務が医師にはあります。ですがそれさえも不備が目立つ。
私は前陛下の時代から王族の主治医として勤めてきました。王族の皆様の健康管理、ご病気、使った薬、召し上がった食事内容、量、全て事細かに記載するように教えられました。前王妃殿下の懐妊の時も妊娠初期から事細かに記載されています。何を好んだか、悪阻はいつまで続いたか、胎動がいつ頃分かったか、診察もこまめにし、その度にお話を聞き記載する。それが王族に仕える医師です。
私はナーシャ王妃殿下は懐妊していなかったと断言します」
「ナーシャが嘘をついたと言うのか!」
「はい」
この男、そんなどうでも良い事を調べたというのか。グレイソンの主治医だからと手を出さなかったが、やはり全員私の手の者に変えるべきだった。前陛下の時代の医師は権力に屈しない。だから難癖をつけてこの男以外は辞めさせた。あの時、一緒に辞めさせるべきだったな。
唯一残るこの男を生かしておく訳にはいかない。
ナーシャの事を詳しく調べられればこちらが不利。妊娠していない以上詳しく記載はしていない。それに誰も見ないと思った。男児か女児か、死んだとされる子の性別など聞いて何になる。だが、
「男児だったと聞いています。医師が書き忘れたのでしょう。医師も動転していたのかもしれません。王妃が第二夫人が宿した子を殺したんです。私も心がまだ痛い。
さぁ、トムソン医師、悪いが出て行ってもらおうか。まだ陛下も心を痛めている。我が子を亡くしたばかりだ。
つまみ出せ!」
騎士達が無理矢理この男を部屋から出した。部屋から出て行く間も『元王妃殿下は陛下の子を宿しています。処刑はお止めください』とずっと叫んでいた。
「公爵、トムソンの言っていた事は本当なのか」
「彼は嘘を言い処刑を延ばしたいだけでしょう。彼は元々ジェイデン殿下の主治医。ジェイデン殿下に頼まれたのでしょう」
「だが、もし、リリーアンヌの腹に、私の子が宿っているのなら、」
「陛下、よくお考えください。陛下はナーシャをお側に置いてから元王妃殿下と閨を共にしましたか?」
「いや、していない、な…」
「ならば、もし元王妃殿下の腹に子が宿っていてもそれは陛下の子ではなく別の男性の子です。リリーアンヌ元王妃殿下は夜な夜な騎士達を私室に招いていたと聞いています。おそらく騎士の誰かの子でしょう」
「な!何だと!私とは子が出来ず、他の男とは子を作ったのか!」
「そう推測されます。リリーアンヌ元王妃殿下は誰の子か分からない子を陛下の子と言い、処刑を免れようとしているのです。もしかしたら子も嘘かもしれません。
陛下を騙し、命乞いをしているのです。お優しい陛下なら、子が出来たと言えば処刑はしないだろうと、そうお考えなのです」
「私を騙したのか」
「おそらくですが」
「なんだと!王を騙したと言うのか!」
「リリーアンヌ元王妃殿下は悪知恵が働きますから。陛下、そのような嘘に騙されてはいけません。もし処刑をせず子を産めば今度は陛下の子だと言い張ります。陛下の子でない子が第一子となり、この国の王にする気なのです。そしてこの国はリリーアンヌ元王妃殿下に乗っ取られるのです」
「そんな事はさせない」
「ええ、そんな事を許してはいけません。陛下の跡を継ぐのは陛下の子しかおりません」
「そうだ」
「陛下、いつまでも悪魔をのさばらせていてはいけません。即刻処刑を」
「あぁ、速やかに処刑をしよう」
あぁ、馬鹿は手懐けやすい。
やはりあの男は始末するしかない。生かしておくと今後脅威になる。あの小娘に本当に子が宿っているのかは知らないが、もし宿っていた時、こちらの不利になるのは明らかだ。
影を呼び出し、
「トムソンを殺せ」
私は秘密裏であの男を始末した。
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