3 / 19
婚約者
しおりを挟む
学院に通って直ぐの頃、私はお父様に呼び出され、
「お前の婚約者だ」
と見せられた釣書を見て私は愕然としました。余り良い噂を聞かない伯爵令息だったからです。
良く言えば女性の扱いが上手い。悪く言えば女好き。
それでも私は婚約者との時間を過ごしました。家と家の繋がりの為、どのような方だとしても私に拒否する事は出来ません。
「ガネット、今日も綺麗だね」
「ありがとうございます」
「今日はお茶して帰ろう」
「はい、楽しみです」
婚約者も私との時間を大切にしてくれた為、私は彼を信じてしまいました。噂は所詮噂なのだと。
「ガネット、好きだよ」
「はい、私も好きです」
「俺の婚約者は可愛いな。愛しいガネット、俺は幸せだよ」
「私も幸せです」
私は彼を好きになりました。何処へ行っても紳士でエスコートは欠かさないし贈り物も贈ってくれます。毎朝邸まで迎えに来てくれて一緒に学院へ通い、帰りも何処かへデートしてから邸に送ってくれ、可愛い、好きだよと言葉で思いを伝えてくれます。
私は彼を信じてしまいました。そして見ないようにしていたのです。彼が女好きというのを。
私は同じクラスの子に手を引かれ連れて来られた部屋の前。中から声がしました。
「今日も可愛いよロリー。俺はこんな可愛いロリーが側にいて幸せだよ。好きだよ、ロリー」
「もう、調子のいい事言って。貴方には婚約者がいるじゃない」
「婚約者は婚約者さ。ガネットの事も好きだけどロリーの事も好きだよ」
「私と婚約者、どっちが好きなの?」
「どっちかって言ったらロリーだよ。ロリーとは体の相性もいいしね」
それから男女の営む声がしだしました。甘く囁く彼の声…。甘く淫らな喘ぎ声…。肌がぶつかる音…。
いつしか私を連れて来た人は居なくなり、私はただ立ち尽くし男女の営む声や音を聞いていました。
それからよく見てみれば首元に残るキスマークがあったり、学院で見かければ女性を腰に抱きいちゃつく姿だったり、女性と空き教室に入って行ったり、毎度違う女性を連れて歩いている婚約者の姿でした。
私はお父様に、
「婚約を解消して下さい。彼は他の女性数人と浮気をしています」
「浮気の一つや二つで文句を言うな」
(浮気の一つや二つじゃないから言ってるのに。そうよね、お父様も愛人は一人や二人じゃないものね。こんな人に何を言っても意味がないわ)
私は学年が上がる時に淑女コースではなくて侍女科コースを選択しました。
教師に呼び出され、
「ガネット、貴女侍女科コースを選択しているけど間違いではないのね?」
「はい、先生。先生も私の婚約者をご存知だと思います」
「ええ、余り良い噂は聞かない生徒ね」
「はい。このまま婚約者と婚約を続けても、もし婚姻しても、いずれ私は傷物になります」
「それは分からないと思うわよ」
「いえ、先生。いずれ婚約破棄になるか、離縁か、私にはどちらかしかありません。いずれ傷物になるのなら一人でも生活出来るだけの保険が欲しいのです」
「貴女の意志は強いのね?」
「はい」
「分かりました。では来年度から侍女科コースを選択するで通しますね」
「はい、お願いします」
私は侍女科コースを選択し、侍女を目指す為に、勉強も実技も努力しました。
努力したかいがあり優秀な成績を残す事が出来ました。ですが、婚約者は婚約破棄をしてこなかったのです。
学院を卒業し婚姻準備をし始めた時、婚約者とご両親が邸にやって来ました。
「申し訳ない。婚姻準備も始めた所だというのに婚約を白紙に戻して欲しい」
突然、彼のお父様が頭を下げました。
「どう言う事か説明頂こう」
お父様が聞きました。
「この愚息が、お嬢さんがいるにも関わらず他の女性を懐妊させてしまった。こちらの有責だ、申し訳ない。慰謝料もだが婚姻に掛かった費用も全て負担する」
「当たり前だ!」
「本当に申し訳ない」
私は婚約者と目が合い、
「ガネット………ごめん……」
私は何も言いませんでした。こうなる事ぐらい分かってたはずです。できれば学院にいる間に婚約を白紙に戻してくれたら侍女として働けたのに…。
悔しくて涙が出た。
「ガネット、本当にごめん。ガネットを好きな気持ちは変わらないんだ。ガネット、ごめん」
「お前の婚約者だ」
と見せられた釣書を見て私は愕然としました。余り良い噂を聞かない伯爵令息だったからです。
良く言えば女性の扱いが上手い。悪く言えば女好き。
それでも私は婚約者との時間を過ごしました。家と家の繋がりの為、どのような方だとしても私に拒否する事は出来ません。
「ガネット、今日も綺麗だね」
「ありがとうございます」
「今日はお茶して帰ろう」
「はい、楽しみです」
婚約者も私との時間を大切にしてくれた為、私は彼を信じてしまいました。噂は所詮噂なのだと。
「ガネット、好きだよ」
「はい、私も好きです」
「俺の婚約者は可愛いな。愛しいガネット、俺は幸せだよ」
「私も幸せです」
私は彼を好きになりました。何処へ行っても紳士でエスコートは欠かさないし贈り物も贈ってくれます。毎朝邸まで迎えに来てくれて一緒に学院へ通い、帰りも何処かへデートしてから邸に送ってくれ、可愛い、好きだよと言葉で思いを伝えてくれます。
私は彼を信じてしまいました。そして見ないようにしていたのです。彼が女好きというのを。
私は同じクラスの子に手を引かれ連れて来られた部屋の前。中から声がしました。
「今日も可愛いよロリー。俺はこんな可愛いロリーが側にいて幸せだよ。好きだよ、ロリー」
「もう、調子のいい事言って。貴方には婚約者がいるじゃない」
「婚約者は婚約者さ。ガネットの事も好きだけどロリーの事も好きだよ」
「私と婚約者、どっちが好きなの?」
「どっちかって言ったらロリーだよ。ロリーとは体の相性もいいしね」
それから男女の営む声がしだしました。甘く囁く彼の声…。甘く淫らな喘ぎ声…。肌がぶつかる音…。
いつしか私を連れて来た人は居なくなり、私はただ立ち尽くし男女の営む声や音を聞いていました。
それからよく見てみれば首元に残るキスマークがあったり、学院で見かければ女性を腰に抱きいちゃつく姿だったり、女性と空き教室に入って行ったり、毎度違う女性を連れて歩いている婚約者の姿でした。
私はお父様に、
「婚約を解消して下さい。彼は他の女性数人と浮気をしています」
「浮気の一つや二つで文句を言うな」
(浮気の一つや二つじゃないから言ってるのに。そうよね、お父様も愛人は一人や二人じゃないものね。こんな人に何を言っても意味がないわ)
私は学年が上がる時に淑女コースではなくて侍女科コースを選択しました。
教師に呼び出され、
「ガネット、貴女侍女科コースを選択しているけど間違いではないのね?」
「はい、先生。先生も私の婚約者をご存知だと思います」
「ええ、余り良い噂は聞かない生徒ね」
「はい。このまま婚約者と婚約を続けても、もし婚姻しても、いずれ私は傷物になります」
「それは分からないと思うわよ」
「いえ、先生。いずれ婚約破棄になるか、離縁か、私にはどちらかしかありません。いずれ傷物になるのなら一人でも生活出来るだけの保険が欲しいのです」
「貴女の意志は強いのね?」
「はい」
「分かりました。では来年度から侍女科コースを選択するで通しますね」
「はい、お願いします」
私は侍女科コースを選択し、侍女を目指す為に、勉強も実技も努力しました。
努力したかいがあり優秀な成績を残す事が出来ました。ですが、婚約者は婚約破棄をしてこなかったのです。
学院を卒業し婚姻準備をし始めた時、婚約者とご両親が邸にやって来ました。
「申し訳ない。婚姻準備も始めた所だというのに婚約を白紙に戻して欲しい」
突然、彼のお父様が頭を下げました。
「どう言う事か説明頂こう」
お父様が聞きました。
「この愚息が、お嬢さんがいるにも関わらず他の女性を懐妊させてしまった。こちらの有責だ、申し訳ない。慰謝料もだが婚姻に掛かった費用も全て負担する」
「当たり前だ!」
「本当に申し訳ない」
私は婚約者と目が合い、
「ガネット………ごめん……」
私は何も言いませんでした。こうなる事ぐらい分かってたはずです。できれば学院にいる間に婚約を白紙に戻してくれたら侍女として働けたのに…。
悔しくて涙が出た。
「ガネット、本当にごめん。ガネットを好きな気持ちは変わらないんだ。ガネット、ごめん」
1,152
あなたにおすすめの小説
愛される日は来ないので
豆狸
恋愛
だけど体調を崩して寝込んだ途端、女主人の部屋から物置部屋へ移され、満足に食事ももらえずに死んでいったとき、私は悟ったのです。
──なにをどんなに頑張ろうと、私がラミレス様に愛される日は来ないのだと。
一番悪いのは誰
jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。
ようやく帰れたのは三か月後。
愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。
出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、
「ローラ様は先日亡くなられました」と。
何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・
あの子を好きな旦那様
はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」
目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。
※小説家になろうサイト様に掲載してあります。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
夫は運命の相手ではありませんでした…もう関わりたくないので、私は喜んで離縁します─。
coco
恋愛
夫は、私の運命の相手ではなかった。
彼の本当の相手は…別に居るのだ。
もう夫に関わりたくないので、私は喜んで離縁します─。
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。
彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。
目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる