旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ

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婚約者

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 学院に通って直ぐの頃、私はお父様に呼び出され、


「お前の婚約者だ」


 と見せられた釣書を見て私は愕然としました。余り良い噂を聞かない伯爵令息だったからです。

 良く言えば女性の扱いが上手い。悪く言えば女好き。

 それでも私は婚約者との時間を過ごしました。家と家の繋がりの為、どのような方だとしても私に拒否する事は出来ません。


「ガネット、今日も綺麗だね」

「ありがとうございます」

「今日はお茶して帰ろう」

「はい、楽しみです」


 婚約者も私との時間を大切にしてくれた為、私は彼を信じてしまいました。噂は所詮噂なのだと。


「ガネット、好きだよ」

「はい、私も好きです」

「俺の婚約者は可愛いな。愛しいガネット、俺は幸せだよ」

「私も幸せです」


 私は彼を好きになりました。何処へ行っても紳士でエスコートは欠かさないし贈り物も贈ってくれます。毎朝邸まで迎えに来てくれて一緒に学院へ通い、帰りも何処かへデートしてから邸に送ってくれ、可愛い、好きだよと言葉で思いを伝えてくれます。

 私は彼を信じてしまいました。そして見ないようにしていたのです。彼が女好きというのを。


 私は同じクラスの子に手を引かれ連れて来られた部屋の前。中から声がしました。


「今日も可愛いよロリー。俺はこんな可愛いロリーが側にいて幸せだよ。好きだよ、ロリー」

「もう、調子のいい事言って。貴方には婚約者がいるじゃない」

「婚約者は婚約者さ。ガネットの事も好きだけどロリーの事も好きだよ」

「私と婚約者、どっちが好きなの?」

「どっちかって言ったらロリーだよ。ロリーとは体の相性もいいしね」


 それから男女の営む声がしだしました。甘く囁く彼の声…。甘く淫らな喘ぎ声…。肌がぶつかる音…。

 いつしか私を連れて来た人は居なくなり、私はただ立ち尽くし男女の営む声や音を聞いていました。


 それからよく見てみれば首元に残るキスマークがあったり、学院で見かければ女性を腰に抱きいちゃつく姿だったり、女性と空き教室に入って行ったり、毎度違う女性を連れて歩いている婚約者の姿でした。


 私はお父様に、


「婚約を解消して下さい。彼は他の女性数人と浮気をしています」

「浮気の一つや二つで文句を言うな」


(浮気の一つや二つじゃないから言ってるのに。そうよね、お父様も愛人は一人や二人じゃないものね。こんな人に何を言っても意味がないわ)



 私は学年が上がる時に淑女コースではなくて侍女科コースを選択しました。

 教師に呼び出され、


「ガネット、貴女侍女科コースを選択しているけど間違いではないのね?」

「はい、先生。先生も私の婚約者をご存知だと思います」

「ええ、余り良い噂は聞かない生徒ね」

「はい。このまま婚約者と婚約を続けても、もし婚姻しても、いずれ私は傷物になります」

「それは分からないと思うわよ」

「いえ、先生。いずれ婚約破棄になるか、離縁か、私にはどちらかしかありません。いずれ傷物になるのなら一人でも生活出来るだけの保険が欲しいのです」

「貴女の意志は強いのね?」

「はい」

「分かりました。では来年度から侍女科コースを選択するで通しますね」

「はい、お願いします」


 私は侍女科コースを選択し、侍女を目指す為に、勉強も実技も努力しました。

 努力したかいがあり優秀な成績を残す事が出来ました。ですが、婚約者は婚約破棄をしてこなかったのです。

 学院を卒業し婚姻準備をし始めた時、婚約者とご両親が邸にやって来ました。


「申し訳ない。婚姻準備も始めた所だというのに婚約を白紙に戻して欲しい」


 突然、彼のお父様が頭を下げました。


「どう言う事か説明頂こう」


 お父様が聞きました。


「この愚息が、お嬢さんがいるにも関わらず他の女性を懐妊させてしまった。こちらの有責だ、申し訳ない。慰謝料もだが婚姻に掛かった費用も全て負担する」

「当たり前だ!」

「本当に申し訳ない」


 私は婚約者と目が合い、


「ガネット………ごめん……」


 私は何も言いませんでした。こうなる事ぐらい分かってたはずです。できれば学院にいる間に婚約を白紙に戻してくれたら侍女として働けたのに…。

 悔しくて涙が出た。


「ガネット、本当にごめん。ガネットを好きな気持ちは変わらないんだ。ガネット、ごめん」


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