25 / 63
24
俺は幸せの気分のままベッドに入る。
ベッドに入り揃いの指輪に口付けし目を閉じる。浮かぶのはリアの笑顔。俺を愛しいと微笑むあの笑顔。
俺は眠りについた。
一人の青年が花壇から一人の少女を見ている。
「お兄様」
少女がお兄様と呼んだ男に向けた笑顔。
青年はその瞬間少女に一目惚れをした。
私にもその笑顔を向けてほしい
私もその笑顔が見たい
青年は二人の姿を見ている。
お兄様と呼ばれた男が少女の頭を撫でる。
「今からジンガリオ王国の国王家族と昼餐会だろ?」
「うん」
「楽しんでこいよ」
「うん」
少女はお兄様と呼ばれる男に笑顔を見せる。
「エティー」
「兄上様」
「ここに居たのか、探したぞ」
「ごめんなさい」
「昼餐会に遅れるぞ」
「それはいけないわ。兄上様早く行きましょ」
「俺はエティーを探していたんだがな」
少女は兄上様と呼ぶ男の手を繋ぎ歩いて行った。
「ルーベン殿下こちらでしたか。マーメイル国との昼餐会の時間です」
「すまない」
青年は少女と昼餐会で会うのを楽しみにしていた。
自分にもあの笑顔を見せてくれると、
自分もあの笑顔が見れると、
昼餐会で会った少女が青年に向ける微笑みはつくられた笑顔だった。
ああ、そうか。
お前が「お兄様」と呼ぶのは「王太子」のお前と血の繋がった兄ではなかったな。王太子の事は「兄上様」とお前は呼んでいた。
「お兄様」は、
お前の護衛騎士だったのか。
お前を庇い死んだ、お前の護衛騎士だったのか。
お前は騎士を愛しいと、そう思っていたのだな。
男は一人の女をとても大切に抱きしめる。
「毒を盛ったのは誰だ!シアに毒を盛った奴を今直ぐ殺せ!」
男は胸に抱く女を愛おしい瞳で見つめ、頭を、頬を、優しく撫でる。
女の息が絶えた。
「シア、シア、シアーーーーー」
男は己の腰にある剣を鞘から抜き、
「シア、待っていろ。シアだけに辛い思いはさせない」
己の手で、己の剣で、己の心臓を一突きした。
「うわあー」
俺は起き上がった。
まとわりつく自分の汗、
心臓を刺す痛み、
目から涙を流し、
胸を押さえ蹲った。
まるで今心臓を刺されたような痛みに、
夢のはずだ、
夢のはずなのに男の心が流れてくる。
憎い、
憎い、
憎い、
愛おしい、
愛してる、
シア、
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
シア、
お前を愛してる
男の心か俺の心か…
それでも胸の奥深くから聞こえる。
「シアを助けろ」
「シアを護れ」
「私にとって唯一愛する人」
「お前にとって唯一愛する人」
俺は朝を迎え、頭を整理する。
ジンガリオ王国
マーメイル国
ルーベン殿下
エティー
シア
マーメイル?
俺は急いで露天商を探した。
露天商は街から街へ、国から国へと渡り歩く。同じ所に留まる者もいれば、一日で動く者もいる。
「チッ、もう出て行ったか」
その足で王都にある図書館へ向かった。
昔の文献を探す。
色々な文献を見たが、どこにも載っていない。
次の日、エドに頼んで王宮にある書庫の使用許可証を貰い、文献を探す。
一日経ち、二日、三日、四日目になった。
遥か遠く今はなき国、
どの文献にも載ってない。
そもそもジンガリオ王国すら載ってない。
「おいフェル、何があった。シャリーも心配している」
「煩い」
「フェル!」
「探さないといけないんだ」
「だから何をだ」
「今はなき国」
「ない国をどうやって探す」
「昔の文献ならどこかに載ってると思ったんだが」
「国の名前は?」
「マーメイル」
「マーメイルか、聞いた事がないな」
「俺もだ」
「お前は誰に聞いたんだ?」
「露天商だが、もういなかった」
「露天商はな…」
俺は椅子の背に持たれ天を仰いだ。
目を瞑り、
息を吐く。
「はぁぁぁ」
もう一度探そうと、
目を開ける。
天を仰いだ目線の先、
何でだか、
呼ばれた気がした。
棚の一番上にある文献を梯子を使って手に取る。
手にした時、
「これだ」
直感でそう思った。
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
彼の過ちと彼女の選択
浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。
そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。
一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
4人の女
猫枕
恋愛
カトリーヌ・スタール侯爵令嬢、セリーヌ・ラルミナ伯爵令嬢、イネス・フーリエ伯爵令嬢、ミレーユ・リオンヌ子爵令息夫人。
うららかな春の日の午後、4人の見目麗しき女性達の優雅なティータイム。
このご婦人方には共通点がある。
かつて4人共が、ある一人の男性の妻であった。
『氷の貴公子』の異名を持つ男。
ジルベール・タレーラン公爵令息。
絶対的権力と富を有するタレーラン公爵家の唯一の後継者で絶世の美貌を持つ男。
しかしてその本性は冷酷無慈悲の女嫌い。
この国きっての選りすぐりの4人のご令嬢達は揃いも揃ってタレーラン家を叩き出された仲間なのだ。
こうやって集まるのはこれで2回目なのだが、やはり、話は自然と共通の話題、あの男のことになるわけで・・・。
幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係
紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。
顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。
※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)