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しおりを挟む俺は幸せの気分のままベッドに入る。
ベッドに入り揃いの指輪に口付けし目を閉じる。浮かぶのはリアの笑顔。俺を愛しいと微笑むあの笑顔。
俺は眠りについた。
一人の青年が花壇から一人の少女を見ている。
「お兄様」
少女がお兄様と呼んだ男に向けた笑顔。
青年はその瞬間少女に一目惚れをした。
私にもその笑顔を向けてほしい
私もその笑顔が見たい
青年は二人の姿を見ている。
お兄様と呼ばれた男が少女の頭を撫でる。
「今からジンガリオ王国の国王家族と昼餐会だろ?」
「うん」
「楽しんでこいよ」
「うん」
少女はお兄様と呼ばれる男に笑顔を見せる。
「エティー」
「兄上様」
「ここに居たのか、探したぞ」
「ごめんなさい」
「昼餐会に遅れるぞ」
「それはいけないわ。兄上様早く行きましょ」
「俺はエティーを探していたんだがな」
少女は兄上様と呼ぶ男の手を繋ぎ歩いて行った。
「ルーベン殿下こちらでしたか。マーメイル国との昼餐会の時間です」
「すまない」
青年は少女と昼餐会で会うのを楽しみにしていた。
自分にもあの笑顔を見せてくれると、
自分もあの笑顔が見れると、
昼餐会で会った少女が青年に向ける微笑みはつくられた笑顔だった。
ああ、そうか。
お前が「お兄様」と呼ぶのは「王太子」のお前と血の繋がった兄ではなかったな。王太子の事は「兄上様」とお前は呼んでいた。
「お兄様」は、
お前の護衛騎士だったのか。
お前を庇い死んだ、お前の護衛騎士だったのか。
お前は騎士を愛しいと、そう思っていたのだな。
男は一人の女をとても大切に抱きしめる。
「毒を盛ったのは誰だ!シアに毒を盛った奴を今直ぐ殺せ!」
男は胸に抱く女を愛おしい瞳で見つめ、頭を、頬を、優しく撫でる。
女の息が絶えた。
「シア、シア、シアーーーーー」
男は己の腰にある剣を鞘から抜き、
「シア、待っていろ。シアだけに辛い思いはさせない」
己の手で、己の剣で、己の心臓を一突きした。
「うわあー」
俺は起き上がった。
まとわりつく自分の汗、
心臓を刺す痛み、
目から涙を流し、
胸を押さえ蹲った。
まるで今心臓を刺されたような痛みに、
夢のはずだ、
夢のはずなのに男の心が流れてくる。
憎い、
憎い、
憎い、
愛おしい、
愛してる、
シア、
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
シア、
お前を愛してる
男の心か俺の心か…
それでも胸の奥深くから聞こえる。
「シアを助けろ」
「シアを護れ」
「私にとって唯一愛する人」
「お前にとって唯一愛する人」
俺は朝を迎え、頭を整理する。
ジンガリオ王国
マーメイル国
ルーベン殿下
エティー
シア
マーメイル?
俺は急いで露天商を探した。
露天商は街から街へ、国から国へと渡り歩く。同じ所に留まる者もいれば、一日で動く者もいる。
「チッ、もう出て行ったか」
その足で王都にある図書館へ向かった。
昔の文献を探す。
色々な文献を見たが、どこにも載っていない。
次の日、エドに頼んで王宮にある書庫の使用許可証を貰い、文献を探す。
一日経ち、二日、三日、四日目になった。
遥か遠く今はなき国、
どの文献にも載ってない。
そもそもジンガリオ王国すら載ってない。
「おいフェル、何があった。シャリーも心配している」
「煩い」
「フェル!」
「探さないといけないんだ」
「だから何をだ」
「今はなき国」
「ない国をどうやって探す」
「昔の文献ならどこかに載ってると思ったんだが」
「国の名前は?」
「マーメイル」
「マーメイルか、聞いた事がないな」
「俺もだ」
「お前は誰に聞いたんだ?」
「露天商だが、もういなかった」
「露天商はな…」
俺は椅子の背に持たれ天を仰いだ。
目を瞑り、
息を吐く。
「はぁぁぁ」
もう一度探そうと、
目を開ける。
天を仰いだ目線の先、
何でだか、
呼ばれた気がした。
棚の一番上にある文献を梯子を使って手に取る。
手にした時、
「これだ」
直感でそう思った。
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