悪役令嬢は高らかに笑う。

アズやっこ

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10 親子の会話


私が入っていた小部屋の扉が開けられた。

叔父様は辛そうな顔を一瞬見せ、それから晴れ晴れとした顔をした。


「聞いていただろ?」

「はい」

「あれが全てだ」

「いえ、全てではありません」

「そんな事はない」

「いえ、お母様は叔父様、お、お父、様を愛していました。ですが、」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!もう一度言ってくれ!」

「お母様が愛していたのは、」

「違う!その前だ!その前、俺の事を、」

「お、お父様……と…、駄目でしたか?」

「いや……」


お父様は私を抱きしめ体を震わせ泣いていた。


「あり…が…とう……」


私は抱きしめられている状態で話しだした。


「お母様はお父様を愛していました。愛してはいけない人を愛してしまった、お母様の日記の最後のページに書いてありました。

貴族令嬢のお母様にとって旦那様以外と子を作る事への抵抗があったのは事実だと思います。ですが当主のお祖父様に言われれば従うしかありませんでした。

公爵家に嫁いだお母様は公爵家の血を途絶えさせない為だと言われれば何も言えません。それにもし反論すれば実家の侯爵家にも迷惑がかかる。

ですが、お父様と何度も体を繋げれば愛が芽生えるのは自然の流れです。それに元お父様には愛人がいた。お母様もその存在を知っていたのでしょう。自分が愛されていないのは分かったと思います。形だけでも子を作る為に行為をしたでしょう。だからこそ自分は愛されていないと気づいたと思います。

お父様がお母様をどのように抱いたかは分かりませんが、子を作る為だけの行為の違いに気づいたんだと思います。

お母様は同じ使命を受けたお父様に少なくとも情を抱いたと思います。お父様への情が気づいた時には愛情に変わっていた」

「俺は義姉上を、ソフィーを愛していた。兄上の婚約者だ、妻だ、と諦めようとした。だが何度も抱けば欲が出る。俺を愛してくれないか、ソフィーに気づいてほしくて俺はソフィーを優しく労り愛情を注ぎながら抱いた」

「お父様の愛情を感じたから、お父様の優しさに触れたから、お母様は悩みいつしか心を病んだ。女性から離縁してくれとは言えません」

「だから言ったんだ、シャーロットが宿った時一緒に逃げようと」

「お母様は自分の感情だけで突っ走れるほど強くなかった。

それに年下のお父様の将来を心配したのかもしれません。今は子を作る為に愛してくれていても子が産まれたら、いつか自分に愛想を尽かしたら、だから愛する人との子を育てる事を選んだんです」

「あの時無理矢理連れて行けば」

「お父様の愛が本物だったのならそうすれば良かったんです。例え平民になったとしても、この国を離れる事になったとしても、幸せになれる道はあったんです。

お父様とお母様の過ちはお互いの気持ちを伝えなかった事です」

「そうだな…、その通りだ。今更後悔しても遅いが、逃げようと言った時に気持ちを伝えるべきだった」

「はい、そうするべきでした。そしたらお母様は全てを捨ててお父様の手を取ったでしょう。

貴方を忘れない、愛しい人、愛してる。

お母様の気持ちです」

「ソフィーーーーー」


お父様は膝から崩れ落ち涙を流し声を出して泣いていた。

私は泣いているお父様をただただ見守るだけ。

一途に20年近く愛し続けたのなら、なぜ気持ちを亡骸にしか伝えなかったのか、どうして生きている内に伝えなかったのか、駆落ちして上手くいく確証はなくてもお父様の仕事なら他国でも大いに発揮できたのに…。



「お父様、お母様の亡骸はここの庭に眠っていますね?」


お父様は私を鋭い目で見つめ、


「どうして分かった」

「私、お母様に会いに墓地へよく行っていました。ある時土を掘った跡を見つけました。それ以来墓地へは行っていません」

「よくここだと分かったな」

「お父様しか掘り起こす人はいませんよ」

「そうか。だがそれだけで」

「私はお父様の子ですから」

「そうだな」

「お母様に会わせて下さい」

「分かった」


お父様に連れられて向かった先、周りを柵で囲ってある場所にお母様は埋葬されていました。周りを埋め尽くす薔薇の花、そこに使い込まれた一脚の椅子が置いてあった。

まるで二人だけの世界…。



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