悪役令嬢は高らかに笑う。

アズやっこ

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番外編 悲恋と狂った女


レーナさんは分かっているのかしら。

一人の男性を二人の女性で仲良く共有する事なんて出来ないのよ?

それにレーナさんはいつも私はヒロインだからって言っていたけど、エドワード王子の妃になったスカーレット様からしてみればレーナさんは悪役令嬢なのよ?

夫の心も体も独り占めして面倒な事はしない。いいとこ取りするレーナさんは悪役そのものじゃない。

それを分かってる?

本当にエドワード王子が好きなら、私に婚約破棄を言う前に「王子なんか辞めて一緒に平民になりましょ」って言えば良かったんじゃない?

平民になったエドワード王子は好きじゃないの?もしそうならそれは本当に好きじゃないわよ?何もかも捨ててそれでも愛を貫く、そのくらいの覚悟を見せてほしかったわ。

だからね?これから起こる事はレーナさんの自業自得なの。

それを分かってね?




私が作り上げた乙女ゲームの世界。私は傍観者として最後まで見守ったわ。

エドワード王子の愛を受け取ったのはレーナさん。

処刑をされたのはスカーレット王子妃。

結果だけならね。


巷では『悲恋と狂った女の末路』なんて言われているけど、私からしたら悲恋はレーナさんじゃないわ、スカーレット様の方よ?

幼い時からずっと好きだったエドワード王子と婚姻して、愛されてると思っていたのにエドワード王子の愛はレーナさんだけのもの。

厳しくて辛い思いをしながら妃教育を受けて泣きながら部屋に戻ればエドワード王子はいつもいない。慰めてくれる人も労ってくれる人も誰もいない。

初夜だって初めてのスカーレット様に口付け一つしないでただ入れただけの乱暴な行為。事が終わればエドワード王子は直ぐに部屋を出て行った。それに閨事をしたのは初夜の一回だけ。

今までは意図的に回避していた事が無くなればスカーレット様がレーナさんの存在に気づくのは当たり前よ。自分は初夜の一回だけ、それも乱暴に扱われたのに対しレーナさんは毎夜エドワード王子に優しく抱かれている。

愛を囁き優しいエドワード王子を知らないスカーレット様がエドワード王子の愛を独占しているレーナさんに憎悪を持つのは仕方がないわ。

貴女達は部屋にこもっていたから知らないでしょうけど、スカーレット様は貴女達が情を交わしている部屋の前にいたのよ?だってその部屋エドワード王子の私室じゃない。

ねえ、レーナさん、貴女は側妃じゃないの。貴女は愛妾。エドワード王子と婚姻したの?していないでしょ?

レーナさん、貴女はエドワード王子を体で誘い惑わし色恋に溺れさせた悪女。エドワード王子は色恋に狂った好色王子。

そんな二人が悲恋?

あはははは!笑わせないで!



レーナさんの存在を知ったスカーレット様は日に日に狂っていった。

厳しい王子妃教育では、エドワード王子とレーナさんで苦しむスカーレット様の心の内なんて関係ない。今現在エドワード王子と婚姻しているのは妃になったスカーレット様だけ。

その事実だけが重要なの。

厳しい教育に耐える意味を失い、幼い時から好きだったエドワード王子を失い、周りに味方の取巻きもいない、護ってくれる両親もいない。

孤独になったスカーレット様は自暴自棄になり、エドワード王子とレーナさんが情を交わしている最中に部屋に乗り込みそのまま二人を剣で刺した。

エドワード王子とレーナさんは裸。情事の跡が生々しく残るベッドの上で発見された。レーナさんには何回も刺された跡があり、エドワード王子に抱きついているスカーレット様の顔は返り血で染まっていた。

それでもエドワード王子の亡骸に抱きつくスカーレット様は幸せな顔をしていた。


あはははは!優しい?どこが?

嫉妬に狂っただけじゃない。レーナさんだけを暗殺すれば良かったのにどうしてあんなに好きだったエドワード王子まで手に掛けたの?

そうね、エドワード王子を愛するが故に憎しみにもなるわよね?

「お前みたいな女、初めから好意なんて持っていない!都合が良いから利用しただけだ!私はお前の事が幼い時から死ぬほど嫌いだ!私の側に来るな!その顔もその声も吐き気がする!」

そんな事を言われたら愛が憎しみに変わっても仕方がないわよ。

でもね?

王妃になるんでしょ?そんな弱い人に王妃は無理よ?




スカーレット様はエドワード王子と愛妾のレーナさんを愛憎で殺した罪で婚姻して2ヶ月後、処刑になった。

たった2ヶ月。2ヶ月しか保たなかったのね。



執行日、処刑台に首を置いたスカーレット様は、


「はははは!」


高らかに笑い、目から涙が流れ一本の線になった。


ガシャン




これはこれからも語り継がれる悲恋と狂った女の末路の物語。エドワード王子とレーナさんの一途な愛を妬んだスカーレット様の物語。

それでも私は思う。

これはスカーレット様の物語。ヒロインはスカーレット様、悪役令嬢はレーナさん。エドワード王子を巡るスカーレット様の悲恋の物語。

悲恋も狂った女もスカーレット様でしょ?


物語は見方一つで変わる。

ヒロインはレーナさんかスカーレット様か。
悪役令嬢はスカーレット様かレーナさんか。

エドワード王子は他の女性にうつつを抜かした時点で幸せな結末はなくなった。結果として殺されただけで、廃嫡され平民になった所で幸せな結末にはならない。贅沢に優雅に至れり尽くせりの環境で産まれてからずっと暮らしていた人が平民になった所で生活は出来ないわ。

それに平民になったら孤独になる。レーナさんが付いてきてくれる訳がないでしょ?スカーレット様が付いて行く訳がないでしょ?貴方は一人。

エドワード王子、

貴方はいずれ国王になりたかったのよね?婚約者一人と向き合わず、自分が愛した人しか見ない信じない。そんな人が国王として相応しいと思う?

王子なら、この国を背負うなら、他の女性にうつつを抜かしたら駄目なの。貴方は手本にならないと。

自分の伴侶を大事にし他の女性に見向きもせず生涯愛する。

国を背負う貴方が妃ではなく妾を愛し大事にしたら、この国は妻ではなく愛人優位の国になるでしょ?

誰も妻になりたがらないわよ?妻になってもなんの得にもならないじゃない。面倒な事だけ押し付けられ責任を取らされる。

誰が妻になりたい?

愛人で自由気ままにしている方が楽じゃない。そうでしょ?

レーナさんを愛した時点で貴方の最悪な未来は決まっていたのよ?


それに貴方はスカーレット様が部屋に乗り込んだ時、真っ先に貴方はレーナさんを盾にした。愛していたのよね?そのレーナさんを貴方は盾にしたのよ?絶命したレーナさんの体を何度も盾にしたのよ?


この結末は全て、王子の貴方の責任。

二人の女性の人生を狂わせ死に追いやった。自らも死んだんだから関係ないとは言わせないわ。


ここに元婚約者、王子妃を蔑ろにし続け快楽に溺れた証拠がある。

いつか、近い未来に「暴君王子、妾の悪女と妃を嵌めたエドワードの物語」が巷を騒がすかも、ね?



「さも生きてるように吹聴して」

「承知」


今日も晴天。


「あはははは!死んでも死なせないわ!」





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