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しおりを挟む1ヶ月の長旅もようやく終わりを告げる。産まれてからこんなに長く馬車に乗る事も、遠い地まで来る事も無かったから、景色を見たり、途中観光もし、楽しい旅だったわ。
馬車にずっと座っていると体のあちこちが痛くなったから、途中横になりながら、メイド達と話をしたり、寄った町でお菓子を買って食べたりと、馬車の中でも楽しく過ごせたわ。
最後の宿で、私が産まれてからお世話をしてくれているメイドのクレアが突然泣き出し、他のメイドのメリーとミアまで泣き出し、私まで涙が出て、4人で泣いたわ。
1ヶ月、私の我儘で同じ部屋で寝起きしてもらったの。執事には予め同じ部屋にしてもらう様に頼んであったけど、クレア達は「私達メイドとお嬢様が同じ部屋などいけません!」と言われたけど、「貴女達と過ごす最後の1ヶ月なの」と、私の我儘を聞いてもらったの。
辺境の邸に向かう朝、クレア達は私を綺麗に仕上げてくれた。クレアは朝からずっと泣いていて、
「お嬢様、やっぱり私は辺境に残ります。お嬢様一人残し帰る事など出来ません。 お嬢様はクレアが我が子の様に大事に大事にお世話しました。例え戦争になり殺される事になっても構いません。私の事は捨て置いて頂いても構いません」
「クレア、ありがとう。だけど、それは駄目よ。私もクレアが大事なの。クレアには生きていて欲しいの。私にとってクレアは第二の母なのよ?これからお兄様もお子が産まれるわ。クレアにはお義姉様を手伝ってほしいの。ね?」
「うぅぅ…お嬢様……」
「さぁ、出発しましょ」
4人で涙し馬車に乗り込んだ。邸に着く手前で化粧を直され、皆、目が赤くなっていたわ。
頑丈な大きな門を通り、邸の玄関前に馬車が止まった。馬車の扉が開き、執事に手を借り馬車を下りた。
邸前に男性と女性が立っていたの。
私は二人の前に立ち、カーテシーをしてから、
「第二王女、アリシアと申します。これからよろしくお願いします」
私は頭を下げた。
男性が、
「アリシア王女殿下、遠路はるばるお越し頂きありがとうございます。私は執事のイザークと申します。そしてアリシア王女殿下のお世話をさせて頂きますケイトです。 こちらこそこれからよろしくお願いします」
女性が、
「アリシア王女殿下、こちらでのお世話をさせて頂きますケイトと申します。これからよろしくお願いします」
二人は私に頭を下げた。
「イザークにケイト、これからよろしくお願いします」
私はもう一度二人に頭を下げた。
私は顔を上げてから、
「イザーク、ジルベーク様はどちらにお見えでしょうか。ご挨拶をしたいのですが…」
「はい、アリシア王女殿下。本来なら当主自らお出迎えする予定でしたが、朝から国境付近に行かれまして。申し訳ありません」
「大事なお仕事です、気にしていません。こちらに戻られましたらご挨拶したいと伝えて頂けませんか?」
「分かりました。必ず伝えます。ただ、夜遅くなるかも知れません」
「それでも構いません。お願いします」
「はい」
「先に荷物を運びたいのですが、構いませんか?」
「はい。お部屋までご案内致します。ケイト、お願いします」
私達はケイトに部屋まで案内して貰い、護衛達に荷物を運んで貰い、クレア達メイドは部屋の衣装部屋にワンピース等をしまった。
王城から来た執事とイザークは王命の書類やその他の書類や手続きを執務室で行っていた。
荷物も運び終わり、部屋の片付けも終わり、執事を待ってから、昨夜泊まった宿へ行き、明日の朝、王都へ帰るらしい。
玄関前、私は護衛達に労いの言葉をかけ、クレア達と最後の別れをしたの。クレア、メリー、ミアにも道中の労いの言葉をかけ、三人が泣き出すから、私も涙が出たわ。クレアが優しく抱きしめてくれて、
「お嬢様、お体には気をつけて下さい。いつでも呼んで頂けたら、直ぐにでも駆けつけますから。私の可愛いお嬢様…」
「クレア、ありがとう。クレアも体には気をつけてね。クレア…今まで本当にありがとう……ううっ」
私達は抱き合いながら、涙が止まらなかった。
執事が来たので、
「長い道中ありがとうございました。帰りはゆっくり帰って下さい。今日は皆に美味しい食事と護衛騎士達にはお酒も出して下さい」
「アリシア王女殿下も、お体にはお気をつけ下さい。お元気で」
執事が馬車に乗り込み、馬車は走り出し、邸を後にした。私は馬車が見えなくなるまで手を振り続けた。
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