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しおりを挟む「ケイト、大丈夫?」
「私は大丈夫です。アリシアお嬢様は大丈夫ですか?」
「私は傷一つないわ。ケイトの方が怪我してるのよ?」
「別に痛くないですしちょっと血が出ただけです」
「傷の手当てをしないと」
「辺境に戻ってからで大丈夫です」
「そう?」
ジル様はボル様ノール様ゼフ様クルト様と話していて他の騎士は街の人の対応をしている。
エリオット元王子はノール様から代わった若い騎士が取り押さえている。未だに騒いで暴れているけど。
流石に早く帰ってケイトの傷の手当てがしたいなんて言えないわね。
「お、おい!」
その声に目を向ければケイトの後ろから殺気だった目をしながら走ってくるエリオット元王子の姿が…。私はケイトの腕を引いて私の後ろに隠した。
「アリシアお嬢様ーー!」
ケイトの悲痛な叫びが聞こえた。
首を圧迫するように腕が絡まり、私の後ろにはエリオット元王子がいる。
少し離れた所にいたジル様の伸ばされた手が空をつかんだ。
「シアーーー!」
私の差し出した手がジル様の手を掴むことは出来なかった。
「エリオット元王子、止めて下さい。これ以上騒ぎを大きくしたらどうなるか分かっているでしょう。王女の私を人質にしたらそれこそ国と国の争いになります」
「お前は人質じゃない、私の婚約者だ。婚約者を連れ戻しに来ただけだ」
「実際、もう婚約者ではないのはご存知だと思います。そして貴方は廃嫡されたとはいえ隣国国王のご子息、私の同意なしで国へ連れて帰ればこの国の国王が黙っていません。貴方の考えなしの行動で我々は大義名分を得ました。それを貴方は分かっているのですか?」
「父上が…」
「貴方の大好きなお父様が貴方を護ってくれると?大義名分を得た我々が戦を仕掛けても貴方を護ると本当にそう思いますか?その時貴方は廃嫡した息子で国とは関係ないと切り捨てられるとは思ってもいないのですか?」
ジル様が私を見つめ頷いた。私は瞬きをして答えた。
考えているエリオット元王子の腕の力が緩くなり、私は思いっきり足の甲を踏んだ。首に絡まっていた腕が外れ、私はエリオット元王子の大事な所を力いっぱい蹴り上げた。
「ヴグッ」
エリオット元王子は蹲りボル様が取り押さえた。
私はジル様に抱きしめられ、
「お前は馬鹿か!なんで無茶をする!」
「ごめんなさい」
「いや、悪い」
「ジル様、私でも出来ました!」
「ああ、そうだな。よくやった」
ジル様が私の頭を撫で、
「だが無茶はするな」
「ですがジル様が言ったのですよ?すきを見つけてやれ!と」
「そんな事言ってないが」
「さっき目が合った時にそう言ったではありませんか」
「俺は、少し待て必ず助ける、と言ったつもりだったんだが」
「え?」
「だが結果良かった。よくやったな」
「ジル様に近づきました?」
「シア、あれが通用したのはあの馬鹿王子だけだ。他の者には絶対にするなよ?」
「分かりました」
「軟弱な馬鹿王子で助かった。普通は人質をとっている時に考え事などしない、すきを見せる事はしない」
「ほらそこは馬鹿王子だからですよ」
「フッ、そうだな」
ジル様は私を抱きしめ私の耳元で、
「良かった、またシアを抱きしめられた…」
私はジル様をギュッと力いっぱい抱きしめ、ジル様の腕の中にいる幸せを噛みしめた。
「アリシアお嬢様ご無事ですか」
「ケイト、私は大丈夫よ」
「どうして私を庇ったのです」
「どうして?体が勝手に動いたのよ?」
「それでも、」
「ケイトが無事で良かったわ」
「お嬢様…」
「ケイトは怪我をしちゃったけど皆無事だったんだから、ね?」
「分かりました。ありがとうございます」
「さあ、帰りましょ?」
「はい」
ジル様は私の手を離さず、私と手を繋いだまま指示を出している。
「ゼフ、お前の所の騎士をもう一度鍛え直せ!」
「申し訳ありませんでした」
「取り押さえておけないなど問題外だぞ!」
「はい、申し訳ありませんでした」
ゼフ様が頭を下げている。
エリオット元王子を押さえていたのはゼフ様の部隊の騎士だったのね。騒ぎ暴れていたから押さえている手が緩んだのかもしれないわね。
今はボル様から代わりクルト様が取り押さえている。
さっきまで騒ぎ暴れていたのが嘘のように蹲り動けないみたい。クルト様が押さえているのもあると思うけど、でも男性の急所への攻撃?凄いわね。
それから街も平穏を取り戻した。
馬車まで向かう途中、
「あの馬鹿王子はこれからどうなるのですか?」
「騎士隊の牢屋に入れる。まあ何かあった時の交渉になるが、あちらの国王が息子と認めるかは分からないな」
「そうですね。一応もう廃嫡した息子ですもの」
「あれで王子とはな」
「それだけ本人も切羽詰まっていたのですね」
「今更シアを渡すかよ」
「私はジル様から離れません」
「当たり前だ」
「あの馬鹿王子、真実の愛の相手に捨てられたそうです」
「そんな女だと気付かなかったのか?」
「馬鹿王子ですから」
「女を見る目がないな」
ジル様は呆れた顔をしていました。
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