褒美で授与された私は王太子殿下の元婚約者

アズやっこ

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距離が縮まり

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「無理はしないで下さいね」


今はリーストファー様と花壇に花の苗を植えている。リーストファー様は膝をつく姿勢がまだ辛いようで、地面に腰をおろし苗を植えている。

リーストファー様は花壇の外側を、私は花壇の中心を、手分けして植えていく。時々『元気に育てよ』とリーストファー様の声が聞こえ、私は『クスッ』と笑ってしまう。私も『元気に育ってね』と苗に声をかける。


「リーストファー様、少し休憩をしませんか?」

「そうだな」


私はリーストファー様に杖を渡し立ち上がるのを支える。リーストファー様の重みに倒れそうになるのをグッと堪え足を踏ん張る。

痛そうな辛そうな顔をしながら立ち上がったリーストファー様のズボンの土を払い、ゆっくり歩くリーストファー様の隣を、私もゆっくりと歩く。

始めのうちは毎度男性の使用人を呼んで立たせてもらっていた。いつ頃からか立つコツを掴んだのか、今は私が支えて立てるようになった。

騎士だからだけではない。彼の日々の弛まぬ努力の成果だと思う。

毎度男性使用人に着替えさせてもらっていた服も、今は自分で着替えれるようになった。ワンズが部屋に入ってもうめき声は聞こえなくなった。

ただ、今はリーストファー様の部屋から大きな物音が聞こえてくる。

何をしているのかは分からない。それでも私はそっと見守るだけ。


テーブルの上には冷たい飲み物が用意されていて、私達は椅子に座った。少し離れた所にはニーナの姿。

テーブルの上に置いてあるガーゼを手に取り、リーストファー様の汗を拭く。


「お、おい、ニーナがそこにいるだろ」

「妻が夫のお世話をして何か問題がありますか?」

「なら夫が妻の世話をしても問題はないよな?」


そう言うとリーストファー様も私の汗をガーゼで拭いた。お互いの汗を拭き合う私達からニーナはそっと視線を外した。

私は『ふふ』と、リーストファー様は『ククッ』と、二人で見つめあい笑いあった。

冷たい飲み物が火照った体を冷やし渇いた喉を潤した。

二人でさっき植えた花壇を見つめる。


「だいぶ増えたな」


ポツリ呟いたリーストファー様。

この邸で暮らし始めた時は土だけの花壇ばかりだった。殺風景な庭を花で賑やかにしたいと始めた。始めは一人で、それからリーストファー様も加わり、土だけの花壇が花の苗で埋まってきた。残る花壇はあと2面。


「そうですね。花壇が終わったら薔薇のアーチでも作ります?それとも、今度苗を植える時は、花が咲いた時に何かの絵が浮かび上がるように作ります?」

「そうだな、どうせなら両方作ろう」

「ええ、そうしましょう」


お互い顔を見合わせ笑いあった。

この庭が少しづつ変わっていくように、私達の関係も少しづつ変わっていくように思えた。これから作ろうとこれから先の事を考える二人の時間は、これから先も一緒だと思わせてくれた。


「俺は奪ってばっかだな」


リーストファー様はポツリと呟いた。


「そうですか?」

「俺の世話を焼く為に時間を奪ってる」

「でも私は好きでやってます」

「絵を探すのも、こうして外に出て汗をかく事も付き合わせてるだろ」

「私は一緒に過ごせて嬉しいですよ?絵を一緒に探しああでもないこうでもないと言う時間も、こうして一緒に花の苗を植えるのも、私は毎日楽しんでいます。それに花の苗を植えるのを手伝ってもらっているのは私の方ですよ?私の方がリーストファー様の時間を奪っています」

「王妃の座も奪っただろ」


ああ、リーストファー様はこれが言いたかったのね。


「元々王妃の座に執着していません。勿論、その座に座ると決まったのなら王妃としての務めは全うするつもりでしたけど」

「だが王太子の婚約者だっただろ」

「婚約者でしたが、私と殿下の間には王太子と王太子の婚約者の関係しかありません」

「どういう意味だ」

「妃にとって一番必要なものは何だと思います?」

「愛か?それとも信頼か?」

「勿論その両方ともあればそれに越したことはないと思います。ですが愛や信頼がどうしても必要かと言われれば、それは否です。

この国のほとんどの婚姻に愛は必要ありません。それは家と家を繋ぐ婚姻だからです。勿論愛は必要と言う人もいます。

幸せの形は皆それぞれ違い、何に重きを置くかだと思います。愛なのか信頼なのか、それとも自分の自由な時間か、皆が各々の場所で各々の幸せを見つけ過ごしています。

ですが王の妃はそれではいけません。王の妃に一番必要なのは覚悟です」

「覚悟?」

「ええ、覚悟です。どんな最悪な事が起こっても動じない心の準備をし、どんな事でも受け止めないといけません。その為の強さが妃には必要です」

「なら俺はその覚悟も奪った事になる。何もなければ王太子と婚姻していただろ」

「何もなければ婚姻していたでしょうね」

「…したかったか?」

「いいえ全く。そういう意味ではリーストファー様にとって期待外れだったかもしれませんね」

「なに、が…」

「リーストファー様がどういう心境だったのかは私には分かりませんが、私が推測するに殿下から私を奪いたかった。正確に言えば殿下から大切なものを奪いたかったのでは?違いますか?」


リーストファー様は驚いた顔をしていた。



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