妹がいなくなった

アズやっこ

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 ガインが次の子を連れて入って来た。


「座って」


 少女が座り、


「君が一週間考えた思いを聞かせてくれるかな?」

「私は…」

「君も愛人になりたいの?」

「愛人にはなりたくない。セナンちゃんが愛人になるって言ったからそれに従っただけ」

「なら何でセナンに従ったの?」

「孤児院では強い子の近くにいるのが安全だから」

「それでセナンの側にいたの?」

「そうよ」

「それで?君は愛人になるのは嫌、なら何をするの?」

「私は別に普通でいい」

「普通か…。それが一番簡単に思えて難しいんだよ?何をもって普通なの?」

「普通にお金が稼げて普通に生活出来ればいいの」

「その普通にとは?」

「別に高望みしてないもの。そこら辺の食堂で働いてもいいし」

「食堂か」

「だって簡単じゃない。ご飯を運ぶだけでしょ?孤児院でもご飯運んでるし」

「客商売は簡単じゃないよ? 理不尽に怒られる時もあるし、働きに見合った給金が貰えるとは限らない」

「そんなの何とでもなるわよ。嫌なら辞めればいいんだし」

「さっき俺が言った普通が一番簡単で難しいってどう言う意味か分かる?

毎日働きお金を稼ぐ、誰しもがやってる普通な事だ。だけどね、毎日働くって大変なんだ。食堂なら忙しい日もあるだろうし暇な日もあるだろう、怒られる事もあるし嫌な事を言う客もいる。どれだけ怒られても嫌な事を言われてもそれでも毎日食堂で働かないといけない。調子が悪くても笑顔を作って接客しないといけない。

嫌なら辞めればいいってそれを繰り返してたら君を雇ってくれる所はなくなるよ?誰だって我慢強く頑張る子を応援したくなる。

毎日働くのは簡単だ、何も考えずにただ働けばいい。だけどお金を稼ぐのは難しい。ただ運べばいいだけじゃない、接客、態度、言葉使い、その付加価値ありきの給金なんだ。

毎日同じ事の繰り返し、生活の為に朝起きて仕事に行く、それを何年と何十年と続けていき持続しないといけない。

君の普通って何?」

「それは」

「適当に働いてお金貰って、働き場所の強い人の側にいて護って貰って?」

「それのどこが悪いの?」

「別に悪くないよ、それも生き方だ」

「ならいいじゃない」

「まあね。働く食堂は君が見つけないといけない」

「どうして?世話してくれるって言ったじゃない。あれは嘘だったの?」

「こっちも言ったはずだよ?」

「え?」

「我々が己の家名を出す以上半端な真似はしないで欲しいと言っただろ?」

「言ってたけど」

「俺から見て君は半端者だ。そんな君に家の家名は出せないよ。他の方々は分からないけどね」

「お祖父様」

「儂も厳しいな。アイリーン譲はどうだ?」

「私の今の家名はあってないようなものなので、協力は出来かねます」

「だそうだ。君は自分で働く場所を探すんだね。孤児院から紹介して貰える所があるだろ?」

「孤児院から紹介される所なんて安い給金でこき使われる所しかないのよ?」

「それが今の君の現状だ。それを受け入れて頑張るしかない」

「そんな」

「ガイン、次の子を呼んでくれないか」

「待って、待ってよ」

「何」

「なら私はどうなるの?」

「孤児院から紹介される所が嫌なら自分で探せばいい。食堂は何件もあるんだから。ガイン」


 ガインが少女を立たせ、部屋から出て行き、ベンが次の子を連れて入って来た。


「座って」


 少女が座るのを確認して、


「一週間考える時間をあげたけど君の考えは?」

「わ、私は」

「何?」

「あ、あ、あの…」

「チャーリー代わるわ」

「エリー?分かった」


 私は少女の座るソファーの横に座り、


「ゆっくりでいいのよ?」

「は、はい」

「貴女はどうしたいの?」

「わ、私は」

「うん」

「こ、孤児院から、で、出たく、な、なくて」

「孤児院で働きたいの?」

「そ、そう」

「それならシスターになりたいって事?」

「し、シスターは、む、無理、だ、だから」

「シスターのお手伝いをしたいって事かしら」

「そ、そう」

「まあ素敵じゃない」

「ほ、本当に?」

「ええ、孤児院にはシスターだけでは手が回らない所が沢山あるわ。例えば赤子とか幼い子とか自分一人で何も出来ない子達の手伝いを貴女がすればシスターは助かるのではないかしら」

「う、うん」

「シスターにならなくてもいいのよ。孤児院の子達のお姉さんやお母さんに、ううん友達だって良いわ、孤児院で育った貴女だから出来る事が必ずあるわ」

「う、うん」

「貴女は今迄は護られる方だったけど、これからは貴女が護る方になるの。簡単な事ではないわ、それはとても難しい事よ? それでも諦めないでね?」

「う、うん」

「貴女、名前は?」

「せ、セシル」

「セシル、いい名前ね」

「あ、ありがとう」

「お祖父様」


 私はお祖父様の方を見て、


「エミリーの好きにしなさい」

「ありがとうございます」


 私はセシルの方を向き直し、


「セシル、セイリーン孤児院でそのまま働きたいのよね?」

「う、うん」

「それなら私が貴女の所のシスターに手紙を書くわ。貴女が卒院したらそのまま手伝いとして雇うように」

「い、いいの?」

「ええ」


 セシルは満面の笑みを見せた。



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