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悪女と呼ばれた王妃
処刑後のアルバート視点
しおりを挟むナーシャの様子を見に行き、ナーシャはうわ言のように何度も『ごめんなさい』と謝っている。俺はナーシャの髪を撫でる。
俺はナーシャを愛してる
何度も何度もそう自分に言い聞かせた。
俺は間違っていない
何度も何度もそう自分に言い聞かせた。
今は友を失い少し感傷的になっているだけだ。
ナーシャが目を覚まし、
「ナーシャ、もう泣くな。ナーシャが謝る必要はない。あの者達は罪を犯した。そして罰を受けただけだ。ナーシャが気に病む事はない。もう忘れよう」
俺は自分自身に言い聞かせた。
「違う…、違う…、」
「ナーシャ、もう忘れよう」
「違うんです…」
ナーシャは泣きながら起き上がった。
「私がリリーアンヌ様を殺したんです」
「ナーシャ、リリーアンヌは俺達の子を殺した。それは立派な罪だ」
「………私は嘘をつきました…」
「嘘?」
「………子は、子は初めからいません、でした…」
「な、な、にを、」
「子は出来ていなかったんです」
「腹は大きくなっていただろ!」
「……クッションを入れていました」
「どうして、どうして、そんな、嘘を、どうしてそんな嘘をついた!」
「第二夫人になる為に…、アルバート様の妻になる為に…。
でも私も仕方がなかったんです。一つ嘘をつけば嘘をつき続けるしかなかったんです。それにアルバート様ならリリーアンヌ様を許すと…。長年アルバート様を支えたリリーアンヌ様を、アルバート様なら許すと……」
「なんてことを、なんてことをしたんだ!なら俺は、何の罪もないリリーアンヌを憎み恨み、殺したと、言うのか……。
どうして!どうしてそんな嘘なんかついた!
どうして!どうして……、
リリーアンヌ…、リリーアンヌ……あぁぁぁ、あぁぁぁ…あぁぁぁ……」
俺は膝から崩れ落ち声を出して泣いた…。
泣いて俺は今度は俺が嘘をつき続けるしかないと思った。
嘘をつき続けるしかもう道はない
王としてこれからも君臨し続けるには、
嘘をつき続けるしか、もう道は残っていない。
「ナーシャ、誰にも言うな。これはお互い墓場まで持っていくしかない。分かったな?」
「……はい」
「公爵は知っているのか」
「……はい」
「そうか」
「これからもお前は嘘をつき続けろ。子はリリーアンヌに殺されたと、良いな」
「ですが、」
「もうそれしか無いんだ!それくらいお前でも分かるだろ!」
俺は大きな声を出した。
「お前は俺に従っていれば良い」
「……分かりました」
俺は無実の者達を処刑した。それも今しがただ。
今更言えるか?
ナーシャには子が出来ていなかったと
言える訳がない。
何の為に反対意見を無視してナーシャを娶ったと思う。
ナーシャに子が出来たからだ
今更、今更もう遅いんだ…。
第二夫人問題で何人が死んだ?
無実の人間が何人死んだ?
父と慕った
友を失った
長年王族に仕えた者を
臣下を
そして、
幼い頃から愛する人を
今更、今更もう遅い……
それならこれから守るものを俺は守る。
王の座を
臣下の信頼を
民が敬う存在を
自分自身を
俺は守る。
これからも王として君臨する為に
王として名を残す為に
この嘘を背負い生きていく。
「ナーシャ、お前は王妃として宴に参加しろ。とにかく笑って座っているだけで良い、分かったな」
「……はい」
俺はフォスター公爵を探した。
「公爵、宴をするぞ。皆が望んだ処刑だ、祝いとは違うが悪魔から解放されたこの国の未来への宴を開催する」
「それは良い案だと思います」
「貴族達に連絡を。それからリリーアンヌの亡骸を会場に」
「承知しました」
リリーアンヌ、すまない。だがこれしか方法がないんだ。
リリーアンヌを悪に、俺が王でいるにはそれしかないんだ。
リリーアンヌなら分かってくれるだろ?
この方法しか、俺が王としてこれからも君臨する為にはこの方法しかないんだ…
宴が始まりナーシャは時折泣きそうな顔をする。
「ナーシャ、リリーアンヌを見るな。それから笑え。なんてことないと笑え、良いな」
俺はナーシャの耳元でそう言った。
「……はい」
貴族達は華やかな装いで楽しそうにしている。
俺も玉座からにこやかに笑う。
この席は俺のだ
この国は俺のだ
もう迷わない。
俺は自分自身の為に強くなる。
それに皆喜んでいるだろ?
リリーアンヌが死んで皆喜んでいるだろ?
俺は悪くない
皆の為に悪を排除しただけだ
皆もリリーアンヌを疎ましいと思っていたんだろ?
目の上のたんこぶだと思っていたんだろ?
だからあんなに悪女だの悪魔だの騒ぎ立てた。
それはなぜだ?
お前達もリリーアンヌを排除したかったからだ。
違うか?
だから宴にこんなに人が集まり、こんなに騒ぐんだ。華やかな衣装で着飾り、話し、楽しそうに笑う。
昼間に処刑があったとは思えないほどにな。
リリーアンヌの死を心から喜んでいる。
その証拠に
リリーアンヌの亡骸に敬意もない。食べ物を投げ水を浴びせる。足で体を突く者もいれば頭を蹴った者もいた。
あれだけ民を大事にと言っていたのにな。
フッ、
どうだ?リリーアンヌ
上に立つ者には正解な事が貴族には不正解なんだ。貴族は自分の意見を聞いてくれる王を望む。俺のようなな。俺のような王が望まれる。
見てみろ
貴族達の楽しそうに笑う笑顔を
華やかな衣装で踊るダンスを
現実を見てみろ
リリーアンヌがしてきた事は結局理想論なんだよ
結果的に何が残ったと思う
悪を排除した俺を称える臣下達の姿だけだ
もう未熟な王とは言わせない
結果的にナーシャの嘘で俺は強くなった
リリーアンヌが望んだ
孤独で強い王に
俺はなった。
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