年の差のある私達は仮初の婚約者

アズやっこ

文字の大きさ
11 / 39

11


「セレナ、後妻として嫁ぐということはお前だけの問題ではない。父様や母様は誰に何を言われようとお前が幸せなら耐えられる。お前も誰に陰口を叩かれようが耐える覚悟があるのだろう。だがアニーはどうだ?

それに我がリブ子爵家の信用問題にも繋がる。我々だけの家族なら、お前の好きにしなさいと言ってやれた。だが小さいながらも領地があり、そこで暮らす領民がいる。邸の使用人達もいる。我々貴族は皆の生活を養う義務がある」

お父様は私を諭すように優しい口調で話した。

「あちらのダフリー侯爵家はまだいいが、被害を被るのは我がリブ家だ」

私は何も言えなかった。

陰口を叩かれるだけならまだいい。

お父様の言うように、被害があるのは我がリブ家。娘を後妻として嫁がせた、それが意味することは、リブ家は没落する一歩手前だと連想させる。侯爵家からの資金援助なしには存続するのが難しい状態だと。

資金援助をしているかしていないかなど、誰にも分からない。

それでもその噂が流れれば取引先はリブ家から手を引くだろう。新たに取引先を見つけることも困難になる。

信用問題、貴族は信用あってこそ。

私の浅はかな考えで、大切な人達を不幸にしてしまう。

いいえ、してしまった。

今さら全てが嘘でしたと言う?アニーとショーンを婚約させたいが為に嘘をつきましたと?そんなことを言えばアニーは傷つき自分を責める。

私の婚約者候補だと知っていたのに、恋情を抱いたと。

自分さえそんな感情を抱かなければ私が嘘をつく必要もなかったと。

そしたら誰でもいいから婚約をしようとする。

それはショーンにも言える。

婚約者候補の妹に恋情を抱いた。喩え私に友情の情しかなくても、それでも自分の心を殺して私の婚約者候補として振る舞うべきだったと。

私達3人の関係は歪になる。誰も幸せになれない。誰も好きな人と結婚できず不幸になる。

仲が良かった姉妹の関係も、仲が良かった幼馴染との関係も。

相思相愛の二人の為に行動した。その結果が相思相愛の二人を引き離す結果になろうとは思いもしなかった。

使用人達の生活も、領民達の生活も、私は何も考えていなかった。

私が起こした過ちに、私が責任を取る。

「お父様、私を勘当してください」

「なにを馬鹿な……」

「私は世で言う好きになってはいけない人を好きになりました。家族を思えば諦めるべきでしょう。ですが諦めきれないのです」

私は家族を騙し嘘をつき続けるしかない。

「そこまで好きになったのか」

「はい」

お父様は頭を抱えた。

「少し父様に時間をくれないか」

お父様は頭を抱え俯いたまま。私は立ち上がり書斎をあとにした。

「レイラごめんなさい。貴女にも迷惑をかけたわ」

私の後ろを歩くレイラ。

「私こそ申し訳ありません」

「レイラは何も悪くないでしょう」

「ですが…」

レイラは何も悪くない。それはお父様も分かっている。だからレイラを辞めさせたりしない。

私はそれから私室で謹慎ではないけど、自主的に私室から出なかった。

反省ではなく、自分の意思を曲げるつもりはないという反抗。

何日も私が私室に籠もれば皆異変に気づく。そんな中、レイラはせっせと私の部屋に毎食ご飯を運んでくれる。

そんな生活を過ごし、ニ週間が経とうとした頃。

もう寝ようと私はベッドに入り、レイラが部屋を出ていこうとした時、一階はバタバタとしていた。

「下は騒がしそうね」

「何かあったのでしょうか。少し様子を見てきます」

レイラは部屋を出て行き、私は寝るに寝れず、ベッドの横にあるテーブルの上に置いてある水を飲んだ。

暫くして部屋に入ってきたレイラ。

「旦那様が珍しく酔ってお戻りになられたそうです」

「お父様が?珍しいこともあるのね」

今日は王宮で行われる定例会に出席していた。貴族の当主が一同に集まり、その後食事をしながら談笑する。もちろんお酒も振る舞われる。お父様は付き合い程度には飲むけど酔ったりはしない。

酔って帰ってくることなんて今まで一度もなかった。

もしかして私のせい?

でも貴族の当主が集まる定例会で醜態をさらすかしら。それこそ家で何かあったと皆に教えているようなもの。

私のことが頭にあったとしても、そのことは隠し通すわ。何事もないと、いつも通り振る舞うはず。

お父様は外で感情を表に出すほど馬鹿じゃない。

レイラが部屋を出て行ったあとも、私はお父様が気になって眠れなかった。

お父様の様子を見に行こうか、それでも反抗の為に部屋に籠もっているのに、今ここで部屋を出るのはどうなの、と一人で葛藤していた。

それでもやっぱり気になって、居ても立っても居られないと静かに部屋を出た。

今は夜更け、使用人達も私室に戻っている時間。邸の中は静まり返り、私が部屋を出ても誰も気づかない。

一階に下りれば書斎からぼそぼそと聞こえるお父様の声。

私は音を立てず静かに書斎に近づいた。


感想 24

あなたにおすすめの小説

彼は亡国の令嬢を愛せない

黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。 ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。 ※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。 ※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

そう言うと思ってた

mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。 ※いつものように視点がバラバラします。

彼が愛した王女はもういない

黒猫子猫
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。 どちらも叶わない恋をした――はずだった。 ※関連作がありますが、これのみで読めます。 ※全11話です。

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。