年の差のある私達は仮初の婚約者

アズやっこ

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次の日、ラウル様は我が家にやって来た。もちろんお母様が出迎えていたわ。

お母様とラウル様はお互い挨拶をし、アニーも加わり、今は4人でお茶をしている。

「子爵は…」

ラウル様はお父様にも挨拶をしたかったみたい。

お母様は「ふふっ」と笑っていた。

お父様はラウル様が来ると分かって、いそいそと出かけてしまった。きっとショーンの家に逃げたのね。

ラウル様はお母様とアニーから質問攻め。

アニーなんて「お姉様のどこが好きなの?」って直接聞くのよ。

ラウル様だって困るわよ。一目惚れは設定上の話だもの。それでもラウル様は嫌な顔をせずアニーの質問に答えていたわ。

女性3人に囲まれたラウル様が少し気の毒に思えたわ。

「すみません」

今はラウル様と庭を散歩中。

「俺も話ができて良かったよ。きっと二人共心配だったんだと思う。急に好きな人ができたと言われ、それが俺だからな。二人が安心してくれたらいいんだが」

「安心したと思います。ですが、女性の話は長いですから。疲れたのではありませんか?」

「話をしただけだ。何も疲れるようなことはない。俺も楽しい時間を過ごせたよ」

そう言って笑ったラウル様。

「髪留め…」

ラウル様は私の頭に着いている髪留めを触った。

「着けてくれたんだな」

「はい、ありがとうございます。仮の婚約者なのに頂いてよいのか…」

「貰ってくれ」

優しく微笑んだラウル様。

「よく似合ってる」

誰が着けても女性なら髪留めは似合う。それでも、似合ってると言われ嬉しいような、恥ずかしいような。

「義母上が言っていたように、やっぱり婚約披露はしよう」

さっき4人で話していた時に出た話。

私はしなくていいと言い、お母様とアニーは絶対にするべきと言った。

お互いどちらかに好きな人が現れたら婚約を白紙に戻す関係の私達。婚約披露までする必要はない。

それにラウル様も前にしなくてもいいと言っていた。自分は2度目だからと。

「俺がセレナの綺麗に着飾った姿が見たいだけだ。知り合いを呼んで食事をしたり話したりするだけだと思えばいい」

「ですが」

「駄目か?」

私よりも大人のラウル様が、子供のように伺うように私を見つめる。

「ラウル様がいいのなら」

「ならしよう。俺が見たい。皆に祝福されるセレナの姿を、俺が見たいんだ。だからこれは俺の我儘だ。俺の我儘に付き合ってくれないか?」

「分かりました」

私の返答を聞いて、嬉しそうに笑うラウル様。

私が「しない」と言い切ったことで残念がったお母様とアニー。きっとラウル様はお母様とアニーに気を使ってくれた。

お母様とアニーの為、そう言われたら、私は断固拒否する。「しなくていい」と。

だからラウル様は自分の我儘だと言った。自分がしたいからしようと。

こういう優しさは控えてほしい。

私の家族を自分の家族のように大事にしてくれる。

私の家族の言葉を聞き流さず受け止めてくれる。

それが大人の余裕なのかもしれない。でも15歳の小娘にはその格好良さがキュンとするの。その優しさも、その心配りも、私には初めてのことだから。

私が惚れたらどうするの?

だから優しくしないで。

男性に優しくされたことのない私には、貴方の優しさはまるで毒。

「ですが、今後は結構です。仮初の婚約者の私に、私の家族に寄り添うことはやめてください」

「セレナ?俺は言ったよ?仮初の関係だとしても、俺は婚約者として接すると。セレナにもセレナの家族にも、寄り添うことは婚約者のするべきことだ」

ラウル様は私を諭すように優しい口調で言った。

「それでは困るんです。私は好きな人を見つけないといけないのに。早く見つけないといけないのに…」

「慌てなくていい。ゆっくり探せばいい」

「ですが、……困るんです」

「何が困るんだ?」

貴方を好きになったらどうするの?そう言ってしまいそうになった。

貴方はまだ元奥様を忘れられないのに。貴方の心にはまだ元奥様がいるのに。私はまた、私とは別の人を好きな人を好きになるの?叶わないのに?

もう見つめるだけの恋は嫌。

もう叶わない恋も嫌。

だからきちんと線を引かないといけないの。

仮初の婚約者だと、忘れてはいけないの。

だから私は何度も声に出す。自分に言い聞かせるように。忘れないように。好きにならないように。

「仮初の婚約者は、本当の婚約者ではありません」

「………そうだな」

私はいつだって、貴方から離れられる準備をしないといけない。貴方の優しさを基準にしてはいけない。

「今後は贈り物も控えてください」

「花は嫌いだったか?」

「迷惑です」

「髪留めは気に食わなかったか?」

「迷惑です」

私は少しづつ俯いた。

花も好き。髪留めだって気にいった。

嬉しかったに決まってる。だって花束も髪留めも、男性から初めて貰ったんだもの。私だけに贈ってくれた物。私のことを思いながら選んでくれた物。

嬉しいわよ。

貴方にとって特別な女性だと言われているようで。

嬉しかった……。

「セレナ」

「迷惑です!」

私は俯いた顔を上げ大きな声を出した。

「そうか…、悪かった」

寂しそうな悲しそうな顔をしたラウル様。

ごめんなさい…。ごめんなさい…。ごめんなさい………。

私から巻き込んだくせに、ごめんなさい………。


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