年の差のある私達は仮初の婚約者

アズやっこ

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夕方、ラウル様から手紙が届いた。昨日は悪かったと。それから手紙と一緒にクッキーも届いた。

「お姉様、エマお姉様はもう帰った?」

「ええ、ちょっと前に帰ったわ」

「あっ!それお姉様が好きなお店のクッキーの箱じゃない?」

「ラウル様から頂いたの」

私が持っているクッキーの箱はラウル様から届いたクッキー。街で人気のお店のクッキー。

「この前の髪留めもそうだけど、ラウルお兄様ってお姉様の好きなものがどうして分かるのかしら」

「女性なら髪留めを貰って嬉しいし、それに甘い物も好きでしょ?それにこれは人気のお店のクッキーだもの」

「でも凄いわ。だってあのお店って男性が入るには勇気がいるもの」

街で人気のクッキー店。クッキーが美味しいのもあるけど、店の内装も外装もとても可愛らしいの。だから女性から人気が高い。いつも店内は女性で賑わっているわ。

「ラウル様は買いに行かないわよ。メイドが買いに行ったと思うわ」

もしラウル様が買いに行ったのなら勇気がいったと思う。男性が買ってる姿を見たことがないもの。店から少し離れた所で待つ男性の姿はよく見かけるけど。

それに侯爵のラウル様が直接店に買いには行かない。

それに、悪かったってラウル様が悪いわけじゃない。仮の婚約者なのに出しゃばった私が悪い。婚約者として振る舞うとしても、越えてはいけない一線はある。

婚約者として出かけるのは、あり。でも入り過ぎても駄目。侯爵夫人としての心構えを学びたい、それは、なし。

いずれ白紙に戻す関係なのに苦労をする必要はない。苦労して頑張った所で私は侯爵夫人になるわけではない。

令嬢の中でもそれぞれ立ち位置があるように、夫人の中でも立ち位置がある。

子爵夫人か男爵夫人か、はたまた平民になるのか、それとも結婚しないのか、どのみち下位貴族には下位貴族の立ち位置がある。

私は浮かれていた。

ラウル様に一人の女性として扱ってもらい、初めて贈り物も貰い、もしかしたら私に好感を抱いてくれているのかも、と。

でもラウル様には当たり前の礼儀だったのかもしれない。

先日、ラウル様から手紙が届いた。ラウル様がご友人達と会うから一緒に行かないかという誘いだった。私は「ご迷惑でないのならご一緒したいです」そう返答した。

そして今日、ラウル様のご友人達と会う。

「友人達とはよく集まるんだ」

今は馬車の中。

「皆家族同伴だから賑やかかもしれないが」

「楽しみです」

楽しみ半分緊張半分。

家族同伴ということは私が一番年下。それによく集まるなら奥様同士もきっと仲がいいのだろう。その中に私は受け入れてもらえるのだろうか。

「皆気さくな者達ばかりだ」

ラウル様は私を安心させるように言った。私が不安そうな顔をしていたのだろう。

「この集まりでは爵位も年齢も関係ない。友人とはそういうものだろ?奥方達もそれを受け入れているから心配するな。俺も近くに居る。何かあればすぐ教えてくれ」

「はい」

それで緊張が解れたわけではないけど、それでもすぐ近くにラウル様が居てくれる、それだけで安心する。

馬車が止まり、ラウル様のエスコートで皆が待っているだろう場所に向かう。

馬車の中で聞いた話では、ラウル様達はよくこうして集まるらしい。男同士だけで集まる時もあれば家族同伴の時もある。以前エマの家で会った時は男同士だけの集まりだったらしい。

今日は伯爵家のご友人宅で集まっている。

ラウル様がご友人に声をかければ、皆が一斉にこちらを向いた。

一瞬足が止まった私。

「セレナ?」

優しい声で私に声をかけるラウル様。私はラウル様を見上げる。見上げれば優しい顔で微笑んでいた。まるで「大丈夫だ」そう言っているよう。

私はラウル様の優しく微笑む顔に安心した。

私は「大丈夫です」そう伝わるように微笑み返した。

そしてまた歩きだした。

皆が集まる場所に着けばラウル様はご友人達に囲まれている。私はどうしたらいいのか分からずその場で立っていた。

「ラウル、婚約者を紹介してくれ」

「ああ」

ラウル様は一人立っていた私の手を引きご友人達の前まできた。

「婚約者のセレナだ」

「よろしくお願いいたします」

私は頭を下げた。

「そういうのはなしなし。ラウルの婚約者ならもう身内同然、楽にしてほしい」

「はい」

ラウル様のご友人達は皆さん優しい顔で笑っている。その中にエマのお兄様もいる。

それから奥様方を紹介され、今は奥様方と一緒のテーブルに座っている。

「セレナって呼んでいい?」

「はい」

「そんなに畏まらないで?」

奥様方は皆さん優しい顔で私を見つめている。

「緊張するなって言われても緊張しちゃうわよね?私達のことは友人と思ってって言っても、それも難しいわよね。ならお姉様だと思ってくれると嬉しいわ。セレナにはお姉様がこれだけいるの。私達もセレナを妹だと思ってるわ」

「ありがとうございます」

お姉様方は皆優しい顔で微笑んだ。

どうやら受け入れられたみたい。

私は嬉しくて自然と微笑んでいた。

「かっわいい。こんなに可愛くて私達は心配だわ。いい?何かあれば私達にすぐ言いなさい。ラウルさんが優しくしてくれないでも何でもよ?私達がセレナの味方になるから」

「ありがとうございます。でもラウル様は優しいです」

「そりゃあこんなに可愛いんだもの。優しくしてなければ今ここで私達から説教よ。ね?」

お姉様方は「うんうん」と頷いている。


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