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夕食が終わり、お義姉様とソニック、アンネは部屋に戻り寝る準備に入る。ソニックは嫌がっていたけど…。
残った私達は隣の居間に移りソファーに座る。
「ガイ、ソニックがすまなかったな」
「兄上大丈夫です」
「そうか?」
「はい」
「ガイ、夕食足りた?」
「もうお腹いっぱいだよ」
「それなら良いけど」
私は隣に座るガイに話しかけた。
「父上、酒でも飲みます?」
「そうだな、そうしよう」
「ガイは飲める?」
「あ、はい」
「何でも?」
「一応」
ロナルドがお酒とおつまみを持って入って来た。
「アイリスの結婚に」
「アイリスの結婚に」
お父様とお兄様がグラスを少し上に上げ、ガイも同じ様にグラスを上に上げた。
皆それぞれ飲み出し、私はハーブティーを飲む。
「でも、アイリスの相手がまさか獣人とはな」
「お兄様」
「ガイだって知ってるんだろ?」
「そうだけど。ガイ、ごめんね?」
「気にしてないぞ?獣人、人族は名称だしな。それにクロード兄上の事も知ってるしな」
「そうだけど」
「アイリス、リーナの時凄かっただろ?」
「ラシュ殿?ですか?」
「そうそう、リーナの相手が獣人でそれも番だった。あの時はお前荒れてたよな」
「お兄様は少し黙ってて」
「それでもリーナの相手をいつの間にか許してたよな」
「あれは、ラシュ様がクロードお兄様に敬意をはらってくれたの。お兄様を騎士として認めてくれてたの、だからよ」
「そうか」
「うん」
「兄上は俺が尊敬する騎士だからな」
「うん」
「兄上は立派な騎士だ」
「うん」
「俺やアイリスの面倒を見てくれた。俺は年が近かったから素直に甘えられなかったけど、それでも兄上には全てお見透しだった」
「うん」
「あの、兄上」
「ガイ何だ?」
「兄上は俺達獣人を、その、」
「憎んでないのか、か?」
「はい」
「そりゃあ憎んでるさ。でも俺も王宮で働く文官だ、獣人が憎いからと態度に出す訳にはいかない」
「はい」
「父上もそうだと思うけど、表面上は獣人を嫌ってない。だけどな、心の内では憎しみを持ってる。ガイには悪いな」
「いえ、クロード兄上を思えば当たり前です」
「だけどな、獣人だけじゃない、人族にも憎しみを持ってる。父上もだろ?」
「ああ」
「それならどうして俺は認めて貰えたのですか?」
「それはな、ソフィアやソニックから話を聞いて、父上からも話を聞いた。実際俺は二人が一緒の所は見てないしな」
「はい」
「それでも認めようと思った理由は二つある。一つはガイ、君が狼獣人と言う事だ」
「狼獣人だから?」
「そうだ。狼獣人は愛した者は魂の番でも番でなくても一生涯愛した者を愛し抜く、違うか?」
「はい、その通りです。俺達狼は愛が重たい種族だと言われています」
「もしアイリスが先に死んだら君は迷わず後を追うだろう」
「はい、勿論です。アイリスのいない世界に興味もない」
「それを迷わず言える君だからアイリスを任せられると思った。アイリスを捨てる事も無ければアイリス以外を愛する事もない。アイリスを愛し抜く」
「はい、当たり前です」
「それならアイリスが不幸になる事はない。そして二つ目は、兄上に許しを得ようとした事だ」
「え?」
「兄上の墓の前で迷わず兄上に許しを乞い頭を下げ続けた、違うのか?」
「頭は下げましたが下げ続けたかは分かりません」
「ソフィアから聞いた。君は頭を下げ続け、アイリスが声をかけても頭を上げなかった。兄上は本当にアイリスを可愛がりとても大事にしていた。兄であり父であるかの様に、目に入れても痛くない程に愛しいつも護っていた。俺もアイリスは愛しい妹だ、可愛がり大事にしている。それでも兄上以上にアイリスを愛した人はいない」
「はい」
「俺は父上には悪いけど、父上よりも兄上に許しを乞うべきだと思っている。君は兄上にアイリスを預けて欲しいと言った。アイリスを愛し護るのは当たり前だ、そんな事を誓ってどうする。俺は預けて欲しいと兄上に言った君を信じようと思った」
「あの、意味が良く、すみません」
「なら君は大事な宝物を人に預けれるか?」
「信頼している者なら。それでも自分で持ち歩いた方が安心ですが」
「そうだろ?兄上はアイリスを嫁にやる気なんて無かった。自分で一生護り側に置き自分の手でアイリスを幸せにするつもりだった」
「はい」
「兄上は俺より強い奴か認めた奴しかアイリスはやれんと言っていたんだ。兄上より強い奴なんかいない、それに兄上が認める奴なんかそもそも現れる事もない。なぜだか分かるか?」
「いえ」
「あの兄上が認める訳がないからだ」
「え?」
「兄上は始めからアイリスの好きな奴を認める気は無かった。そしてアイリスも兄上の反対を押しきってまで結婚なんかしない。君が預けてくれと言った気持ちは分からないけど、アイリスを愛するから、護るからではなく、兄上の宝物を兄上と同様に、それ以上に大事に大切にするから、自分を信頼して託して欲しいと聞こえたんだ。そして誰が何を言っても許しが貰えるまで頭を下げ続けた。その行為で俺はガイを認めようと思った」
「あの時は正直あまり覚えてなくて。俺は兄上がどれだけアイリスを愛し大事にし可愛がっていたか、兄上がいつも側にいて護ってきたか。 そして俺は兄上の様に、兄上以上にアイリスを幸せにすると誓いました。
俺は騎士です。騎士として兄上の強さも騎士としての凄さも聞きました。まだまだ俺は兄上に遠く及ばないほど赤子の騎士です。それでも必ず兄上の様に強く立派な騎士になると誓う為に、赤子騎士に兄上の愛しい大事なアイリスを下さいと言う権利はありません。ですが俺ももうアイリスを手放す事は出来ません。赤子騎士に言える許された言葉は預けて下さいしかありません。そして頭を下げ続けたと言いますが、許しを貰えるまで俺は待っていただけですので」
残った私達は隣の居間に移りソファーに座る。
「ガイ、ソニックがすまなかったな」
「兄上大丈夫です」
「そうか?」
「はい」
「ガイ、夕食足りた?」
「もうお腹いっぱいだよ」
「それなら良いけど」
私は隣に座るガイに話しかけた。
「父上、酒でも飲みます?」
「そうだな、そうしよう」
「ガイは飲める?」
「あ、はい」
「何でも?」
「一応」
ロナルドがお酒とおつまみを持って入って来た。
「アイリスの結婚に」
「アイリスの結婚に」
お父様とお兄様がグラスを少し上に上げ、ガイも同じ様にグラスを上に上げた。
皆それぞれ飲み出し、私はハーブティーを飲む。
「でも、アイリスの相手がまさか獣人とはな」
「お兄様」
「ガイだって知ってるんだろ?」
「そうだけど。ガイ、ごめんね?」
「気にしてないぞ?獣人、人族は名称だしな。それにクロード兄上の事も知ってるしな」
「そうだけど」
「アイリス、リーナの時凄かっただろ?」
「ラシュ殿?ですか?」
「そうそう、リーナの相手が獣人でそれも番だった。あの時はお前荒れてたよな」
「お兄様は少し黙ってて」
「それでもリーナの相手をいつの間にか許してたよな」
「あれは、ラシュ様がクロードお兄様に敬意をはらってくれたの。お兄様を騎士として認めてくれてたの、だからよ」
「そうか」
「うん」
「兄上は俺が尊敬する騎士だからな」
「うん」
「兄上は立派な騎士だ」
「うん」
「俺やアイリスの面倒を見てくれた。俺は年が近かったから素直に甘えられなかったけど、それでも兄上には全てお見透しだった」
「うん」
「あの、兄上」
「ガイ何だ?」
「兄上は俺達獣人を、その、」
「憎んでないのか、か?」
「はい」
「そりゃあ憎んでるさ。でも俺も王宮で働く文官だ、獣人が憎いからと態度に出す訳にはいかない」
「はい」
「父上もそうだと思うけど、表面上は獣人を嫌ってない。だけどな、心の内では憎しみを持ってる。ガイには悪いな」
「いえ、クロード兄上を思えば当たり前です」
「だけどな、獣人だけじゃない、人族にも憎しみを持ってる。父上もだろ?」
「ああ」
「それならどうして俺は認めて貰えたのですか?」
「それはな、ソフィアやソニックから話を聞いて、父上からも話を聞いた。実際俺は二人が一緒の所は見てないしな」
「はい」
「それでも認めようと思った理由は二つある。一つはガイ、君が狼獣人と言う事だ」
「狼獣人だから?」
「そうだ。狼獣人は愛した者は魂の番でも番でなくても一生涯愛した者を愛し抜く、違うか?」
「はい、その通りです。俺達狼は愛が重たい種族だと言われています」
「もしアイリスが先に死んだら君は迷わず後を追うだろう」
「はい、勿論です。アイリスのいない世界に興味もない」
「それを迷わず言える君だからアイリスを任せられると思った。アイリスを捨てる事も無ければアイリス以外を愛する事もない。アイリスを愛し抜く」
「はい、当たり前です」
「それならアイリスが不幸になる事はない。そして二つ目は、兄上に許しを得ようとした事だ」
「え?」
「兄上の墓の前で迷わず兄上に許しを乞い頭を下げ続けた、違うのか?」
「頭は下げましたが下げ続けたかは分かりません」
「ソフィアから聞いた。君は頭を下げ続け、アイリスが声をかけても頭を上げなかった。兄上は本当にアイリスを可愛がりとても大事にしていた。兄であり父であるかの様に、目に入れても痛くない程に愛しいつも護っていた。俺もアイリスは愛しい妹だ、可愛がり大事にしている。それでも兄上以上にアイリスを愛した人はいない」
「はい」
「俺は父上には悪いけど、父上よりも兄上に許しを乞うべきだと思っている。君は兄上にアイリスを預けて欲しいと言った。アイリスを愛し護るのは当たり前だ、そんな事を誓ってどうする。俺は預けて欲しいと兄上に言った君を信じようと思った」
「あの、意味が良く、すみません」
「なら君は大事な宝物を人に預けれるか?」
「信頼している者なら。それでも自分で持ち歩いた方が安心ですが」
「そうだろ?兄上はアイリスを嫁にやる気なんて無かった。自分で一生護り側に置き自分の手でアイリスを幸せにするつもりだった」
「はい」
「兄上は俺より強い奴か認めた奴しかアイリスはやれんと言っていたんだ。兄上より強い奴なんかいない、それに兄上が認める奴なんかそもそも現れる事もない。なぜだか分かるか?」
「いえ」
「あの兄上が認める訳がないからだ」
「え?」
「兄上は始めからアイリスの好きな奴を認める気は無かった。そしてアイリスも兄上の反対を押しきってまで結婚なんかしない。君が預けてくれと言った気持ちは分からないけど、アイリスを愛するから、護るからではなく、兄上の宝物を兄上と同様に、それ以上に大事に大切にするから、自分を信頼して託して欲しいと聞こえたんだ。そして誰が何を言っても許しが貰えるまで頭を下げ続けた。その行為で俺はガイを認めようと思った」
「あの時は正直あまり覚えてなくて。俺は兄上がどれだけアイリスを愛し大事にし可愛がっていたか、兄上がいつも側にいて護ってきたか。 そして俺は兄上の様に、兄上以上にアイリスを幸せにすると誓いました。
俺は騎士です。騎士として兄上の強さも騎士としての凄さも聞きました。まだまだ俺は兄上に遠く及ばないほど赤子の騎士です。それでも必ず兄上の様に強く立派な騎士になると誓う為に、赤子騎士に兄上の愛しい大事なアイリスを下さいと言う権利はありません。ですが俺ももうアイリスを手放す事は出来ません。赤子騎士に言える許された言葉は預けて下さいしかありません。そして頭を下げ続けたと言いますが、許しを貰えるまで俺は待っていただけですので」
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