ただずっと側にいてほしかった

アズやっこ

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前編


「行ってくる。必ず帰ってくるから心配するな」


そう言って邸を出て行った貴方。

10年たった今も昨日のようにまだ覚えている。


8歳年上の伯爵令息のコール様と伯爵令嬢だった私は私が幼い頃に決められた婚約者だった。

幼い頃は婚約者よりもお兄様。婚約者という雰囲気は全くなかった。コール様はいつまでも私を妹のように扱った。

騎士になったコール様は令嬢にとてももてた。どんどん格好良くなるコール様に言い寄る令嬢は大勢いた。


「コール兄様は私より令嬢のお姉様達の方が良いんでしょ」


10歳の私はコール様と同じように大人になっている令嬢のお姉様達に嫉妬して拗ねる事しか出来ない。


「キャロル、俺の婚約者はお前だろ」

「でも、」

「ゆっくり大人になれば良い。俺はキャロルがゆっくり大人になるのを側で見てるから」


優しい顔で私の頭を撫でた。


「俺はキャロルが大人になるまで待ってるからな。それまでに騎士として強くなる。だから心配するな」

「…うん、分かった…」


8歳差、傍から見ても兄妹にしか見えない。それが私は嫌だった。

何処へ行っても、手を繋いでも、今もそう、ベンチに座っても兄と妹。恋人のように見えない。

だって、私はコール様が大好きなんだから。


15歳になりデビュタントに参加する為に私もお父様と一緒に王宮へ行った。社交界デビュー、大人の仲間入りがようやく出来た、そう思った。

ファーストダンスは婚約者と踊る、それは令嬢達の憧れだった。私もその一人。

それでもコール様は当日王宮警備で舞踏会には参加していなかった。会場の外で警備しているコール様を見つけ私は近くまで行った。

令嬢と仲良く話すコール様。


「コール様、今日の騎士服も素敵です」

「ありがとうございます」

「ダンスを一曲とお誘いしたい所ですがお仕事中なら今回はご遠慮しますわね」

「ええそうして頂けると」


笑顔で話すコール様の腕に私は腕を絡ませた。


「キャロル」


驚いた顔を見せたコール様。


「私の婚約者です」

「ふふっ、可愛らしいお嬢さんだこと。心配しなくても大丈夫ですわ。ただ少しお相手をして頂いただけですのよ」


私は女性を睨みつけた。


「ふふっ、まぁ可愛らしい」

「私の婚約者が申し訳ありません」


コール様は私の腕を外し頭を下げた。


「では今度ダンスを踊って下さいね」


そう言って女性は去って行った。


「キャロル」

「だって…、とても仲が良さそうに見えたの」

「邪険には出来ないだろ。それより一人でここまで来たのか?」

「ファーストダンスを一緒に踊りたかったの」

「今日は仕事だから無理だって言ってあっただろ?」

「でもファーストダンスよ?婚約者と踊るものでしょ?」

「それは悪いと思っているけど貴族が集まる舞踏会だ。何も起こらないように警備するのが俺の仕事だ。分かるな?」

「分かってるわよ。でも、………ごめんなさい…」

「キャロル、他の令息と話すなよ」

「知らない」

「キャロル」

「分かってる」

「誰とも踊るなよ」

「兄様が踊ってくれないなら誰かと踊るしかないでしょ」


私は会場に戻ろうとした。突然手を引っ張られコール様に抱きしめられた。


「兄様じゃないだろ」

「……コール様」

「俺以外と絶対に踊るなよ」

「分かってる」

「今度の舞踏会は休みを貰うからその時ファーストダンスを踊ろうな」

「うん」

「今日は伯爵の側に居てくれ」

「分かった」

「キャロル綺麗だ」

「本当?」

「ああ。出来れば誰にも見せたくない」

「コール様の騎士服も格好良い」


コール様はギュッと抱きしめて私を離した。


「伯爵の所まで送るよ」


コール様は私をエスコートしてお父様の所まで送りまた警備に向かった。

私は後ろ姿を見えなくなるまで見つめた。



16歳になり婚姻できる年になった。


「コール様、いつ結婚するの?」

「もう少し大人になってからな」

「もう私は大人よ。月のものもあるし子供だって産めるもの」

「分かった分かった」


コール様は私の頭を撫でた。


「子供扱いしないで」

「子供扱いなんてしてないだろ」

「してるじゃない」

「俺はキャロル以外と結婚するつもりはない。だからこそキャロルが18歳くらいになったらと思っていた。それまで婚約者として過ごしたいと思っていたんだ」

「私は早く結婚したい。だって…、コール様はもてるから……」

「それを言ったらキャロルもだろ?」

「私はもてないもの」

「それは、まぁ、あれだ、俺が…、他の男を牽制してるからな」


コール様は私を抱きしめた。


「俺だって今すぐにでも俺のものにしたい。キャロルはどんどん綺麗になるしな。

それでもキャロルの世界はこれから広がる。社交にしてもそうだ。俺は8歳も年上だからな」


私はコール様を見上げた。


「キャロルに俺は選んでほしいんだ。他の男よりも俺が良いと、こんな年上だけどそれでも俺が良いと選んでほしいんだ。

キャロルは自分が相応しくないと思っているかもしれないけど、俺の方が相応しくないと思う。キャロルと同じ年頃の男と比べたら俺はおじさんだろ?

俺の方が心配なんだよ…」

「私はコール様以外を好きにならない。私はずっとコール様だけが大好きだもの。それに私の夢はコール様のお嫁さん。それは婚約した時からずっと変わらないわ。それに他の令息を格好良いと思った事もないわ。

だって私の理想の男性はコール様だもの。格好良いと思うのもコール様だけなの」

「キャロル……」


私達は抱きしめあった。


「俺と結婚してくれるか?」

「私と今すぐ結婚して」


同時にお互いプロポーズをした。


「ああ、キャロルは?」

「コール様と結婚したい」


それから半年後、私達は婚姻式を挙げた。



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