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15 隣国の王女

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お父様とお兄様が外交へ行き、家には私とお母様。私も10歳になった。

今回お父様とお兄様が行った国、大国の隣国とは反対側の隣国ルータン国。定期的に外交をしているの。

前の時、お兄様はルータン国の王女と婚約し婚姻した。

でもお兄様の婚姻は国の為じゃないの。ルータン国の王女様がお兄様に一目惚れしたから。

それにもし国の為ならフランキーが婚約して婚姻してたわ。フレディはもう私と婚約していたから。

でも、もし、その未来が変わったら、それは嫌だな…。

私はお義姉様の事が好きだったから。


帰ってくる予定の日を過ぎてもお父様とお兄様は帰って来なかった。

それから1ヶ月後、疲れた顔をして帰って来たお父様とお兄様。


「お父様、お兄様、遅かったから心配したのよ」


お父様は私の頭を撫でてお母様を抱きしめた。


「お兄様の疲れた顔を初めて見るわ。そんなに今回の外交大変だったの?」

「グレースは心配するな。何もなかった、な?」


お兄様は私の頭を撫でて私を抱きしめた。


「あぁ、グレースの側は落ち着くよ」

「お兄様大丈夫?」


こんなに疲れ切ってるお兄様の姿を初めて見た。前の時も私には見せない姿だったから。お兄様はいつも私が心配するような姿は見せない。

そんなお兄様がこれ程疲れているなんて、絶対に何かあったのよ。


お兄様は早々に私室に戻り書斎でお母様と一緒にお父様の話を聞いた。

お父様の話ではルータン国の第一王子の婚約者に私をと打診があった。お兄様は第一王子の素行が気に入らず『認めない』とその打診を断った。

第一王子は傍若無人な態度をとっていたらしい。でも第一王子は確か私の2歳年上だから12歳。

でもいつもフランキーを見ているお兄様からしたら…、分からなくもないわ。

王族は子供でも子供ではいられない。他国の使者が来ている時なら尚の事。勝手な振る舞いは国の品位を下げる事に繋がる。

子供だからでは済まされない。

厳しく言う人がいなければ傍若無人な態度は大人になっても傍若無人な態度をとる。

お兄様が私をそんな人に嫁がせたくないのは分かるけど、相手は王子よ?

これで争いになったら…

私は幼い頃からこういう事もあると言われてきた。その為の勉強もしている。


「話し合いでフランキーと王女を婚約させるようにけしかけてきたが。あの様子だと婚約になるだろうな。王女はフランキーより2歳年上だがフランキーも理解するだろう」


お父様が言うように国の為の婚約に年上だの年下だの年は関係ない。それに2歳差なら普通だわ。

お父様が疲れた顔をしていたのはお兄様の頑なな態度も入っていたのね。お兄様は隣国の伯父様に似ている。そしてその伯父様を説得するのにお父様は何年もかかったらしい。

婚約者でもお母様と会ったのは婚約式の1回だけ、それも伯父様が手を回していただのいないだの…。

そうよね?隣国とはいえ会いに行けない訳じゃないのに1回だけしか会えなかったなんてそんなの普通はないもの。


でも、大好きなお義姉様がフランキーの婚約者になるのね…。

この国の未来が変わればその影響は必ず出る、そう思ったわ。フレディの未来が変わった時に抱いたあのなんとも言えない不安。

やっぱり皆が好きな人と幸せになる、平和な国になる、そんな事無理だったの?


でもフランキーもお義姉様を好きになるわ。だってお義姉様はとても気さくな人だもの。

あれはお兄様の婚約者になって初めて会った時…

『私の弟達は馬鹿と甘えん坊なの。私がお父様の跡を継げたら良かったんだけど女はお払い箱なの。なら好きな人と婚姻したいじゃない?だからロナルド様に相手にされなくても恋文を送り続けたわ。

この婚約は私の粘り勝ちで勝ち得たものよ』

太陽のような笑顔が印象的だった。

『グレースはなんて可愛いの。私、ずっと妹が欲しかったの。あの可愛くない弟達を毎日見てきたのよ?もう本当に嫌だったの。

でも、こんな可愛い妹が出来て私はなんて幸せなの』

そう言って初対面なのに私を抱きしめた。お兄様も私に溺愛だけどお義姉様も私に溺愛だった。

初めはお兄様も根負けした、というよりは誰かと婚約するなら自分の手札を増やす、そっちの方だった。

でも共通の趣味?が私を溺愛する事。

自然と仲良くなってとっても仲が良い夫婦になったわ。

だからお兄様の裏切りにも手を貸した。お義姉様もフレディを許す気がなかったから。


「フランキーには明日伝える事になった。

グレース、お前は暫くフランキーと会うな、いいな」

「はいお父様」


そうよね。フランキーの婚約者が決まる今、私が側にいるのは良くないわ。

今は子供だから二人でお茶をしていても仲が良い、それで済んでる。それにいつも4人でお茶をしていたのは皆知ってる。兄弟、いとこが仲が良いのはとても良い事だもの。

兄弟、いとこが王という一つの席を争う、違う国でも良く聞く話だわ。

この国や隣国の大国は第一王子が王太子になり国王になる。でもルータン国は王位継承権を持つ者から選ばれる。国王の息子達がなるか国王の兄弟達の息子達がなるか、それは今現在決まっていない。

だから歳が近い私を第一王子の婚約者にしたかった。国王自身も第三王子。婚約者、今の王妃が力のある貴族だった。王太子を選ぶ際、力や肩書きが大きく左右する。それを一番理解しているからこそ。

国王からすればどんな息子でも自分の子に跡を譲りたいと思うもの。



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