44 / 55
44 封印した心
しおりを挟む『グレースどこいくのー、グレースをつれていかないでー』
(こわいよフランキー、こわいよ…)
『グレース様、殿下の事を絶対に大好きと言ってはいけません。そのお気持ちは隠して下さい。そしたら今まで通り過ごせますから』
『わかった』
(でもわたしはフランキーがだいすきなの。どうしてかくさないといけないの?どうしてだいすきっていったらいけないの?どうして?)
私の声ではないもう一つの声。
『きょうからいっしょにべんきょうしようねグレース』
『いっしょにがんばりましょフランキー』
(フランキーといっしょ?ずっといっしょ?よかった)
『べんきょうおわったからあそぼグレース』
『うんあそびましょフランキー』
(フランキーとてをつなぐのだいすき。だってフランキーのて、とってもあんしんするの。それにフランキーとてをつなぐととってもうれしいきもちになるの)
『グレースだいすきだよ』
『フランキーどうしたの?』
『ううん、なんでもない』
(わたしもフランキーだいすきよ。でもいったらだめなの。かくさないといけないの。そしたらね、フランキーといっしょにすごせるの。でもいったらもうすごせないの。だからここだけ。
フランキーだいすき、だいすき、だいすきフランキー)
『このくらい出来なくてどうするんですか。教えたことは一回で覚えなさい、いいですね』
『すみません先生』
(どうしてこんな事を私がしないといけないの?助けて、フランキー…)
『グレースまた怒られたのか?泣くな』
『うん』
(フランキーが私の顔に触れると私は胸がいつもより大きな音がするの。ずっと触っててほしいって思うの。繋いでくれる手に安心して、でも離さないでって思うの。だから私は頑張れる。フランキー大好きよ)
『グレースお前はフレディと婚約する事になった。でももしグレースが嫌だと思うなら嫌だと言ってもいいんだぞ』
『分かりましたお父様。そのお話お受けします』
(嫌よ、フランキーと約束したの。約束の口付けもしたの。結婚しようって、死ぬまで一緒にいようねって、ずっと離れないって。だから嫌よ。兄様とは婚約したくない!)
『グレース無理をしていないか?』
『大丈夫よ』
(兄様と手を繋いでも何も思わない。嬉しいとも離したくないとも。お兄様と手を繋ぐ時と同じ気持ち。ただ手を繋いでいるだけ。フランキーと手を繋ぎたい…。フランキー…、どうしてそこにいるのに、手を伸ばしたら手が届くのに…、もう繋げない事がこんなにも悲しい…)
『グレース、フランキーの婚約が決まった。公爵令嬢のロザンヌ嬢だ』
『そうなの、良かったわ』
(私がフランキーの婚約者になりたかった。私が婚約者に、なりたかった…)
『ファーストダンス踊ろうか』
『ええ、フレディ』
(ファーストダンスはフランキーと踊りたかった…。叶わぬ願いだとしても踊りたかった…)
『あの二人もこうして見るとお似合いだな』
『そうね』
(どうして私以外の人とダンスを踊るの?どうして私以外の人に触れるの?どうして、私以外の人の手を…握るの……?
フランキー、ロザンヌ様の手じゃなくて私の手を、握ってよ。昔みたいに、また握ってよ……)
『グレースが婚姻か、寂しくなるな…。フレディを支えるんだぞ。そして国を民を共に護ってくれ』
『はいお父様』
(……お父様、私兄様と婚姻したくないの。今更こんな我儘許されないわ。それにフランキーを愛する気持ちは許されないこと…。それでもフランキーを愛しているの。ごめんなさい、ごめんなさい、こんな娘でごめんなさい…)
『……誓いますか』
『はい誓います』
(誓えない、誓いたくない。ねぇフランキー、そこで見てないで私を攫ってよ。攫って私をここから連れ出して。そして私と一緒に逃げて)
『こちらでお待ち下さい。殿下がお見えになります』
『分かったわ、ありがとう』
(これを済ませたら、もう引き返せない。今ならまだ逃げ出せる?今ならまだ…)
『グレース待たせたか?』
『大丈夫よ』
『優しくする』
(嫌、口付けをされても、どこを触れられても、兄様の手が気持ち悪い。私に触れていいのは兄様じゃない。やめて、やめて、私に触れないで!
嫌よ、嫌ーーー。
フランキー、フランキー、フランキー!
たす、けて………
もう、私は、フランキーの側には、いられない…。これは貴方を愛した私の罰…)
『痛かったか?』
『少しだけ…』
『愛してるグレース』
『愛してるわフレディ』
(………………………………………)
女性が泣いている。ずっとずっと泣いている。
(愛してる、愛してるわフランキー、貴方を愛してる…)
降り続ける雨…
いつまでも止むことのない雨…
ここはいっぱいになった。
窒息しそうなくらい苦しい…
もがけばもがくほど体の自由は奪われていく…
女性の涙で溜まったこの中はきっと封印した心
秘し隠した気持ち
そして飲み込んだ言葉
(愛してる、フランキー愛してる…)
何度も呟く女性
ずっと泣いてる女性
それを見ている私
お兄様は前の時、幼い私を勝利の女神と言った。お兄様にとって私が妹として産まれてきた事が幸運だと。
勝利の女神、幸運をもたらす…
この女性が泣いているから悲運になった?
それにこの女性がここにいるから私は人形になった?
そしてこの女性はあの幼い子供が成長した人?
幼い子供の大好きではなく本物の大好きだったの?
これは私の中に眠るもう一人の私の秘恋…
80
あなたにおすすめの小説
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
【完結】婚約破棄されて処刑されたら時が戻りました!?~4度目の人生を生きる悪役令嬢は今度こそ幸せになりたい~
Rohdea
恋愛
愛する婚約者の心を奪った令嬢が許せなくて、嫌がらせを行っていた侯爵令嬢のフィオーラ。
その行いがバレてしまい、婚約者の王太子、レインヴァルトに婚約を破棄されてしまう。
そして、その後フィオーラは処刑され短い生涯に幕を閉じた──
──はずだった。
目を覚ますと何故か1年前に時が戻っていた!
しかし、再びフィオーラは処刑されてしまい、さらに再び時が戻るも最期はやっぱり死を迎えてしまう。
そんな悪夢のような1年間のループを繰り返していたフィオーラの4度目の人生の始まりはそれまでと違っていた。
もしかしたら、今度こそ幸せになれる人生が送れるのでは?
その手始めとして、まず殿下に婚約解消を持ちかける事にしたのだがーー……
4度目の人生を生きるフィオーラは、今度こそ幸せを掴めるのか。
そして時戻りに隠された秘密とは……
【完結】妹ばかり愛され追い出された姉ですが、無口な夫と暮らす日々が幸せすぎます
コトミ
恋愛
セラフィナは、実の親と、妹によって、家から追い出されることとなった。セラフィナがまだ幼い頃、両親は病弱なカタリナのため設備環境が良い王都に移り住んだ。姉のセラフィナは元々両親とともに住んでいた田舎に使用人のマーサの二人きりで暮らすこととなった。お金のない子爵家な上にカタリナのためお金を稼がなくてはならないため、子供二人を王都で暮らすには無理があるとセラフィナだけ残されたのだ。そしてセラフィナが19歳の時、3人が家へ戻ってきた。その理由はカタリナの婚約が上手くいかず王宮にいずらくなったためだ。やっと家族で暮らせると心待ちにしていたセラフィナは帰宅した父に思いがけないことを告げられる。
「お前はジェラール・モンフォール伯爵と結婚することになった。すぐに荷物をまとめるんだ。一週間後には結婚式だ」
困惑するセラフィナに対して、冷酷にも時間は進み続け、結婚生活が始まる。
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
【完結】私を裏切った最愛の婚約者の幸せを願って身を引く事にしました。
Rohdea
恋愛
和平の為に、長年争いを繰り返していた国の王子と愛のない政略結婚する事になった王女シャロン。
休戦中とはいえ、かつて敵国同士だった王子と王女。
てっきり酷い扱いを受けるとばかり思っていたのに婚約者となった王子、エミリオは予想とは違いシャロンを温かく迎えてくれた。
互いを大切に想いどんどん仲を深めていく二人。
仲睦まじい二人の様子に誰もがこのまま、平和が訪れると信じていた。
しかし、そんなシャロンに待っていたのは祖国の裏切りと、愛する婚約者、エミリオの裏切りだった───
※初投稿作『私を裏切った前世の婚約者と再会しました。』
の、主人公達の前世の物語となります。
こちらの話の中で語られていた二人の前世を掘り下げた話となります。
❋注意❋ 二人の迎える結末に変更はありません。ご了承ください。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる