私は旦那様にとって…

アズやっこ

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馬車が侯爵家へ着き、旦那様が先に降り私に手を差し伸べた。私は旦那様の手を借り馬車を降りた。

旦那様は私の手をそのまま旦那様の腕に絡ませて侯爵家の中へ入って行く。


旦那様と一緒に侯爵様と奥様にご挨拶をし、壁近くへ場所を移した。

給仕から飲み物を受け取る旦那様。私は旦那様からグラスをもらい、旦那様が一口飲んでから私も一口飲んだ。

以前違う貴族の夜会に行った時、私には度数の高いお酒を飲んだ事があり、それ以来旦那様が飲んでから飲むようにしている。旦那様が一口飲んで何も言わなければ私が飲めるお酒って事なの。


「ローガンそんな隅にいないでこっちへ来いよ」


旦那様の学友が声をかけてきた。


「いや、今日は妻の側にいたいんだ」

「本当にお前達は夫婦仲が良いな」

「俺の愛する妻だ」

「はいはい、邪魔はしないよ」


旦那様の学友は離れて行った。


「今日は俺の側から離れるな、いいな」

「はい、ローガン様」


今日は?今日もでしょ?私が邸から外に出られるのは夜会だけ。その夜会でも旦那様の側から離れる事は許されない。


「ローガン君」

「侯爵」

「君の所ももうそろそろ子が出来てもいいんじゃないか?結婚して何年だ」

「結婚して5年です」

「もう新婚じゃないんだ、子が出来ないなら違う選択もあると思うが」

「心配ありがとうございます。ですが子は授かりものですので。今はまだ二人で過ごせという事かと」

「だがこう言っては何だが、もう君達は若くないんだ。もうそろそろ真剣に考えた方がいい」


侯爵様は私をチラチラと見ます。


「助言ありがとうございます。そうですね、子が授かるように考えます」


侯爵様が違う招待客の方へ行った。


「チッ、余計な世話を」

「ローガン様、誰が聞いているか分かりませんから」

「分かってる、お前は黙ってろ」

「すみません」


旦那様はお怒りのようね。ここは黙っているのが正解だわ。


結婚して5年、私と旦那様には子がいない。正確には子が出来ない。これから先もいくら待っても子は出来ない。

あれは結婚して半年、いつもの様に閨事の旦那様は激しく私を揺さぶる。その時私はお腹の違和感を覚え、


「ローガン様、ちょっと待って下さい。何かお腹が変です。お願いです!ちょっと待って下さい!」


私の訴えは虚しく無視された。どんどん痛くなるお腹の痛み、旦那様の激しさは止む事はなかった。

ようやく解放され私は気を失った。目が覚めたのは明け方近く。ネグリジェが濡れている事に気づき、私は旦那様の子種だと思いお風呂へ行こうと起き上がった時、ネグリジェが血で染まっていた。


「ローガン様!ローガン様!起きて下さい!」

「何だ、まだ朝じゃないだろ…」

「血が…」


月のものはまだのはず。


旦那様は医師を呼び私は診察された。医師の顔が険しい顔をしていたから私は不安になり、


「先生…あの…」

「ご当主様にも大事な話なので」


旦那様が部屋に入って来て、医師は告げた。


「奥様は妊娠していました。きっと奥様も気づいていないと思います」

「子がいるのか」

「……子は、天に召されました」

「どういう事だ!」

「天に召された子はまだ宿る時ではなかった。だから神が迎えに来たのでしょう」

「ならまた宿るんだな」

「その時がくれば」


それから一年後私はまた妊娠し、またその子も天に召された。


「残念ですがまた天に召されました」

「どうしてまた!今度こそは!今度こそは……、どうしてだ……、どうしてなんだ……」

「とても言い難いのですが、……次の子が宿る確率はゼロに近いとお思い下さい」

「それは……もう子は諦めろと、諦めろと言うのか!」

「神のみぞ知るです。子は神からの授かりものです。神の気まぐれで子が宿るかもしれませんが、我々が手出しできる事はないんです。どうかお分かり下さい」

「そんな……」


旦那様は膝から崩れ落ち、私は静かに涙を流した。

それから旦那様は何かをぶつけるように私を抱き続ける。それは今でも…。

子が出来ない私の中に子種を出しても意味はないのに、毎日何度も何度も子種を出す。

旦那様には子を作る事が出来るんです。私でなければ今頃…、旦那様は子を抱いていたのかもしれないのに…。



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