2 / 25
2
馬車が侯爵家へ着き、旦那様が先に降り私に手を差し伸べた。私は旦那様の手を借り馬車を降りた。
旦那様は私の手をそのまま旦那様の腕に絡ませて侯爵家の中へ入って行く。
旦那様と一緒に侯爵様と奥様にご挨拶をし、壁近くへ場所を移した。
給仕から飲み物を受け取る旦那様。私は旦那様からグラスをもらい、旦那様が一口飲んでから私も一口飲んだ。
以前違う貴族の夜会に行った時、私には度数の高いお酒を飲んだ事があり、それ以来旦那様が飲んでから飲むようにしている。旦那様が一口飲んで何も言わなければ私が飲めるお酒って事なの。
「ローガンそんな隅にいないでこっちへ来いよ」
旦那様の学友が声をかけてきた。
「いや、今日は妻の側にいたいんだ」
「本当にお前達は夫婦仲が良いな」
「俺の愛する妻だ」
「はいはい、邪魔はしないよ」
旦那様の学友は離れて行った。
「今日は俺の側から離れるな、いいな」
「はい、ローガン様」
今日は?今日もでしょ?私が邸から外に出られるのは夜会だけ。その夜会でも旦那様の側から離れる事は許されない。
「ローガン君」
「侯爵」
「君の所ももうそろそろ子が出来てもいいんじゃないか?結婚して何年だ」
「結婚して5年です」
「もう新婚じゃないんだ、子が出来ないなら違う選択もあると思うが」
「心配ありがとうございます。ですが子は授かりものですので。今はまだ二人で過ごせという事かと」
「だがこう言っては何だが、もう君達は若くないんだ。もうそろそろ真剣に考えた方がいい」
侯爵様は私をチラチラと見ます。
「助言ありがとうございます。そうですね、子が授かるように考えます」
侯爵様が違う招待客の方へ行った。
「チッ、余計な世話を」
「ローガン様、誰が聞いているか分かりませんから」
「分かってる、お前は黙ってろ」
「すみません」
旦那様はお怒りのようね。ここは黙っているのが正解だわ。
結婚して5年、私と旦那様には子がいない。正確には子が出来ない。これから先もいくら待っても子は出来ない。
あれは結婚して半年、いつもの様に閨事の旦那様は激しく私を揺さぶる。その時私はお腹の違和感を覚え、
「ローガン様、ちょっと待って下さい。何かお腹が変です。お願いです!ちょっと待って下さい!」
私の訴えは虚しく無視された。どんどん痛くなるお腹の痛み、旦那様の激しさは止む事はなかった。
ようやく解放され私は気を失った。目が覚めたのは明け方近く。ネグリジェが濡れている事に気づき、私は旦那様の子種だと思いお風呂へ行こうと起き上がった時、ネグリジェが血で染まっていた。
「ローガン様!ローガン様!起きて下さい!」
「何だ、まだ朝じゃないだろ…」
「血が…」
月のものはまだのはず。
旦那様は医師を呼び私は診察された。医師の顔が険しい顔をしていたから私は不安になり、
「先生…あの…」
「ご当主様にも大事な話なので」
旦那様が部屋に入って来て、医師は告げた。
「奥様は妊娠していました。きっと奥様も気づいていないと思います」
「子がいるのか」
「……子は、天に召されました」
「どういう事だ!」
「天に召された子はまだ宿る時ではなかった。だから神が迎えに来たのでしょう」
「ならまた宿るんだな」
「その時がくれば」
それから一年後私はまた妊娠し、またその子も天に召された。
「残念ですがまた天に召されました」
「どうしてまた!今度こそは!今度こそは……、どうしてだ……、どうしてなんだ……」
「とても言い難いのですが、……次の子が宿る確率はゼロに近いとお思い下さい」
「それは……もう子は諦めろと、諦めろと言うのか!」
「神のみぞ知るです。子は神からの授かりものです。神の気まぐれで子が宿るかもしれませんが、我々が手出しできる事はないんです。どうかお分かり下さい」
「そんな……」
旦那様は膝から崩れ落ち、私は静かに涙を流した。
それから旦那様は何かをぶつけるように私を抱き続ける。それは今でも…。
子が出来ない私の中に子種を出しても意味はないのに、毎日何度も何度も子種を出す。
旦那様には子を作る事が出来るんです。私でなければ今頃…、旦那様は子を抱いていたのかもしれないのに…。
あなたにおすすめの小説
あのひとのいちばん大切なひと
キムラましゅろう
恋愛
あのひとはわたしの大切なひと。
でも、あのひとにはわたしではない大切なひとがいる。
それでもいい。
あのひとの側にいられるなら。
あのひとの役にたてるなら。
でもそれも、もうすぐおしまい。
恋人を失ったアベルのために奮闘したリタ。
その恋人がアベルの元へ戻ると知り、リタは離れる決意をする。
一話完結の読み切りです。
読み切りゆえにいつも以上にご都合主義です。
誤字脱字ごめんなさい!最初に謝っておきます。
小説家になろうさんにも時差投稿します。
※表紙はあさぎかな先生(@yatusiro1)にコラージュアートを作成していただいたものです。
(*´˘`*)シアワセデスッ
さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
あなたの破滅のはじまり
nanahi
恋愛
家同士の契約で結婚した私。夫は男爵令嬢を愛人にし、私の事は放ったらかし。でも我慢も今日まで。あなたとの婚姻契約は今日で終わるのですから。
え?離縁をやめる?今更何を慌てているのです?契約条件に目を通していなかったんですか?
あなたを待っているのは破滅ですよ。
※Ep.2 追加しました。
マルグリッタの魔女の血を色濃く受け継ぐ娘ヴィヴィアン。そんなヴィヴィアンの元に隣の大陸の王ジェハスより婚姻の話が舞い込む。
子爵の五男アレクに淡い恋心を抱くも、行き違いから失恋したと思い込んでいるヴィヴィアン。アレクのことが忘れられずにいたヴィヴィアンは婚姻話を断るつもりだったが、王命により強制的に婚姻させられてしまう。
だが、ジェハス王はゴールダー家の巨万の富が目的だった。王妃として迎えられたヴィヴィアンだったが、お飾りの王妃として扱われて冷遇される。しかも、ジェハスには側妃がすでに5人もいた。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
──いいえ。わたしがあなたとの婚約を破棄したいのは、あなたに愛する人がいるからではありません。
ふまさ
恋愛
伯爵令息のパットは、婚約者であるオーレリアからの突然の別れ話に、困惑していた。
「確かにぼくには、きみの他に愛する人がいる。でもその人は平民で、ぼくはその人と結婚はできない。だから、きみと──こんな言い方は卑怯かもしれないが、きみの家にお金を援助することと引き換えに、きみはそれを受け入れたうえで、ぼくと婚約してくれたんじゃなかったのか?!」
正面に座るオーレリアは、膝のうえに置いたこぶしを強く握った。
「……あなたの言う通りです。元より貴族の結婚など、政略的なものの方が多い。そんな中、没落寸前の我がヴェッター伯爵家に援助してくれたうえ、あなたのような優しいお方が我が家に婿養子としてきてくれるなど、まるで夢のようなお話でした」
「──なら、どうして? ぼくがきみを一番に愛せないから? けれどきみは、それでもいいと言ってくれたよね?」
オーレリアは答えないどころか、顔すらあげてくれない。
けれどその場にいる、両家の親たちは、その理由を理解していた。
──そう。
何もわかっていないのは、パットだけだった。
不実なあなたに感謝を
黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。
※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。
※曖昧設定。
※一旦完結。
※性描写は匂わせ程度。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
あなたの絶望のカウントダウン
nanahi
恋愛
親同士の密約によりローラン王国の王太子に嫁いだクラウディア。
王太子は密約の内容を知らされないまま、妃のクラウディアを冷遇する。
しかも男爵令嬢ダイアナをそばに置き、面倒な公務はいつもクラウディアに押しつけていた。
ついにダイアナにそそのかされた王太子は、ある日クラウディアに離縁を突きつける。
「本当にいいのですね?」
クラウディアは暗い目で王太子に告げる。
「これからあなたの絶望のカウントダウンが始まりますわ」