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「私は貴方の性のはけ口だとずっと思ってきました。私は貴方の娼婦なんだとずっと思ってきました」
「違う!断じてそれは違う!娼婦なんて思った事はない!
ジニアが隣にいれば触れたい。触れたら抱きたい。抱いたら止まらない。愛しい妻が隣にいて触れたい抱きたいと思ったら駄目なのか?」
「ならどうしてアイビー様を、愛人を邸に連れて来たんです」
「アイビーは愛人じゃない」
「愛人じゃないなら妻にするつもりだったんですか?」
「違う。………アイビーとは…俺の子を産む為だけの契約だ。俺の子を産んだらアイビーは他国へ行く。その資金を俺が出す。
お互い愛はない。俺は俺の子が欲しい、アイビーは他国へ行く多額のお金が欲しい。俺達はお互いの対価の為に合意しただけだ」
「合意って…」
「俺の子なら俺達の子だろ?俺とジニア、俺達二人の子だろ?」
「アイビー様は子を産む道具ですか?」
「違う!いや違わないが、アイビーは医師になりたいんだ。この国では女性の医師はいない。それに目指そうと思っても貴族令嬢のアイビーには難しい。だが他国なら違う。他国には少ないが女性の医師がいる。この国では目指せないものが他国では目指せる」
「だからと言って…。子が欲しいなら孤児院の子を養子にするとか色々あったでしょ。なにも、なんの関係もないアイビー様に頼まなくても…」
「俺はジニアに妊娠中の腹の子から、そして産まれたばかりの赤子から育てさせたかった。ジニアを母にしたかった。それに孤児院に産まれたばかりの赤子が来る確率は低い。それを待つのか?それよりもアイビーに頼む方が早いと思った」
「アイビー様はまだ邸にいるんですか?」
「ああ。体の回復を待って早くて半年、遅くても一年後には他国へ行き医師の学校へ入学する」
「なら今は赤子の世話を?」
「ああ…」
「ローガン様もお手伝いして?」
「いや、メイドに任せている。俺はジニアを探し出す事に……」
「貴方の子でしょ!」
「俺達の子だ!ジニアが居なければ意味がない!母はジニアだ!」
「はぁぁ、分かりました。一度邸に戻ります」
「ジニア!」
「私はアイビー様を助ける為だけに戻ります。ローガン様とは離縁していますから」
「ジニア、俺ともう一度夫婦になってくれないか。ジニアを愛してる。俺にはジニアしかいないんだ、頼む…」
「今は考えられません。それでもいいのなら邸に戻ります」
「……分かった。戻ってきてくれるだけで俺はいい。もうジニアと離れるのは嫌だ…」
私は神父様にお礼を言い、孤児院の子達にお別れを言い、皆と別れローガン様が待つ馬車に乗り込んだ。
私が馬車に乗り込みローガン様の向かいに座ると馬車は動き出した。ローガン様は窓から外を見ていて私も反対側の窓から外を見る。
外は夕暮れ。ふっと窓に映る自分の顔が目に入った。その時窓越しにローガン様と目が合った。
私は振り返る。
「もしかしていつも見ていました?」
「ああ」
「堂々と見ればいいのに」
「ならジニアも俺を見てくれ」
私はローガン様と向き合いお互い見つめ合う。
「ふふっ、これは少し恥ずかしいですね」
「ああ」
ローガン様が優しい顔をしていた。
「どうしました?」
「いや、ジニアの笑った顔を見たのは新婚の時以来だ」
「確かにそうですね。新婚の時はお互い笑った顔を良く見ました。最近は怒った顔の方が多かったので」
「ジニアも無表情だった」
「ローガン様も無表情でした」
「俺は…、にやけない様にわざと無表情にしていただけだ」
「ローガン様、一つ聞いてもいいですか?」
「何だ」
「どうして子が出来ない私に、」
「誰が子が出来ないだと!」
「私です。医師に言われたじゃないですか」
「ゼロに近いだけでゼロじゃない!俺は残り1%にかけていた!」
「だから毎日何度も…」
「何度もすればいつか、そう思った。だがそれでもなかなか出来なかった。ジニアが、いや、だからアイビーに頼んだんだ」
「私は子が出来なくても別に気にしていません。やっぱり嘘です、気にします。私が妻でないなら、何度も思いました」
「俺の妻はジニアだけだ!」
「口さがない人から今まで護ってくれていたんですね」
「妻を護るのは夫の俺しかいないだろ」
「それを教えてくれれば良かったのに」
「ジニアが傷つく必要はない」
「だから夜会に行く日は機嫌が悪かったんですか?」
「本当なら行きたくない。だが付き合いだ、仕方がない、そう思っても行きたくないものは行きたくない。どうして他人の事を気にするのか俺には分からない」
「それが貴族の楽しみだからです」
「他人の事など放っておけばいいだろ。どうして噂話ばかりするんだ、暇なのか」
「楽しみの一つ、優越感、それが人ですよ」
「俺には分からない」
少し拗ねた顔をしたローガン様の顔を見ていたら、
「ふふっ」
「ジニアはそうやっていつも笑ってろ」
そういうローガン様も笑顔よ?
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