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「アイビーの父親の男爵当主は『娘は生意気で馬鹿な女』だと言っていた。それから『医師になりたいなどと言っている。誰か嫁に貰ってくれないか、女の幸せは結婚と出産だ。跡継ぎを産む、それが女の幸せだ。女が残っても何の役にもたたない』と言っていてな」
「酷い…」
「俺はアイビーに会った時、アイビーに全てを話した。そしたらアイビーは二つ返事で了承してくれた。対価はお金。医師になるまでにかかる費用全てを俺が支払い、アイビーは俺とジニアの子を産む。初めの1ヶ月は俺が子種をだしてそれを、その、中に指で入れた。それだと子が出来ず…、
悪い、聞きたくないな…」
「そうですね、聞きたくありません」
「すまない」
「それでも営む方法しか無かったんですよね。許す事は出来ませんが…」
「すまない…、俺は汚いな…。ジニアに触れて良い男じゃない、悪い…」
「では膝からおろして下さい」
「それは出来ない。固いベンチにジニアを座らせる事は出来ない」
「そこは頑固なんですね」
「頑固とかそういう事じゃない。男性の常識だ」
「少し偏っていますが」
「何だ?」
「いえ」
「なあジニア、俺達は何年も何をしていたんだろうな。庭の散歩すらしてこなかった。こうして話す事もしてこなかった。思いを伝える事も、言いたい事も、何もしてこなかった」
「はい」
「お互い引け目を感じて我慢していた。結婚し夫婦にはなったが夫婦では無かった。だから神は子を奪っていったのかもな。夫婦でない俺達にはまだ早いと神は怒っていたのかもな」
「それは分かりませんが、夫婦では無かったのは私も思いました。離縁した今の方が夫婦らしいと思います」
「そうだな。ジニア、今なら本当の夫婦になれる。俺と再婚してくれないか」
「それは…」
「俺はジニアを愛している。ジニア以外の女性と一生再婚するつもりもない。ジニアは俺が嫌か?嫌いか?」
「正直ローガン様と復縁するつもりはありませんでした。ですがローガン様の気持ちを知り、今まで気付かなかった事に気付き、今のローガン様と復縁するのが絶対に嫌とは言えません。好きか嫌いかと聞かれれば好きです。ローガン様の笑顔を見ると嬉しいし、ローガン様の色々な表情を見ると自然と笑みが出ます。それに今、こうしてローガン様の膝の上で座っていても幸せだなと思います。愛してるにはまだ早いかもしれませんがそれも直になるだろうとは思います。
ですが…」
「何でも言ってくれ。罵声でもいい」
「ふふっ、罵声なんて言いません。ですがアイビー様とジェイク君を思うと私だけ幸せになって良いのか…それが分かりません。
私も今までは卑屈でした。買われたから、子が出来ないから、ローガン様に愛されてないから。ローガン様を見ようとせず、ローガン様の心を知ろうとせず、自分の気持ちも伝えなかった。
だから今度はゆっくりローガン様と愛を育てたい、そう思います。今度は間違えない為にも再婚はその先にと思います」
「ならこんな奴とは再婚なんてしたくないとは思っていないんだな」
「はい」
ローガン様は後ろからギュッと私を抱きしめた。
「ありがとう、ありがとうジニア、ありがとう…」
私は回されたローガン様の手の上に自分の手を重ねる。
「ローガン様、これから初めからやり直しませんか?」
「ああ、ああ、やり直そう」
その日の夜、ジェイク君を寝かせ横になっているとローガン様が寝室へ入って来た。
「ジニア、何もしない。ただ横に側にいたい。俺はソファーで寝るからそれだけは許してほしい」
「ソファーなんて体を痛めます。何もしないと約束してくれるのならどうぞベッドに入って寝て下さい」
「良いのか?」
「好きな人と一緒に寝るのは悪い事ですか?」
「そうか、好きな人か…」
少し照れて嬉しい顔をするローガン様。
ローガン様は可愛い人。
ローガン様は私の横に寝転がった。
「抱きしめるだけは駄目か?ジニアの体温を感じて眠りたい」
「本当なら駄目ですが、私もローガン様の体温を感じて眠りたいです」
ローガン様は後ろから私を抱き寄せた。ローガン様の体温を感じ、恥ずかしいけど安心する温もり。
「おやすみジニア」
ローガン様は私の頭に口付けをした。
「おやすみなさいローガン様」
私は回されたローガン様の手に自分の手を重ねた。重なった手をローガン様は反対にし私の手を握る。
私の後ろにはローガン様、私の前にはジェイク君、母親ではないけどこれは家族の風景。
ジェイク君の寝息を聞き、ローガン様の寝息を聞き、私は眠りについた。
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