厨二病設定てんこ盛りの王子殿下が迫って来ます。 〜異世界に転生したら、厨二病王子の通訳者にされました〜【R18版】

笛路

文字の大きさ
15 / 196

15:それは蛙のような声で……。

しおりを挟む



 食堂で家族皆で夕食を食べた後、お母様から明日の為に早く休むようにと言われました。
 明日は昼前からドレスを着る準備があり、体力精神どちらもかなり消耗しますので、今日の夜はたっぷりと寝ておく事が大切なのです。

「では、お先に失礼いたします」
「ミッ、ミラベル、明日は本当にロブにエスコートしてもらうんだな?」
「ええ。お父様、急にどうされましたの?」

 ロブにエスコートしてもらう事は随分と前にお伝えしていたはずなのに、何故か焦ったように確認されてしまいました。
 今更『反対だ』と言われるのかと一瞬焦りましたが、「いや、確認なだけだよ、おやすみ」と言うと、お兄様と何かモソモソと話し始めてしまわれました。
 お母様とお義姉様は知らぬ顔で優雅にお茶を飲んで談笑していらっしゃいました。なんだか今日は変な空気です。



 食堂から部屋に戻り、明日の為にと手早くお風呂に入って、すぐさまベッドに潜り込みました。
 ベッドには入ったものの、まだ九時なので眠くなりようがありません。なのでカーテンを開けてもらい、夜空を眺めながら眠気が来るのを待つことにしました。

 薄曇りの夜空に、金色の光を放つ美しい月が淡く浮かび上がっています。
 まるで私の心の中を表したような曇り空です。
 今日は満月前夜。
 デビュタントボールは毎年必ず満月の日に行われるのです。
 そういえば、セオドリック殿下が「満月と新月の日は、我が眼に秘めたる邪神が疼く」とか言っていましたね。
 未だに厨二病言動をされているのでしょうか?

 王城から戻って以来、私の家族はもちろん使用人も領地の民達さえも、殿下や王族の方々の話を一切しなくなりました。
 たぶん私の前でだけなのでしょうが。
 私も自ら王族の方々のお話は耳にも目にも入れないようにしていましたので、あれから殿下がどのように過ごされ、成長されたのかわかりません。
 たぶん明日お会いすることになるのでしょうが、普通に挨拶出来るのでしょうか?

「…………ハァ」

 少し、憂鬱になって来ました。
 ぐずぐずと考えても仕方ありません、もう寝てしまいましょう。



 朝早く起きて、全身を侍女たちに揉まれ、磨かれ、整えられ、お昼にごく軽く食事をし、少し休憩してからコルセットの締め上げ開始です。
 ベッドの支柱に抱きつき、コルセットの紐をグイグイと絞められる引力と衝撃に耐えます。
 乙女としてどうかとは思いますが、「ぐえっ」や「ぐるじぃぃ」などのうめき声は許して欲しいです。
 ある程度絞めて、少し休憩をすると、コルセットに合わせ肋骨や内臓が動くらしく、息苦しかったのが少し楽になります。そうしたら更にコルセットを絞めるのですが、私はいつも断固拒否です。

「お嬢様、まだまだ絞められますが?」
「陛下への挨拶やダンスもあるのよ、酸欠で倒れたくないわ。これくらいでもドレスは入るでしょう?」
「入りますが……」

 ずっと私の侍女をしてくれているザラは不服そうですが、断固拒否なのです!
 ドレスを着て、化粧や髪を整え、ジュエリー類を着けて、準備万端です。
 サロンで家族に挨拶しようと廊下に出ると、キラキラしく盛装した仏頂面のロブが待ち構えていました。

「お嬢……じゃなかった。ミラベル嬢、お手を」
「あら、エスコートしてくれるの?」
「仕事ですからね」
「ふふっ、ありがと」

 ロブの右手の内肘に左手を添えて二人でサロンに向かいました。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

処理中です...