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14:春は遠い。
しおりを挟むデビュタントボールに参加する為、王都のタウンハウスに来ました。
「「ミラベルお嬢様、おかえりなさいませ」」
タウンハウスを管理している家令やメイド達が歓迎してくれました。
「この五年間、全く顔を出さなくてごめんなさいね」
皆に挨拶しつつ、ロブの紹介をしました。
そしてメイド達には今回の計画と、ロブを磨き上げてとお願いもしました。
「まぁまぁまぁ! 腕によりをかけて!」
なぜだか皆がやる気になったのでおまかせすると、ロブが絶望に近い何かを瞳に乗せ、ドナドナされて行きました。
家令によると、最近の王都では騎士とお嬢様の身分違いな恋愛小説が流行っているとの事でした。
「あら、まるで私達のようなのね?」
「おや? 本当にそのような関係でしたか……」
「一ミリもそんな雰囲気にはならないわ」
「お嬢様に春はまだまだ遠いようですなぁ」
何故か家令が残念そうにしています。
孫の顔が――――などと、どこ目線か解らない家令の小言はまるっと無視しました。いいのです、私はB級グルメと共に生きるのです!
デビュタントボールは明日の十八時からなので、今日は王妃殿下に頂いたというドレスの確認と明日の髪型やジュエリーを決めようと自室に向かいました。
ドレスはクリームイエローで、胸元が真っ直ぐに作られているベアトップのエンパイアラインでした。とてもしっとりと柔らかな印象でとても気に入りました。
「――――え? ジュエリーも頂いてるの?」
「はい」
侍女のザラから見せられたのは、ライトブルーの少しネオンのような輝きを感じられるドロップ型のイヤリングと、ビブネックレス――肩から後ろはチェーン、肩から前は三日月型に宝石を繋いでいるゴージャスなタイプ――でした。
「こちら、パライバトルマリンと言いまして、銅を多く含んだ鉱石で、中からライティングされたような輝きを放つ希少なものとの事です」
トルマリン……水色。また、水色ですか。
「ドレスの形と合わないわね。それにデビュタントが着けるには少々高価すぎるわ。これは本当に王妃殿下が下さったものなの?」
「ドレスと一緒に届いたと伺いましたが……もう一度確認して参りますか?」
「……いえ、いいわ。これは片しといてちょうだい。明日は手持ちのジュエリーを着けるわ」
「かしこまりました」
ストレートに裁断された胸元に合うのは、もう少し大人しめのデザインで、形はラウンド型が良いです。
確か手持ちの物にブラウンダイヤモンドのプリンセスネックレスがあったはず、それを着けましょう。
夕食の時間になり、食堂に向かおうと部屋から出ると、廊下の向こうから小綺麗なロブが早足でこちらに近付いて来ているのが見えました。何だか顔が険しいです。
「あら、どうしたの?」
「どうしたのじゃありませんよ! 見てくださいよ」
ロブが自分の髪の毛をピンピンと引っ張って何かを主張して来ます。
「あまり引っ張るとハゲるわよ?」
「まだ若いんでハゲません! っ、じゃなくて! 何か髪の毛に塗り込まれたんですけど⁉ 体中触られまくったんですけど⁉」
「まぁ、良かったわね!」
ロブが日頃から騎士団にいると女性と知り合えない、ときめく触れ合いが無い、とかグチグチグチグチと言っていましたので、夢が叶って良かったわねと思っていましたが、どうやらそうじゃなかったようです。
「完全に野良犬を洗うみたいにされましたけど⁉ ときめきとか全くありませんでしたけど⁉」
「これからよ、これから! 頑張りなさい!」
「いや、何を『チャンスはまたある』みたいな言い方で誤魔化そうとしてるんですか! そういう話じゃ無いでしょうが!」
どうやら男なのに女性に良いように扱われ、エステまでされて、自尊心などがズタズタになった、という主張だったようです。
――――分かり辛いわねぇ。
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