厨二病設定てんこ盛りの王子殿下が迫って来ます。 〜異世界に転生したら、厨二病王子の通訳者にされました〜【R18版】

笛路

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19:やられました。

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 色々と……本当に色々と! 言いたいことはありますが、取り敢えず横に置いて、デビュタントボールに参加する為、サロンを後にしました。
 セオドリック殿下は「はぁ⁉ まだ荒ぶっているのか⁉ 我のいざないを無視するとは……」とかなんとか言いながら右肘を直角に曲げ、横に突き出していらっしゃいました。
 一体何をされているのでしょうねっ⁉

「お嬢、よかったんです?」
「ロブ、口調!」
「……ミラベル嬢、イヤリングとネックレスはどうされたのですか?」
「……煩いですわよ!」
「ちょ、なんでキレてんすか」
「口調!」
「えぇぇぇ……」

 軽くロブに八つ当たりしながら会場入りしました。



 会場入りしたら、まずは単身で国王陛下と王妃殿下にご挨拶です。
 陛下方の座られている壇上の前に立ちカーテシー、家名と名を告げ、陛下方に言祝ぎの言葉をいただいて、お礼とカーテシー。
 王子殿下たちに声を掛けられた場合はその都度対応、というのが基本的なルールです。

 国王陛下と王妃殿下の前に立ちカーテシーをしたところで、いきなり王妃殿下がルールをぶち破ってくださいました。

「ミラベルちゃん、さっきセオドリックにサロンに連れ込まれたって聞いたわ、大丈夫だったかしら? 嫌なこととか、なにもされてなぁい?」
「「……」」

 やられました。
 公衆面前で、『未婚の男女が二人きりで密室にいた』と取れる発言をされてしまいました。
 そこまで大きい声ではありませんでしたが、王妃殿下の発言ということもあり、ほとんどの人が聞いていたことでしょう。
 チラリとセオドリック殿下を見ると、ニヤニヤとされていました。

 ――――ヤツが真犯人ですわね。

 ザワ付く会場を無視し、もう一度カーテシーをしました。

「アップルビー伯爵家、ミラベルにございます。本日はこのような場を設けていただき感謝いたします。陛下の尊きお言葉を胸に、本日より貴族の一員として、国・領地に貢献できるよう邁進いたします」

 ――――お言葉など頂いてはおりませんがっ!

「ミラベル!」
「あっ……ミラベルちゃん」

 なるべく優雅に見えるよう微笑み、再度カーテシーで挨拶をして壇上から下りました。

 参加したくなかったデビュタントボール。
 成人として認められる晴れ舞台。
 皆がキラキラとした笑顔で、将来に、未来に、期待を抱いている。
 皆が心から幸せそうにしている。

 ――――悔しい。
 
 どこからか、いつからか、囲い込みは始まっていて、私には味方がいなくて、誰も彼もが敵で。

「――――お嬢、お嬢!」

 駆け寄ってくるロブを無視し、足早にザワ付いたままの会場を出て、休憩用に用意されていた部屋に鍵を掛けて籠城しました。



 籠城した部屋の扉がノックされた後、「お嬢、廊下に控えてますので」とロブの声がしました。
 ロブだけは味方だと思いたいです。
 でも、ロブの雇い主はお父様な訳で――――。

「…………ロブ」
「はい」
「私は無力ね」
「お嬢……」

 きっと、明日から私は王城に住むことになるのでしょう。
 きっと、明日から私はセオドリック殿下の婚約者に戻るのでしょう。
 きっと、私はセオドリック殿下と結婚することになるのでしょう。

 重たい体を備え付けのベッドに投げ出して、枕に顔を埋めました。
 枕が少し濡れていたのは、気のせいだと思いたいです。


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