52 / 196
52:何て恥ずかしい事を……と言うところ。
しおりを挟む「ほら」
「あ、あーん。んっ」
「ん。美味いか?」
「はひ、おいひいです」
テオ様がフォークに刺したミニトマトを更に差し出して来たので、恥ずかしさをグッと堪えて、パクリと口に含みました。
張りのある皮に歯を立て、くしゅんと噛むと、トマトの酸味が口内に広がりました。
ミニトマトって、凄く、朝! って感じです。
ムグムグと食べていると、今度はほうれん草のベビーリーフっぽいものなどが三枚ほど刺さったフォークを差し出されました。
ミニトマトをゴクリと飲み込んで、さらにそれらを食べ……食べ…………食べ⁉
「ちょ、ちょっと! いつまでこれするんですか⁉」
「ん? 全部だが?」
「それもう、介護の領域ですわよっ!」
「ぶふっ……」
テオ様が軽く吹き出し、ぷるぷる震えながら声を上げて笑い出すのを我慢していました。
この隙きにと自分のフォークを握り、自力でガッツリ食べました。
「おい、そこは私にも『あーん』するところだろう。そして、『あっ、ムキになって……わたくしったら、なんて恥ずかしい事を』とか言って頬を染める流れだろうが。何をもっさりガッツリとサラダ食べ終わらせているんだ」
「もっさり盛ったのテオ様ですし。あと標準語に戻ってますわよ」
「チッ」
普通に舌打ちされました。
何かモヤッとしましたので、あぁ⁉ やってやろうじゃないか! と立ち上がり、カットチーズが置いてある所にに行きました。
美しい色合いのチーズの塊にフォークを刺しましたら、チーズが割れてしまったので、割れた三センチ角の塊を指で掴み、テオ様の隣に戻りました。
「はい、あぁぁんっ!」
「食べるかぁぁ!」
「あら、とても美味しいですわよ?」
テオ様が大好きな青カビチーズを差し出しましたら、全力で拒否されてしまいました。
「臭い! エグ臭い!」
「あら、パスタやグラタンのソースに混ぜると美味しいのに」
「……嘘つくな。あとそうだとしても、それは生だろ」
「嘘じゃございません! はい、あーん!」
ズイッと更に差し出しましたら、ちょっと本気で怒られました。
青カビチーズは給仕に回収されてしまいました。
ちょっと騒がしめの朝食が終わり、今日こそ! とピクニックをしています。
木の幹に背もたれて、春の風を受けながら、のんびりと湖畔を見つめ、なんてことない話をする。
それだけなのに、とても楽しく、とても幸せな時間です。
「ふあぁぁ、眠い」
テオ様がポフリと私の太股の上に頭を乗せると、小さな声で「幸せな時間だな」と言われました。
同じ事を同じタイミングで考えていたなんて。
あぁ、なんだがドキドキします。
ウトウトするテオ様の頭を撫でていると、サラッサラのプラチナブロンドなストレートロングヘアーが、指に一切絡まない事に気が付いて、軽くイラッとしました。
「……おい、顔」
「なんですか?」
「いや、何があったらこのタイミングで、そんな苦虫噛み潰したような顔になるんだ」
「ぶぅえっっつにぃぃ、サラッサラで羨ましいとか、思ってませんしぃぃ」
精一杯の強がりをしていましたら、テオ様がお腹を抱えて笑い出してしまいました。
「ハァハァ……腹が痛い。ミラベルは可愛いなぁ」
「……ふんっ」
そっぽを向いていましたら、テオ様が下から私の髪に触れ、耳殻をくすぐり、頬を撫で、親指で下唇をそっとなぞりました。
「ミラベルの髪はふわふわで甘くて美味しそうだ。私は好きだぞ」
「っ、そう、ですか」
「ん。真っ赤で可愛い」
テオ様が何だか楽しそうにクスリと笑いながら、また親指で下唇をなぞるように撫でてきました。
その動きは、何だかちょっと艶めかしいキスのようで、私の心臓はバクンバクンと早鐘を打ってしまいました。
0
あなたにおすすめの小説
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】魔王様、溺愛しすぎです!
綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
「パパと結婚する!」
8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!
拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。
シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
挿絵★あり
【完結】2021/12/02
※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過
※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過
※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位
※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品
※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24)
※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品
※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品
※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる