厨二病設定てんこ盛りの王子殿下が迫って来ます。 〜異世界に転生したら、厨二病王子の通訳者にされました〜【R18版】

笛路

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83:どこかが変。

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 テオ様に、夫婦の寝室に閉じ込められてしまいました。
 特に話すこともなく、私は本を読んだり、刺繍をしたり。
 テオ様は書類を持ち込まれ、執務をされているようでした。

 食事は毎食部屋で取りました。
 廊下にワゴンで用意され、テオ様が部屋に運び込まれます。
 飲み物もテオ様が入れてくれます。
 そして、二人向き合って黙々と食べるだけ。

「ごちそうさまでした」
「ん」
「……」

 とても息苦しいです。



 身支度やお風呂はザラの手伝いが許されたものの、テオ様がお風呂場の中にまで入ってきて、終始監視されました。

「落ち着いて入れません」
「……嫌いでいい」

 返事になっていないと思うのですが、これ以上何かを言っても、同じ返事しか返ってこないのは、一日で学びました。

 夜は同じベッドで、私を後ろ抱きにして寝られます。
 時々、私のお腹を擦っては、肩に近い首筋にキスを落として、スヤスヤと眠られます。

 少しでも触れられると背中がゾワリとし、息が詰まったように苦しくなります。
 心臓が破裂しそうなほどの鼓動を始めますが、テオ様がこれ以上は何もしないと分かってはいるので、次第に落ち着き、私も眠りに付きます。

 

 三日目の朝、目覚めるとテオ様がいませんでした。
 申し訳無さそうな顔のザラが運んでくれた朝食を取り、ソファで本を読んでいましたら、テオ様が戻って来られました。
 久しぶりに、ニッコリと笑われています。

「ミラベル、アイツが死んだよ」
「っ⁉」
「嬉しく、ないの?」

 アイツ……エゾノイ王国の将軍の事でしょう。
 本当にあの日の密約が実行されたのだと知り、背中がゾワリとしました。
 王侯貴族は、治世において、清濁併せ呑む覚悟が必要なのは解っています。
 治世……国を治め、護る為の。
 でも、これは違う気がするのです。

「人の死を、笑顔で喜べはしません」
「そう? 私は嬉しいよ? ミラベルを苦しめるものが、この世からひとつ無くなったからね」
「……そう、ですか」

 テオ様が嬉しそうに微笑みながら、私の方に左手を伸ばして来られました。

「ミラベル」
「っ……」

 先程感じた寒気のようなものが再発し、ビクリと肩を震わせてしまいました。

「――あぁ。そうだったね。私は嫌われているのだったね。浮かれて、忘れていたよ」

 私の様子を見たテオ様が、スッと真顔になりました。
 伸ばしていた手を引いて、ジッと左手の掌を見つめながら、ボソボソと呟かれました。

「左手にも聖鎧せいがいを着けようかなぁ。そうしたら、触れても嫌がられないかなぁ」
「テオ、さま?」
「ん? なあに?」

 呼びかけたものの、何を言えばいいのか分かりませんでした。

 あの事件の日から、テオ様が変です。
 どこかが可笑しいのですが、『』とハッキリとは言えません。
 ただ、妙な違和感があるのです。
 それは、私自身も同じ状態でした。
 
 間違いなく、あの日の事が尾を引いているのですが、何をどうしたら解決するのか、何をもって解決とするのか、まったく分かりません。
 光芒さえも見えないまま、漫然とした日を過ごしました。


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