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99:置き去りなミラベル。
しおりを挟む王妃殿下にご挨拶をしてサロンを退室しました。
久しぶりにアシュリー様に会えるのはとても嬉しいのですが、アシュリー様のご友人に受け入れてもらえるのでしょうか?
あと、ザラが身籠っているという話も気になります。とても気になりますっ!
部屋の前に着き、ザラがドアを開けようとした時でした。
「ザラッ!」
ザラが膝からカクリと崩折れかけ、私の真横を紺色の何かがズバッと通り過ぎた、と思った時には、ロブがザラを抱き留めていて、事なきを得ていました。
もし、俯せで倒れて、お腹でも打ち付けてしまったら、流れていたかもしれなかった。
そう思うと、ゾッとするとともに、ロブが助けてくれて本当に良かったと思いました。
「ロブ、ありがとう。ザラと赤ちゃんを護ってくれて、本当にありがとう!」
ホッと息を吐きながらそう言うと、何故かザラがとても慌てた様子で怒鳴りました。
「お嬢様っ!」
「ひぇっ?」
「は?」
何故かロブもキョトンとしています。
「あら、知らないのは私だけじゃなかったのね。あ、ロブ、ザラをそのまま運んでソファに座らせてちょうだい」
「…………畏まりました」
何故かロブの顔が、険しいを通り越して殺人鬼みたいになっています。
あれよね、長年の付き合いなのに水臭すぎてモヤモヤするのよね?
主人の私にも言わないなんて、本当にザラったら。気を遣いすぎなのよ。
それにしても、結婚を約束した相手なんていたのねぇ。
王城で出逢ったのかしら? 私の知ってる方かしら?
…………なんて思っていたのだけど。
ロブがザラをソファに下ろして立ち上がると、ザラを睥睨するように見下ろしていました。
「ザラ、どういうことだ?」
「っ……」
「妊娠したのか?」
「……貴方の子ではありません」
「妊娠、してるんだな?」
えと、この会話は、何なのでしょうか?
ロブがザラにタメ口を……いえ、そこではなくて。
貴方、つまり、ロブ? ……の子ではない?
そして、ロブは怒っている?
状況が飲み込めずにぽかんとして、部屋の中央で立ち尽くす私を置き去りに、二人の会話はどんどんとヒートアップしていきます。
「……何で黙ってた」
「だから、貴方の子では――――」
「俺の子ども以外ありえないだろうが!」
「違いますっ!」
ザラが泣き叫ぶように違うと言い、ロブは自分の子だと言う。
――――それって。
「二人は、そういう関係なの?」
ポロリと口から漏れ出ていました。
「お嬢様は黙っていてください!」
「お嬢、うるさいです!」
――――えぇぇぇ⁉
ここ、私の部屋だし! あと、私、たぶん、一応、主人なのだけど⁉
そう言いたいのに、二人はさらにヒートアップ。
「ほぼ毎日、俺が抱いてただろ⁉」
「っ! お嬢様の前でそういう事を言わないで!」
「俺が、ザラの中に、毎日、射精しまくった!」
「ちょっ……お嬢様! 耳を塞いで下さい! あと、毎日なわけないでしょ! どんな妄想よ!」
いえ、既にガッツリ聞いてしまいましたし? あと、聞きたいですし? なので、塞ぎませんけどね。
「なぁ、あれだけ愛してるって言ったのに、信じてくれないのか?」
「っ、信じられませ――――」
「ザラ、愛してる」
「っ!」
ロブがザラの目の前で跪き、そっと両手を伸ばしてザラの頬を包み込むと、優しく触れるように唇を重ねました。
「ザラ、俺は何度でも言う。愛してる。同情じゃない。その場の成り行きでもない。あんたを好きになったんだ。愛しているんだ。あんたの人生から俺を排除しないでくれ…………頼む」
基本的にスンとしているザラが、顔を真っ赤にして、ボロボロと涙を流していました。
ロブの顔は私の立ち位置からではよく見えませんでしたが、微笑んでいるような気がします。
二人は何度も何度も唇を重ね……ちょっとお口から水音が鳴り始めましたけどぉ⁉
「あのー、そろそろよろしいでしょうか?」
私、たぶん、一応、主人なのだけど、何故か敬語になってしまいました。
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