厨二病設定てんこ盛りの王子殿下が迫って来ます。 〜異世界に転生したら、厨二病王子の通訳者にされました〜【R18版】

笛路

文字の大きさ
161 / 196

155:急に何を。

しおりを挟む



 まるで怒鳴るかのように、テオ様のお名前を叫んでしまいました。
 テオ様が眉間に皺を寄せ、声を荒らげたことを避難するかのようなお顔で、こちらを振り向かれました。

「なんだ?」
「っ、あの…………」

 傷付けるつもりなんてなかった。
 ただ、可愛いや好きを共有したかった。
 ただ、周りが見えていなかった。
 
 テオ様が嫌がるから、話さない。
 テオ様が嫌がるから、会いに行かない。
 テオ様が嫌がるから。

 それは違うと思う。
 だから、傷付いたテオ様に何を言えばいいのか、解らなくなりました。

「…………行かないで」

 迷いに迷って小さな声で絞り出せたのは、そんな陳腐な言葉だけ。
 
「ミラベル?」

 テオ様が心配そうなお顔で、こちらを覗き込まれますが、視線を合わせたら、全てが崩壊してしまいそうな気がして、ギュッと目を瞑りました。

 ふわり、何かに包まれました。
 温かくて、少し硬い身体。
 少しスパイシーな匂い。
 テオ様の、匂い。

「……少し、話そうか」
「はい」


 
 テオ様と、ソファに隣り合って座り、色んな事をゆっくりとお話しました。

 自分が好きなものが、相手も好きとは限らない。
 そんな当たり前の事が抜け落ちていて、テオ様に押し付けていた事に、テオ様が限界を迎えるまで気付けませんでした。

「ごめんなさい」
「ん、私も。違うとは言ったが…………嫉妬、だったのかもしれないな。ミラベル、膝の上に座って?」
「はぁ?」

 ――――急に何を。

「……なぁ、いま、仲直りの雰囲気だったよな?」
「あっ! えと、座るのですか?」
「ん、座って」

 テオ様のお膝に、横向きでそっと腰を下ろしました。
 テオ様は腰を支えつつ、私の胸に顔を埋められました。

「ミラベルと赤ん坊の重さを感じたかったんだ」

 胸に顔を埋める必要はあったのか、は言っては駄目な気がしたので、口を噤みました。

「ミラベル、未来の話をしよう? もっともっと、この子の事を話そう?」
「はい、いっぱい話しましょう」
「そうだな、先ずは――――」



 いい雰囲気というものは、わりと簡単に、一瞬で崩れ去る訳で。
 
「嫌ですっ!」
「何故だぁ⁉ バウデヴェイン・ユクトス・ラドバウト・ファン・デル・フォレスター、格好良いじゃないか」
「嫌です! そんなの! っていうか、その長ったらしい名前……え? 趣味だったんですか⁉」
「…………悪いか」

 口を尖らせ、プイッとそっぽを向かれました。
 ちょっと可愛い……じゃなくて!
 まさかの、厨二病設定、時々設定じゃないやつ⁉

 悪いかと聞かれれば悪いので、ぶった斬りますが。

「その趣味は、自身の中に押し留めておいてください」
「……カッコイイのに」

 テオ様がプチプチと文句を言いながら、お茶を飲みかけて、ガタリと立ち上がりました。

「国民投票とかどうだ⁉」

 どうだ、と言われましても。
 まさか、子供の名前を国民投票で決める気ですか!
 男の子か女の子かもわかっていないのに。

「却下!」
「却下言うな」
「却下です。一般的な、普通の名前にしますっ!」
「けち」

 またもや口を尖らせて、プチプチと文句を言い出したので、えいやっ! とテオ様の唇を奪ってみました。

「プチプチ言わない!」
「…………も一回」
「普通の名前にしていいのなら、します」
「んぐ……………………それでいい。キスして?」

 ――――あらぁ?

 イジけつつも、キスで折れてくれました。
 あんまりにも可愛らしかったので、ちょっと甘く、ながーいキスをしました。
 テオ様は、大喜びでした。
 チョロいです。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

処理中です...