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175:お疲れさまでした。
しおりを挟む王妃殿下が帰られてから、レジナルドとソフィと遊びつつ、ザラに話せる部分だけを話していました。
「――――ってことらしいわよ」
「っ、はい。大変申し訳ございませんでした」
「違う違う。責めてるのではなくて、テオ様のこと、見直してくれた?」
「はい!」
良かった。
主人を敬えないと、仕えるのは辛いでしょうから。そこだけが心配でした。
「私の主人はお嬢様です」
「もう! そもそも、いつまで『お嬢様』って呼ぶのよ⁉」
「お嬢様はお嬢様です」
あ、駄目だ。
たぶんこれ以上言っても、壊れたレコードになるだけだわ。
まだまだ後処理に時間が掛かるとお聞きしていたのですが、王妃殿下の訪問から三日後の夕方、テオ様が宮に帰って来ました。
「おかえりなさいませ」
「ん……ミラベル、レジナルドっ!」
テオ様は、目の下に濃いクマを作り、髪の毛は首の後ろで無造作に結び、ボサボサです。
軍服の前ボタンを全て開け、中のシャツはしわくちゃのノータイ状態でした。
どこからどう見ても、クッタクタのボッロボロです。
そして、やっぱり香水臭いです。
そんな状態なのに、抱きついて来ようとしましたので、テオ様の方に手を押し出しました。
「先ずはお風呂に入られてください」
「ミラベル、久しぶりに…………抱きしめたい」
「先ずは、お風呂に! 臭いです!」
「っ、うん、ごめん……」
テオ様が、こころなしか泣きそうな顔になられました。
でも、他の女の人の臭いを付けたままのテオ様とは、嫌です。
お風呂でさっぱりして来られ、石鹸の匂いに包まれたテオ様をギューッと抱きしめました。
「っ⁉」
「お疲れさまでした。王妃殿下よりお伺いしました。とても大変だったようですね」
「んっ……ミラベルだ。本物のミラベルだ……」
テオ様がぎゅむむむむっと抱きしめ返してきて、ちょっと苦しかったですが、今回は我慢してあげました。
だって、鼻声なんですもの。
「レジナルドは?」
「あっ、申し訳ございません」
先程までは元気そうに手足を動かしたりして遊んでいたのですが、テオ様が戻られる5分ほど前に急にコテンと寝てしまいました。
テオ様はちょっとだけシュンとしつつも、子供部屋に向かい、レジナルドの寝顔を見て、頬を撫でて、おでこにキスを落とされました。
「数日のあいだ見ていなかっただけで、随分と大きくなった気がする」
テオ様がいない間に、レジナルドは色々な離乳食に挑戦し、好き嫌いも出てきたような気がします。
テオ様は、それを其の場で見られなかったことがとても悔しいようでした。
「明日は、また王城の方に戻られるのですか?」
「いや、明日は休みが取れた」
明後日からはまた、後処理に東奔西走しなければならないようです。
色々と聞きたいこともありますが、今日明日くらいは、全て忘れて、休養してほしいです。
今日は早めに寝て、明日はゆっくり起きて、レジナルドと三人でのんびりしましょうと提案しましたら、テオ様が幸せそうに破顔して頷かれました。
「ありがとう、ミラベル」
――――テオ様、本当にお疲れさまでした。
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