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「――あ、花坂君、海谷君! 一体どこに行ってたんですか!」
城へ帰るとすぐに詠が駆けつけてきた。その傍には二人の女子生徒もいる。
「詠ちゃん先生、悪い悪い。ちょっと探検に?」
それは真悟の気遣いなのか。
今見てきた現状は、いずれ彼女たちにも伝わることだろう。だが今伝えてさらに不安がらせる必要はないと思ったのかもしれない。
「もう! 外に出る時はちゃんと私にも報告してください!」
「「すみませんでした」」
ここは彼女の方が正しい。しっかりと謝罪しておく。
「ところで鍵森君と磯部君、あと木村君を見かけませんでしたか?」
城を出る前に、同じように外に向かった連中だ。
「多分まだ街にいると思うぜ」
真悟の言葉に大きな溜め息を吐き出す詠。
「アンタたちも勝手な行動とか止めなさいよね! こんなわけの分かんない世界で勝手な行動とかホントバカなんだから!」
「ちょっと織奈ちゃん、言い過ぎだよぉ」
口調が厳しい濃紺系の髪でサイドポニーをしている女子は笹時織奈。スレンダー美少女ではあるが、口調がキツイのと男を見下しているような発言をたまにするので、男子にはあまり人気がない。
そして彼女に寄り添いながら注意をしたのは桜野星音だ。黒髪のサラサラショートヘアーで、黄色いカチューシャをしている。自信がなさそうに見える垂れ目と、いつも織奈にくっついていて腰巾着と呼ばれているのが特徴だ。
「ところで外はどうだったのよ?」
「そこは聞くのかよ」
織奈の質問にナイスツッコミの真悟。
「いいから答えなさいよね」
「ちょ、もっと穏便に、ね」
「むぅ、星音がそう言うなら……。ほら、教えなさい」
何がどう変わったのかサッパリ分からないが、頬を引き攣らせている真悟の代わりに天満が口を開く。
「外は別に変わったことがなかった。この世界にとって普通の光景があるだけ」
「ふぅん、そう」
別に嘘は言っていない。何故ならあの光景は、天満たちには異常でも、この世界の住人にとっては自然なことなのだから。
そこへ三人の少年たちが姿を見せる。鍵森たちだ。
もちろん彼らの姿を見た詠が頬を膨らませながら近づいていく。
「あ、鍵森君たち! これからは出掛ける時はちゃんと先生に報告を……って、どうしたの磯部君と木村君、具合が悪そうだけど?」
彼女の言う通り、鍵森は普段とはほとんど変わらないが、男二人の顔が真っ青だ。
(アイツらもあの光景を見たか……?)
外に出たのなら、間違いなく国外がどうなっているのか確認したはずだ。それに街中の現状も。
あまりにも酷い暮らしぶりと、世界の有り様に青ざめてしまっているのだろう。
「次からは気を付ければいいんだろ。お前ら、さっさと行くぞ」
「「は、はい」」
「あ、ちょ……もう」
去っていく鍵森たちを口を尖らせながら、詠はただ見つめていた。
「んじゃ俺らも部屋に戻るか」
「ああ、そうだな。じゃあ先生、オレたちは戻ります」
「あ、ちょっと! ……もう、あの子たちは」
背中で呆れたような詠の声が聞こえたが、無視してそのまま部屋へと戻って行った。
城へ帰るとすぐに詠が駆けつけてきた。その傍には二人の女子生徒もいる。
「詠ちゃん先生、悪い悪い。ちょっと探検に?」
それは真悟の気遣いなのか。
今見てきた現状は、いずれ彼女たちにも伝わることだろう。だが今伝えてさらに不安がらせる必要はないと思ったのかもしれない。
「もう! 外に出る時はちゃんと私にも報告してください!」
「「すみませんでした」」
ここは彼女の方が正しい。しっかりと謝罪しておく。
「ところで鍵森君と磯部君、あと木村君を見かけませんでしたか?」
城を出る前に、同じように外に向かった連中だ。
「多分まだ街にいると思うぜ」
真悟の言葉に大きな溜め息を吐き出す詠。
「アンタたちも勝手な行動とか止めなさいよね! こんなわけの分かんない世界で勝手な行動とかホントバカなんだから!」
「ちょっと織奈ちゃん、言い過ぎだよぉ」
口調が厳しい濃紺系の髪でサイドポニーをしている女子は笹時織奈。スレンダー美少女ではあるが、口調がキツイのと男を見下しているような発言をたまにするので、男子にはあまり人気がない。
そして彼女に寄り添いながら注意をしたのは桜野星音だ。黒髪のサラサラショートヘアーで、黄色いカチューシャをしている。自信がなさそうに見える垂れ目と、いつも織奈にくっついていて腰巾着と呼ばれているのが特徴だ。
「ところで外はどうだったのよ?」
「そこは聞くのかよ」
織奈の質問にナイスツッコミの真悟。
「いいから答えなさいよね」
「ちょ、もっと穏便に、ね」
「むぅ、星音がそう言うなら……。ほら、教えなさい」
何がどう変わったのかサッパリ分からないが、頬を引き攣らせている真悟の代わりに天満が口を開く。
「外は別に変わったことがなかった。この世界にとって普通の光景があるだけ」
「ふぅん、そう」
別に嘘は言っていない。何故ならあの光景は、天満たちには異常でも、この世界の住人にとっては自然なことなのだから。
そこへ三人の少年たちが姿を見せる。鍵森たちだ。
もちろん彼らの姿を見た詠が頬を膨らませながら近づいていく。
「あ、鍵森君たち! これからは出掛ける時はちゃんと先生に報告を……って、どうしたの磯部君と木村君、具合が悪そうだけど?」
彼女の言う通り、鍵森は普段とはほとんど変わらないが、男二人の顔が真っ青だ。
(アイツらもあの光景を見たか……?)
外に出たのなら、間違いなく国外がどうなっているのか確認したはずだ。それに街中の現状も。
あまりにも酷い暮らしぶりと、世界の有り様に青ざめてしまっているのだろう。
「次からは気を付ければいいんだろ。お前ら、さっさと行くぞ」
「「は、はい」」
「あ、ちょ……もう」
去っていく鍵森たちを口を尖らせながら、詠はただ見つめていた。
「んじゃ俺らも部屋に戻るか」
「ああ、そうだな。じゃあ先生、オレたちは戻ります」
「あ、ちょっと! ……もう、あの子たちは」
背中で呆れたような詠の声が聞こえたが、無視してそのまま部屋へと戻って行った。
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