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「ちょ、追いかけなくていいんですか?」
叫んだものの、一向に追う様子を見せないヴァインさんたちに俺は尋ねたが、ヴァインさんは肩を竦めて言う。
「ああやって逃げ出すのも珍しくはないからな」
「そうなんですか?」
「うむ。自分の思い通りにならないことが起きたり、どうしようもならないことに直面したりして我慢が限界に達すると…………叫んで飛び出ていく」
うわぁ、まるで子供じゃねえか。ていうかロニカもたまにそういうことするけど。
俺は椅子に座り眠たそうに欠伸をしている主を見て、コイツとノーヴァはかなりの似た者同士だと思った。
まあ、見た目もロリだし、性格も自分勝手で負けず嫌い。そして都合が悪くなると癇癪を起こす。もう姉妹とか言われても驚かないほど似ている。
「でもさすがにこのままだと」
「じゃあクロクロ、頼めるぅ?」
「は? 何だいたのか変態」
「はぅ! そ、その辛辣さが骨身に沁みるぅ~」
だから恍惚そうな表情を浮かべるんじゃねえ!
「ゼリスは置いておいて。クロメ殿、頼めるか?」
「俺でいいんですか?」
「儂たち身内が行ったところで反発されるのは目に見えておる。いつもそうだし、こういう場合は放置が基本だったしな」
つまり時間が解決してくれるまで触らぬ神に祟りなしということらしい。
「しかし今回は少し状況が違う。この場には欲しいと願ったお主がおる。お主の言葉ならば少しぐらい耳を傾けてくれるやもしれぬ」
「ヴァインさん……」
「というよりさっさと問題事を終わらせて、主には執務に戻って頂かないとさすがに、な」
「ああ……あなたも苦労してるんですね」
心中お察しします。こっちにも同じような奴がいるんで。
「分かりました。ほれ、ロニカ行くぞ」
「えーロニカが行くと逆効果だと思うけどなぁ」
「そうか? 俺はそうは思わないぞ。だって……」
「ん?」
「だってさ、お前……滅茶苦茶楽しんでたろ?」
「…………」
「きっとノーヴァもそうだよ。だから多分だけど……俺よりもお前と話した方が良い感じだと思う」
ジッとロニカが俺の目を見つめて長い沈黙のあと、大きく溜め息を吐き出す。
「はぁぁぁぁ~、しょうがないなぁ。世話のかかるおばあちゃんだねまったく」
重い腰を上げたロニカとともに、俺はノーヴァを探す任務を引き受けた。
「クロメ殿、恐らく主は城を抜けて【北の見晴台】まで行っておる。そこが主のお気に入りの場所だからな」
「分かりました。行ってみます」
「ねぇ、抱っこ~」
「ああもう、うぜえ! 走れ!」
「じゃあ行かん!」
「~~~っ! ったくもう!」
相変わらずの怠惰属性のロニカにイライラしつつも、このままだとマジで動かないかもしれないので彼女をおんぶする。
「よーし! 行けぇ、クロメ号!」
「楽しそうだなオイ!」
俺たちはノーヴァが出て行った後を追った。
叫んだものの、一向に追う様子を見せないヴァインさんたちに俺は尋ねたが、ヴァインさんは肩を竦めて言う。
「ああやって逃げ出すのも珍しくはないからな」
「そうなんですか?」
「うむ。自分の思い通りにならないことが起きたり、どうしようもならないことに直面したりして我慢が限界に達すると…………叫んで飛び出ていく」
うわぁ、まるで子供じゃねえか。ていうかロニカもたまにそういうことするけど。
俺は椅子に座り眠たそうに欠伸をしている主を見て、コイツとノーヴァはかなりの似た者同士だと思った。
まあ、見た目もロリだし、性格も自分勝手で負けず嫌い。そして都合が悪くなると癇癪を起こす。もう姉妹とか言われても驚かないほど似ている。
「でもさすがにこのままだと」
「じゃあクロクロ、頼めるぅ?」
「は? 何だいたのか変態」
「はぅ! そ、その辛辣さが骨身に沁みるぅ~」
だから恍惚そうな表情を浮かべるんじゃねえ!
「ゼリスは置いておいて。クロメ殿、頼めるか?」
「俺でいいんですか?」
「儂たち身内が行ったところで反発されるのは目に見えておる。いつもそうだし、こういう場合は放置が基本だったしな」
つまり時間が解決してくれるまで触らぬ神に祟りなしということらしい。
「しかし今回は少し状況が違う。この場には欲しいと願ったお主がおる。お主の言葉ならば少しぐらい耳を傾けてくれるやもしれぬ」
「ヴァインさん……」
「というよりさっさと問題事を終わらせて、主には執務に戻って頂かないとさすがに、な」
「ああ……あなたも苦労してるんですね」
心中お察しします。こっちにも同じような奴がいるんで。
「分かりました。ほれ、ロニカ行くぞ」
「えーロニカが行くと逆効果だと思うけどなぁ」
「そうか? 俺はそうは思わないぞ。だって……」
「ん?」
「だってさ、お前……滅茶苦茶楽しんでたろ?」
「…………」
「きっとノーヴァもそうだよ。だから多分だけど……俺よりもお前と話した方が良い感じだと思う」
ジッとロニカが俺の目を見つめて長い沈黙のあと、大きく溜め息を吐き出す。
「はぁぁぁぁ~、しょうがないなぁ。世話のかかるおばあちゃんだねまったく」
重い腰を上げたロニカとともに、俺はノーヴァを探す任務を引き受けた。
「クロメ殿、恐らく主は城を抜けて【北の見晴台】まで行っておる。そこが主のお気に入りの場所だからな」
「分かりました。行ってみます」
「ねぇ、抱っこ~」
「ああもう、うぜえ! 走れ!」
「じゃあ行かん!」
「~~~っ! ったくもう!」
相変わらずの怠惰属性のロニカにイライラしつつも、このままだとマジで動かないかもしれないので彼女をおんぶする。
「よーし! 行けぇ、クロメ号!」
「楽しそうだなオイ!」
俺たちはノーヴァが出て行った後を追った。
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