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「特に注意点はありませんが、《魔方陣》に関しては、今回は3×3で、1~9の数字を一つずつ入れて完成させてください。また《シルエットパズル》については、綺麗な十字架を作ってください」
余とイスタリが了承の意味を込めて頷く。
「では両者よろしいですか? 最後の第三番勝負――始め!」
クロメの言葉の終わりと同時に、余はまず《知恵の輪》から手を伸ばした。
クネクネと折り曲がった細い鉄の塊が鎖のように繋がった代物。それを一定の法則で動かすと二つに外れる玩具である。
「むふふ、こういうのは意外に得意なのじゃ! ――ほれ、外れたぞ!」
「きゃー! カッコ良いよぉ、ご主人~!」
「そうであろうそうであろう!」
僅か十秒も満たない時間で一つのパズルをクリアした余をゼリスが称賛の声をかけてくる。
見ればイスタリは、《シルエットパズル》からしているようで、まだ完成に至っていないらしい。
――このままの勢いでいけば!
今度は《魔方陣》に手を伸ばす。
これは正方形の方陣に数字を配置し、縦・横・斜めのいずれの列についても、その列の合計数字が同一になるもののこと。
これは計算力もそうだが、ひらめきが物を言うパズルのはず!
《魔方陣》は3×3だけでなく4×4や5×5など様々にあるらしい。
ふむ、1~9の《魔方陣》の解はすでに見えておるわ!
まず上段の数字を左から6・1・8と書き込む。続いて中段の左から7・5・3。最後に下段の左から2・9・4と書く。
これで縦・横・斜め、どの列を合計しても同じ15になるはず。
おっと、一応確認を…………うむ、なっておるなっておる。
「これで二つ目クリアじゃ!」
またチラリとイスタリを確認してみる。どうやら今から《知恵の輪》を解くようだ。まだ《魔方陣》も残っている様子なので、つい勝利の予感を覚えて笑みが零れる。
背後からゼリスが何か声をかけているが、恐らくまた声援なのだろう。余はそのまますぐに最後のパズルである《シルエットパズル》の攻略に入る。
この《シルエットパズル》というのは、様々な形をしたピースを組み合わせて一つの形を作り上げるパズルだ。
ピースを置く枠が提示されていて、今回は十字架の形をしている。その中に綺麗にすべてのピースが嵌まれば攻略成功である。
ピースは全部で七つ、か。どう組み合わせていけばよいか……。
まずは適当に下部から作ろうとピースを嵌め込んでみる。
「むぅ、これでは合わんか。ならば……」
今度は上部の方から手を出してみるが……。
思った以上に難しい。先程の《知恵の輪》と比べてレベルが格段に上だ。
待て、落ち着くのじゃノーヴァ。もっと上から全体を見るのじゃ。……よし、見えた!
余の脳裏にはそれぞれのピースが嚙み合っている光景が浮かんだ。あとはこの映像通りにパズルを並べていくだけ。
よーし焦るな。こういうのは焦ったらすべてが――。
「――――そこまで!」
………………………………へ?
突如クロメの声音が響き、余の思考がストップする。
無意識にパズルから視線を上げて目の前にいるイスタリを見た。彼女の手前には、三つの完成したパズルが並べられている。
「あ~せっかく急いでって言ったのにぃ~!」
背後から残念そうに声を上げるゼリスがいる。そうか、先程気にも留めなかった彼女の声は、声援ではなく忠告そのものだったのか……。
「……っ、そんな……余の方が早かったはずなのに……」
「へぇ、そうなんだ。相手を見る余裕があったんだね。それじゃ、負けても仕方ないんじゃない?」
イスタリが憮然としたまま言う。
「こういう連動ゲームってのはさ、集中力をいかに切らさないかが勝負なんだよね。いちいち相手に意識を向けたら、その分集中は途切れるし時間のムダになっちゃうんだよ。一つのパズルを解いている間も、次のパズルに意識を集中することが早解きのコツだし」
……そうか。余は一つのパズルをクリアして、その速度に自惚れてしまって費やすべき時間のベクトルを間違っておったというわけか……。
相手の進行速度ばかり気にしてた余と、ただただパズルに集中していたイスタリとは差ができて当たり前だったのだ。
「負け……余の……負け………っ」
「あっ、ご主人っ!」
「主っ!」
「ふんだふんだっ! そなたらなど嫌いじゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!」
余は手に持っていたパズルをテーブルに叩きつけると、側近二人の言葉を背に受けながら感情のままにその場から飛び出していった。
余とイスタリが了承の意味を込めて頷く。
「では両者よろしいですか? 最後の第三番勝負――始め!」
クロメの言葉の終わりと同時に、余はまず《知恵の輪》から手を伸ばした。
クネクネと折り曲がった細い鉄の塊が鎖のように繋がった代物。それを一定の法則で動かすと二つに外れる玩具である。
「むふふ、こういうのは意外に得意なのじゃ! ――ほれ、外れたぞ!」
「きゃー! カッコ良いよぉ、ご主人~!」
「そうであろうそうであろう!」
僅か十秒も満たない時間で一つのパズルをクリアした余をゼリスが称賛の声をかけてくる。
見ればイスタリは、《シルエットパズル》からしているようで、まだ完成に至っていないらしい。
――このままの勢いでいけば!
今度は《魔方陣》に手を伸ばす。
これは正方形の方陣に数字を配置し、縦・横・斜めのいずれの列についても、その列の合計数字が同一になるもののこと。
これは計算力もそうだが、ひらめきが物を言うパズルのはず!
《魔方陣》は3×3だけでなく4×4や5×5など様々にあるらしい。
ふむ、1~9の《魔方陣》の解はすでに見えておるわ!
まず上段の数字を左から6・1・8と書き込む。続いて中段の左から7・5・3。最後に下段の左から2・9・4と書く。
これで縦・横・斜め、どの列を合計しても同じ15になるはず。
おっと、一応確認を…………うむ、なっておるなっておる。
「これで二つ目クリアじゃ!」
またチラリとイスタリを確認してみる。どうやら今から《知恵の輪》を解くようだ。まだ《魔方陣》も残っている様子なので、つい勝利の予感を覚えて笑みが零れる。
背後からゼリスが何か声をかけているが、恐らくまた声援なのだろう。余はそのまますぐに最後のパズルである《シルエットパズル》の攻略に入る。
この《シルエットパズル》というのは、様々な形をしたピースを組み合わせて一つの形を作り上げるパズルだ。
ピースを置く枠が提示されていて、今回は十字架の形をしている。その中に綺麗にすべてのピースが嵌まれば攻略成功である。
ピースは全部で七つ、か。どう組み合わせていけばよいか……。
まずは適当に下部から作ろうとピースを嵌め込んでみる。
「むぅ、これでは合わんか。ならば……」
今度は上部の方から手を出してみるが……。
思った以上に難しい。先程の《知恵の輪》と比べてレベルが格段に上だ。
待て、落ち着くのじゃノーヴァ。もっと上から全体を見るのじゃ。……よし、見えた!
余の脳裏にはそれぞれのピースが嚙み合っている光景が浮かんだ。あとはこの映像通りにパズルを並べていくだけ。
よーし焦るな。こういうのは焦ったらすべてが――。
「――――そこまで!」
………………………………へ?
突如クロメの声音が響き、余の思考がストップする。
無意識にパズルから視線を上げて目の前にいるイスタリを見た。彼女の手前には、三つの完成したパズルが並べられている。
「あ~せっかく急いでって言ったのにぃ~!」
背後から残念そうに声を上げるゼリスがいる。そうか、先程気にも留めなかった彼女の声は、声援ではなく忠告そのものだったのか……。
「……っ、そんな……余の方が早かったはずなのに……」
「へぇ、そうなんだ。相手を見る余裕があったんだね。それじゃ、負けても仕方ないんじゃない?」
イスタリが憮然としたまま言う。
「こういう連動ゲームってのはさ、集中力をいかに切らさないかが勝負なんだよね。いちいち相手に意識を向けたら、その分集中は途切れるし時間のムダになっちゃうんだよ。一つのパズルを解いている間も、次のパズルに意識を集中することが早解きのコツだし」
……そうか。余は一つのパズルをクリアして、その速度に自惚れてしまって費やすべき時間のベクトルを間違っておったというわけか……。
相手の進行速度ばかり気にしてた余と、ただただパズルに集中していたイスタリとは差ができて当たり前だったのだ。
「負け……余の……負け………っ」
「あっ、ご主人っ!」
「主っ!」
「ふんだふんだっ! そなたらなど嫌いじゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!」
余は手に持っていたパズルをテーブルに叩きつけると、側近二人の言葉を背に受けながら感情のままにその場から飛び出していった。
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