どうやらオレは滅びたはずの最強種らしい ~嘘使いの世界攻略~

十本スイ

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「うぐぬぬぬぬぅ、な、ならお相子だろ! お前も名乗れよ!」
「……まあ別にいっか。オレはシンカ。齢は五歳……多分ね」
「何だか五歳に見えねー奴だな……まあいいや。俺はジュダ。んで、お前が坊主頭って呼んだのがダンで、もう一人がガンだ」

 すると紹介を受けた二人が同時に立ち上がった。

「「そう! 僕たちは! 二人合わせて弾丸ブラザーズだ!」」
「………………いきなり何? 末期症状でも患っているの?」
「「ひどっ!?」」

 だって突然ダンとガンが、互いに右腕と左腕を組みながら、もう片方の腕を前に突き出して笑顔を浮かべながら恥ずかしいセリフを言うものだからつい……。

「まあそこは温かい目で見守ってやれよ。本人たちは兄弟でもねえのにノリノリなんだしよぉ。……バカみてーだけど」
「「ひどっ!?」」

 ジュダにも辛辣なことを言われて四つん這いになって凹む弾丸ブラザーズ。確かに名前がダンとガンなので、兄弟っぽいっちゃ兄弟っぽい。
 顔つきはそんなに似ていないが。ガンの方も坊主頭なので弾丸のような頭なのは間違いない。

 ただジュダたちと違って獣耳は発見できない――が、ダンとガンは上向きに尖った耳と褐色の肌を持っている。
 本に書いてあった種族特性から照らし合わせると、彼らは恐らく『魔族(ビルデ)』の血を引くのは間違いなさそうだ。
 また様々な他種族が混じった者のことは『雑種(カウス)』と呼ばれている。きっと他の者たちから見たら、シンカはその『雑種』に見えることだろう。

「……ん?」
「にゃ!?」

 いまだジュダの背後に隠れてシンカをチラチラと見ていた少女と目が合うと、可愛らしい声を上げながら完全に隠れてしまう。

「あー悪いな。コイツはちょっと人見知りでよ。ほら、名乗ってみ?」
「にゃあぁ~」

 恥ずかしいのか、ジュダの身体にしがみついて全体像を見せないようにしている。

「別に嫌ならいいんだけど。興味ないし」
「にゃうぅ!?」
「こ、こら! 興味ないとかうちの可愛い妹がショック受けたじゃねえかぁ!」
「そう言われても……。嫌がる奴から名前を聞き出してもしょうがないし。それにそっちのアホ二人組の自己紹介のインパクトが強過ぎて、逆に名乗らせるのは可哀想じゃない? この流れで笑い取れるの?」
「いやいや取らねえよ、笑いなんて! うちの妹は芸人じゃねーんだぞ!」
「「ちょっと僕たちも言いたいことあるんですけどーっ」」
「「アホ二人組は黙ってろ!」」
「「ひどっ!?」」

 シンカとジュダの物言いに、ダンとガンはさらなるショックを受けて、部屋の隅でいじけ始めた。
 ジュダもさすがに勢い任せに言い過ぎたと思ったのか、二人の慰めムードに入る。
 放置されて暇になったシンカは、再度部屋を見回す。
 本当に何もない部屋だ。こんなところで生活しているのだろうか……?

 ――チョン。

 何やら右腕の甲に小さなものが触れる感触があり、そちらを見てみると、顔を背けながら必死に腕を伸ばしている少女の姿があった。

「……何か用?」
「にゃ!? にゃ、にゃあ……」
「オレには猫語は分からんて」
「う、うぅ……ニヤ」
「だから猫語は分からんって言ってるんだけど」
「ち、ちがくて……そのぉ、ニヤ」
「しつこいと嫁の貰い手がなくなるよ?」
「にゃうっ!? お、おにいちゃぁぁぁぁんっ!」
「どぉうらぁぁっ! 妹を泣かすなよてんめえぇぇっ!」

 暑苦しく憤怒に塗れた表情で詰め寄って襟首を掴んでくるジュダ。

「いや、だって……意味の分からないことばかり言うから」
「はあ? 意味の分からないこと? ……ニヤ?」

 ……ん? ニヤ?

「うぅ~ちゃんとじこしょうかいしたのにぃ~」
「おお、そうかそうか。ニヤは偉いなぁ~」

 ジュダが泣いている妹の頭を優しく撫でている。
 だがちょっと待ってほしい。

「……ねえジュダ。もしかしてそいつの名前……ニヤ、なの?」
「おう、そうだぞ。何だよ、ちゃんと聞いてたんじゃねえかよ! 妹をイジメんなよなぁ!」

 どうやら鳴き声ではなかったらしい。
 まったくもって紛らわしい名前だ。しかし名乗っているのにも関わらずに泣かしてしまったのはシンカの非でもある。

「……ニヤ」
「にゃ!? ……にゃあ?」
「聞き取れなかったというか、読み取れなかった。ごめん」
「! ……う、うん」

 これで全員の自己紹介が終わったところで、今度はジュダたちが一体何者か聞いてみた。
 彼らは全員が、この塔で生まれ捨てられた捨て子なのだという。

 塔の名は――【終始しゅうしの塔】。

 捨てられた子供たちは、この塔の中に数多く存在し、それぞれが集まりコミュニティを作って生活している。
 ストリートチルドレンならぬタワーチルドレンとでもいえばいいのだろうか。
 そこで彼らから塔の現状を聞き、ここが定まった法などない無秩序地帯だということが分かった。

 どうやらシンカが立っている場所は、想像以上に危険度の高いところらしい。
 また当然大人も住んでいて、塔の中で食べ物や日用品などを売買している者もいる。しかしここでは金というよりは、金になる物――つまり物々交換が主流で生活が営まれているとのこと。

 ジュダたちは、ゴミ山だけでなく様々な場所へ赴いて、金目になりそうな物を拾って、それを食べ物と交換してもらい過ごしているようだ。
 こんな人工物の中にも農場などがあり、たまにそこから食べ物を盗んでは食いつないでいるというギリギリの生活を送っていると彼らは言う。

 力があれば、ここに棲息しているモンスターを狩ったりして、その素材を売ったり肉を食べたりできるが、ジュダたちにはその力がないのだ。

「シンカ、お前行くとこねえんだろ?」
「……だとしたら何?」
「俺たちのコミュニティに入れてやってもいい」
「「ええーっ、こんな失礼な奴をー!?」」

 ダンとガンにとっては生意気なガキだろうから、その反応も仕方ないだろう。

「お前たちも分かってんだろ? コミュニティの人数は多い方が絶対的に有利だ。やれることだって多くなるしな」

 人数の少ない子供たちのコミュニティから、どんどん他から搾取されて壊滅していくという。

「戦力ってのは大いにこしたことはねえ。だからシンカ、コミュニティに入れ」

 何となく塔の在り様が見えてきたが、確かに彼らの言うように現状で一人のまま生き抜くのは厳しいものがありそうだ。
 長期間滞在している彼らといれば、塔の内情にも詳しくなれるだろうし、生き抜く術も見つかることだろう。
 だが気になることも、ある。

「命令されるのは嫌だ」
「うぐっ、お、俺がリーダーなんだから命令すんのは当然だろうが!」
「だってジュダ、頭悪そうだし」
「「あ、それは言えてる」」
「うぉい! お前らは味方しろよ近眼ブラザーズ!」
「「別に目は悪くないっちゅーのっ! ていうか、近眼じゃなくてダ・ン・ガ・ン!」」

 何とも息の合ったコンビである。

「……ふふ」
「ほえぇっ! ニヤにまで笑われてるだと!」
「あっ、ごめんねおにいちゃん。そういうのじゃないよ、うん。だっておにいちゃんは、その……かしこい……とおもうし、たぶん」
「多分かよぉぉぉっ!」

 いちいち反応が大きい奴だとシンカは肩を竦める。そんなシンカをギロリと睨みつけてくるジュダ。

「こらシンカ! てめえが余計なこと言うからだぞ!」
「あーオレは根が正直らしいし」
「正直過ぎるわ! 思ったことを何でも口に出してんじゃねーよ!」
「悪い悪い、謝ってあげるから機嫌を直してよ、リーダー」
「だったらふんぞり返ってねーでちゃんと頭下げて言えよ! つうか謝ってあげるって上から目線だしぃ!」
「うるさいぞ、リーダー」
「「そうだそうだぁー」」
「息合い出したなてめえらはぁ!」

 ――不思議だった。ジュダたちと話していると、この居心地感が悪くないと思えてくる。
 四人とも言動は子供だし、取るに足らない小さな存在のはずだ。それなのに、楽しいと感じる。
 初めてこの塔で目が覚めた時、どこかポッカリと空いていた穴が、少しずつ埋まっていくような感覚だ。

(ま、しばらく付き合うのも悪くないかも、ね)

 やはり前世の記憶があるからか、どこか冷めていたシンカだったが、少しの間だけでも一緒にいてやるのも良いと思い、彼らと付き合うことにした。


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