どうやらオレは滅びたはずの最強種らしい ~嘘使いの世界攻略~

十本スイ

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「あ~あ、つうかもうあの店行けねーわ」
「そんなことはないでしょ。これからも仲良くさせてもらえばいい。向こうの弱みを握ってるのはこっちだしね」
「うわぁ、今のお前、すっげえ悪い顔してるわ。ていうかマジで五歳なの、お前って?」
「そんなことどうでもいいじゃん。それより手に入れた食材を早く見せてやる方が先決じゃないの?」
「おお! 確かにそうだな! うし、さっさと帰るぜ!」

 意気揚々といった感じで、想像以上に膨れ上がった報酬を手にし早足で進んでいくジュダ。
 するとその時――ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ!
 けたたましいブザーの音が耳朶を響かせた。

「ジュダ!」
「あ、ああ、また上の連中が降りてきたようだ!」

 一瞬にしてすべての店が封鎖し、まるで災害でも来るかのような準備をし始めた。
 またシンカたちも大急ぎで通路を駆け抜けて、壁の傍に置かれている木箱を素早く駆け上り、その先にある通気口へと身を潜り込ませる。
 そのまま息を殺して様子を伺っていると、遠目の方から破壊音や笑い声などが聞こえてきた。

「…………また来やがった――〝野蛮な毛皮衆バーバリアン〟どもだ」

 ジュダが呟くように口にした名を冠する者たちが、建物を好き勝手に破壊しつつ通路を闊歩している。
 異様なのはその姿で、全員が全身を覆う動物の毛皮を着込んでいるのだ。
 彼らは塔の遥か上層部で生活していると言われている者たちで、時折こうして下の階層に来ては、破壊活動を行いつついろいろ物色し始める。

 抵抗しようにも、一人一人が尋常ではない強さを持っていることから、領域長もこの時ばかりは静かに状況を見守り、彼らが去るのを耐えろと言いつけていた。
 まるで台風のような災害であり、力を持たない者たちはジッと過ぎ去るのを待つしかないのである。

 ただ領域長はできる限り、上の連中には品を流すなと厳命はしていて、彼らの到着が分かり次第、すべての品を隠せと指示を受けているのだ。
 そんな中、一人の〝野蛮な毛皮衆〟が、グレイの店へ入っていく。しばらく様子を見守っていたが、中で暴れている音は聞こえない。

 しばらくして、へーこらへーこらと頭を何度も下げつつ愛想笑いを浮かべるグレイとともに、〝野蛮な毛皮衆〟が出てきた。その手には、グレイから渡されたのか黒く細長い箱が握られている。

(あのオッサン、マジで薬を横流ししてたってわけだ)

 まあ、薬を渡さないと殺すとか言われると仕方ない気もするが、それがバレてしまえば領域長の命令に歯向かった逆賊として処断されてしまう。
 しばらくして気が澄んだのか、〝野蛮な毛皮衆〟たちは再び上層階へと戻っていった。

「……はぁぁぁ~、ったく、何度寿命を縮ませれば気が澄むんだっての」
「確かにね……」

 一度だけ。たった一度だけだが、〝野蛮な毛皮衆〟が戦っているところを見たことがある。
 相手はこの塔に棲息するモンスターで、全身が骨で構成されたスカルモンスターと言われている種だった。スカルモンスターの特徴として、剣や槍の一撃すら傷一つつかない硬度を持つ骨の防御力と、何度倒しても復活する生命力である。

 完全に倒すには核となる部分を、一瞬で消滅させるほどの威力を持つ攻撃が必要だが、パワーもスピードも通常モンスターとは格が違うし、普通は遭遇すれば逃げなければならない。
 しかし〝野蛮な毛皮衆〟は、たった一人で、しかも一撃のまま撃退していたところをたまたま見かけたことがあった。

 この塔は最上階までどれだけの階層があるか、正直なところ誰も分からないらしく、階層ごとにモンスターの質や量なども変わってくる。
 また住んでいる人々の強さもそれに比例するという。

 シンカたちが住む階層部分は、〝黒鉄墓地ブラックエリア〟と呼ばれていて、一階層から三百階層のことである。
 一つの階層の広さは、基本的に一キロメートル以上はあり、規模の大きさを物語っていた。

 そしてそのすぐ上の階層は〝白銀迷宮シルバープリズン〟と名付けられ、〝野蛮な毛皮衆〟はそこから来ていると言われているのだ。

 奴らの搾取は定期的に行われ、どこにでも現れては略奪や破壊などを繰り返し、下層住民たちを蹂躙する。
 中にはまだ大人しい部類もいるらしいが、暴走具合から見ても、今回はまだ大人しい方のタイプだったのだろう。
 それでも見つかっていたら、問答無用に殺されていた可能性の方が高いが。
 シンカたちは命があったことにホッと息を吐きながら、通気口の奥へと向かっていった。


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