どうやらオレは滅びたはずの最強種らしい ~嘘使いの世界攻略~

十本スイ

文字の大きさ
42 / 44

41

しおりを挟む
 騙された七房は勢いに止まれずに突っ込んでくる。
 今度は――。

「今度は再現するわけにはいかないんだよっ!」

 あの川ではこの突きをニヤを庇って受けた。
 しかし今度こそはくらってやるわけにはいかない。
 突き出された剣をかわし、伸びてきた七房の腕を左手で掴む。

「……これでもう、逃がしはしないよ」

 ガッチリと全握力で握り潰す勢いで掴む。
 そして右手に持った剣は地面に突き刺し、そのまま右手を彼女の胸当たりに触れさせる。

 すべての魔力を右手へ――。

 逃げようと試みる七房だが、あちこちから小さな破裂音がして、機敏だった動きが鈍重化する。

「これで今度こそ終わりにするよ七房。オレの勝ちだ。――《魔那砲》ぉぉぉぉっ!」

 文字通り全力全開の魔力を一気に放射した。
 回避することができなかった七房は、魔力の塊を全身に受け吹き飛んでいく。
 そのまま吹き飛んだ先の岩に激突して、直後に凄まじい爆発を引き起こした。

 吹き上がる爆炎と煙。もしかしたらそこから七房が再び姿を見せるかもしれないと思ったが、二度と彼女がそこから現れることはなかった。

「っ……勝った……っ!」

 思わず両拳を固く握りガッツポーズをしてしまった。 
 本能が、魂がこの辛勝を喜んでいたのである。
 だがすぐに勝利の余韻は、絶望へと変わってしまう。
 再度岩の上から鳴り響く拍手の音。――マッチョ男だ。

「見事。そう、見事としか言いようがない」

 そこで初めて気づいたのか、ニヤが〝野蛮な毛皮衆〟だと気づき、もう立つのもやっとなシンカを庇うために前に立った。その顔は真っ青になっている。さすがに相手の力量を感じて敵わないことは分かっているみたいだ。
 逃げろと言いたいが、正真正銘全力を絞り出したせいで声にならない。

「仲間の手助けがあったものの、よもや『殺戮人形』を屠るとはな。下民とは思えぬ力量だ」

 どうする……どうする?

 さすがにこれ以上は戦えない。恐らくだが、相手はあの七房よりも強い。
 今まで出会った〝野蛮な毛皮衆〟の中でも、コイツだけは毛色が違うような気がする。
 心底ヤバイと感じてしまっていた。これがトップクラスと噂される者の存在感なのか。

「まあデータは十分に取れたし結果は良しとできるんだが……」

 そのままできれば去ってくれと願う。

「そうだな……将来的に厄介になりそうな若き芽というのは、どうしてこうもワクワクし……潰したくなるのだろうな」

 刹那、岩の上からまるで雨のように降り注ぐ凶悪なまでの殺気。

「ぁ……あぁ……っ!?」

 目の前に立つニヤが耐えられるものではなく、彼女は全身を震わせ膝をついてしまう。

「ニ……ヤ……!」

 しかし彼女は何を思ったのか、自分の膝を自分で叩き始め、驚くことに立ち上がってマッチョ男を睨みつけたのだ。

「……ほう。死を感じながらも立つ、か。なかなかに面白い粒が育ってる。……お前ら、名を名乗ることを許してやろう」
「………シンカ」
「ニ、ニヤ……です」
「シンカにニヤ、か。光栄に思え。俺が下民に名乗るなどそうはないことだ。故にしかとその脳に刻んでおけ。俺の名は――ゼドムだ」

 マッチョ男がゼドムと名乗り、その視線をシンカへと向けて続ける。

「それにしてもシンカ、お前には大分興味は惹かれた」

 ありがたくないお言葉だ。

「本当によく戦ったものだな――そんな目で」
「――っ!?」

 気づかれていた。右目が機能していないことに。
 上手く誤魔化して戦えていたと思っていたが、格上であろうゼドムには易々と見破られていたようだ。
 その言葉で最高潮に緊張してしまい、息苦しい空気の中、必死でどうこの場をやり過ごすか考えていると――。


「――――ニヤッ、シンカッ!」


 良いのか悪いのか、このタイミングでジュダたちが到着した。

「なっ、コイツは《野蛮な毛皮衆》!?」
「マ、マジかよ!」
「うっそぉ! そんな話聞いてないし!」

 三者三様の反応を見せる。

「何だかよく分かんねえけど、おいこら! ニヤたちを傷つけるってんなら、今度は俺が相手だ!」

 そう言って剣を構えて皆の前に立つリーダージュダ

「「よ、よーし! 頑張れー、リーダー!」」

 その背後でこっそりと応援するハゲ坊主たち弾丸ブラザーズがいた。

「うぉい! そこは手伝えよっ!」

 こんな時にもコントができるとは、さすがはジュダたちである。
 そんな中、ゼドムがクスリと笑みを浮かべながら言う。

「相手をしてやってもいいが、今日はもう大分満足したんでな。次の機会に楽しみは取っておこう」
「ああ? 何だよ強者の余裕て奴か? 俺は別に今からでもほががっ」
「あーっと、分っかりましたー!」
「どうぞどうぞ、お帰りくださって結構でーす!」

 熱くなって余計なことを言おうとしたジュダの口元を慌てて押さえたダンとガン。
 そのままゼドムは踵を返すとその場から退出していった。
 ジュダ以外の全員がホッとし、大きな溜め息とともに尻餅をつく。

「よし! 俺の将来性にビビッて逃げやがったな!」
「……そう思うんなら、少しはその足の震えを止めたら?」
「そうそう、ほんっとに熱血バカはこれだから困る」
「うっせぇよ! 弱腰ブラザーズめ!」
「「何だとこらぁっ! ケンカなら買うぞ、シンカが!」」
「シンカかよっ!」

 と、またコントを始めたところで、シンカはそのまま前のめりに倒れそうになる。

「シンカッ!?」

 そこをニヤが受け止めてくれるが、すべてが終わったことに張り詰めっ放しだった緊張が解かれたこともあり、虚脱感と疲労感が一気に押し寄せてきた。

「ジュダ……悪い。あとは…………頼ん……だ……よ」

 勝手に降りてくる瞼には逆らえず、シンカは意識を闇の中へと沈み込ませていった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

処理中です...