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第十二話
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汗を流したあとは朝食をしっかりと胃袋に収め、学院へ向かう準備をする。
相変わらず朝食も自分の部屋で取ったのか、ヒナテは姿を見せなかった。
ケーテル曰く、ヒナテは先に学院へと向かったらしく、ならオレもそろそろと思い、ケーテルに見送られ屋敷を出る。
今日から本格的な授業が始まるが、どのような未知の体験ができるか楽しみではあった。
その前に、自分が所属するクラス発表があるが、オレは特に興味はない。どこに配属されてもやることは変わらないからだ。
そうして学院へ到着すると、入学生らしき者たちが校内掲示板に群がっていた。
さっそくオレも確認しに向かう。
貼られている紙は全部で六枚。
その内、一枚は校内の見取り図で、それぞれの教室の場所が記されている。
合計で五クラス。各々二十数名ほどで振り分けられているようだ。
「オレは………………【ジェムストーン】?」
恐らくクラスネームであろう【ジェムストーン】と書かれた紙には、いろいろな名前が記載さて、そこにオレの名前もあった。
次に見取り図の方を見て、クラスの場所を把握すると、それに従って校舎へと向かっていく。
そして地図で示された通りの教室の前にまで来たのだが……。
その教室を目にしてクスクス笑いながら、他の教室へと向かっていく生徒たちがいた。
「良かったぁ、俺ってば【ジェムストーン】じゃなくて」
「だよな? だって小物クラスって言われてんだろ? ここって」
小物クラス……?
オレは気になったので、通り過ぎようとしている二人の前に出る。
「!? な、何だよお前?」
「お、おい! コイツってあの時の《黒魔》じゃねえか!」
オレは二人の胸倉を掴み上げると、そのまま壁際に押し付ける。
「ぐぅっ、な、何だよお前! いきなり何すんだよ!」
「黙れ。少し聞きたいことがあるだけだ」
「な、何を――」
「それ以上余計なことを喋れば……分かるな?」
オレがグッと両手に力を込めて殺気を漲らせると、二人は青ざめてコクコクと黙って頷いた。
「よし。なら質問だ。小物クラスとは何だ?」
「そ、それは……ていうか知らないのか?」
「知らないから聞いている。さっさと答えろ」
「わ、分かった! は、話すからとりあえず手をどけてくれ!」
オレは仕方なく二人を解放してやる。しかし殺気はそのままだ。
「え、えっと……小物クラスだったよな? 毎年入学生の中には才能の欠片もない連中がいる。また問題を抱えた奴らとかな。そいつらを一纏めに集めたのが【ジェムストーン】。通称『小物クラス』って呼ばれてるらしいんだよ」
なるほど。彼らの言い分を真意と取るならば、つまりは落ちこぼれだけを詰め込んだクラスってことらしい。
その多くは《白魔》や《青魔》の持ち主。他にも様々な問題児などもいるという。
問題児……異端、つまりオレというわけか。
《黒魔》など学院でも指折りの、下手をすれば超級の問題児であろう。
それこそ学院も扱いに困るほどの。
そして程度の差こそあれ、劣等生を集めたのが【ジェムストーン】というわけだ。
ジェムストーン……原石か。皮肉なネームセンスだ。
「な、なあ、もう行っていいよな?」
「……最後に一つ。お前たちはヒナテ・アルフ・フェイ・メルドアを知っているか?」
「メ、メルドア? ……ああ、『出涸らし娘』のことか?」
「出涸らし?」
「だってそうだろ? 両親は《赤魔》なのに、娘は《白魔》。悲劇の異端児として、昔から有名だったしな」
「お、おう。この王都に住んでる奴らなら誰だって知ってると思うけど」
……出涸らしね。言い得て妙ではある。
それにしても昔から知名度があるとは、貴族の出ということも相まって噂が広がっているのだろう。それに昨日の判別でも、知らない者たちにも周知の事実となったはずだ。
「くふふ、それに今年の《白魔》って、メルドアだけらしいぜ。あ~あ、可哀相にな」
…………。
「才能がねえんだから、わざわざ学院に通ってまで恥を晒すことなんてねえのにな。ああいうのが貴族ってんだから国の将来が心配だぜ」
オレは二人に背を向けると、ようやく解放されたと安心したのか、二人もまたホッとした表情をしながら歩き出そうとする。
だが――。
「「――ぐわっ!?」」
突如二人が足を掴まれたように前のめりに倒れてしまう。
「な、何だよこれぇ! 足が震えて立てねえ!?」
「てか何で俺たち汗塗れなんだよぉ!? ああ、何か意識が薄らいでく……」
「お、俺も……」
何が起きたのか分からず戸惑う二人。ぐったりと床に寝転び意識を混濁させていた。
……ふん。たった数秒ほど魔圧を飛ばしただけでこれか。ヒナテは少なくともお前らよりは耐えたがな。
そう思いながら教室の扉の前へ立ち、おもむろに扉を開いた。
相変わらず朝食も自分の部屋で取ったのか、ヒナテは姿を見せなかった。
ケーテル曰く、ヒナテは先に学院へと向かったらしく、ならオレもそろそろと思い、ケーテルに見送られ屋敷を出る。
今日から本格的な授業が始まるが、どのような未知の体験ができるか楽しみではあった。
その前に、自分が所属するクラス発表があるが、オレは特に興味はない。どこに配属されてもやることは変わらないからだ。
そうして学院へ到着すると、入学生らしき者たちが校内掲示板に群がっていた。
さっそくオレも確認しに向かう。
貼られている紙は全部で六枚。
その内、一枚は校内の見取り図で、それぞれの教室の場所が記されている。
合計で五クラス。各々二十数名ほどで振り分けられているようだ。
「オレは………………【ジェムストーン】?」
恐らくクラスネームであろう【ジェムストーン】と書かれた紙には、いろいろな名前が記載さて、そこにオレの名前もあった。
次に見取り図の方を見て、クラスの場所を把握すると、それに従って校舎へと向かっていく。
そして地図で示された通りの教室の前にまで来たのだが……。
その教室を目にしてクスクス笑いながら、他の教室へと向かっていく生徒たちがいた。
「良かったぁ、俺ってば【ジェムストーン】じゃなくて」
「だよな? だって小物クラスって言われてんだろ? ここって」
小物クラス……?
オレは気になったので、通り過ぎようとしている二人の前に出る。
「!? な、何だよお前?」
「お、おい! コイツってあの時の《黒魔》じゃねえか!」
オレは二人の胸倉を掴み上げると、そのまま壁際に押し付ける。
「ぐぅっ、な、何だよお前! いきなり何すんだよ!」
「黙れ。少し聞きたいことがあるだけだ」
「な、何を――」
「それ以上余計なことを喋れば……分かるな?」
オレがグッと両手に力を込めて殺気を漲らせると、二人は青ざめてコクコクと黙って頷いた。
「よし。なら質問だ。小物クラスとは何だ?」
「そ、それは……ていうか知らないのか?」
「知らないから聞いている。さっさと答えろ」
「わ、分かった! は、話すからとりあえず手をどけてくれ!」
オレは仕方なく二人を解放してやる。しかし殺気はそのままだ。
「え、えっと……小物クラスだったよな? 毎年入学生の中には才能の欠片もない連中がいる。また問題を抱えた奴らとかな。そいつらを一纏めに集めたのが【ジェムストーン】。通称『小物クラス』って呼ばれてるらしいんだよ」
なるほど。彼らの言い分を真意と取るならば、つまりは落ちこぼれだけを詰め込んだクラスってことらしい。
その多くは《白魔》や《青魔》の持ち主。他にも様々な問題児などもいるという。
問題児……異端、つまりオレというわけか。
《黒魔》など学院でも指折りの、下手をすれば超級の問題児であろう。
それこそ学院も扱いに困るほどの。
そして程度の差こそあれ、劣等生を集めたのが【ジェムストーン】というわけだ。
ジェムストーン……原石か。皮肉なネームセンスだ。
「な、なあ、もう行っていいよな?」
「……最後に一つ。お前たちはヒナテ・アルフ・フェイ・メルドアを知っているか?」
「メ、メルドア? ……ああ、『出涸らし娘』のことか?」
「出涸らし?」
「だってそうだろ? 両親は《赤魔》なのに、娘は《白魔》。悲劇の異端児として、昔から有名だったしな」
「お、おう。この王都に住んでる奴らなら誰だって知ってると思うけど」
……出涸らしね。言い得て妙ではある。
それにしても昔から知名度があるとは、貴族の出ということも相まって噂が広がっているのだろう。それに昨日の判別でも、知らない者たちにも周知の事実となったはずだ。
「くふふ、それに今年の《白魔》って、メルドアだけらしいぜ。あ~あ、可哀相にな」
…………。
「才能がねえんだから、わざわざ学院に通ってまで恥を晒すことなんてねえのにな。ああいうのが貴族ってんだから国の将来が心配だぜ」
オレは二人に背を向けると、ようやく解放されたと安心したのか、二人もまたホッとした表情をしながら歩き出そうとする。
だが――。
「「――ぐわっ!?」」
突如二人が足を掴まれたように前のめりに倒れてしまう。
「な、何だよこれぇ! 足が震えて立てねえ!?」
「てか何で俺たち汗塗れなんだよぉ!? ああ、何か意識が薄らいでく……」
「お、俺も……」
何が起きたのか分からず戸惑う二人。ぐったりと床に寝転び意識を混濁させていた。
……ふん。たった数秒ほど魔圧を飛ばしただけでこれか。ヒナテは少なくともお前らよりは耐えたがな。
そう思いながら教室の扉の前へ立ち、おもむろに扉を開いた。
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