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第三十七話
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模擬試合が行われていたドーム会場。
その天井の上には、一人の人物が立っていた。
「ククククク……カーッハッハッハッハ! いい、いいぞ、いいぞっ! もっと騒げ! 血を流せ! 俺様を楽しませろ!」
そこから見える街並みを見ながら高笑いをしている。
街では魔物たちに襲撃を受けた人々が逃げ回り、血を流している姿があった。
「くぅぅっ、この人間どもの声! やはり……良いぃ。わざわざ出張ってきて正解だ! この王都を潰し、また格を上げて奴らを突き放してやろう!」
すると今度は足元に視線を落とす。
そこには穴が開いており、眼下にはバジリスクによってパニックになっている人間たちの姿が見える。
「そろそろ奴らも呼ぶか」
そう言うと、自分の指を噛んで血を流し、穴へとその血を滴り落としていく。
その血が地面に落着する。
「さあ、我が呪力を受けて現れよ――しもべどもよ!」
すると血が付着した部分から赤い陣が出現し、そこから何かが姿を見せた。
ミミズが何万倍と巨大化したようなその風貌。数は全部で十体。
それらは頭部にある大きな口を開き、息を吸い込むような仕草をする。
すると石化した生徒たちから、魔力が流れ出てきて、その生物の口の中へと吸い込まれていく。
戦っている教師たちも、突如現れた生物にギョッとしつつも、バジリスクの相手で手一杯といったところだ。
「カハハ……いいねぇ」
そうして混乱している光景を見て愉快げに笑っていると――。
「――――スネークワーム……なるほどな。すべての事件はお前のせいだったか」
不意に背後から聞こえてきた声に、その人物は即座に振り向く。
そこに立っていたのは――今回の〝新人際〟で、最も注目を浴びたであろうクリュウ・A・ユーダムその人だった。
※
「ほほう、俺に気づく奴がいるとはな」
オレは振り向くそいつを見て目を細める。
「しかしこうなるまで気づかなかったな。お前がまさか魔人だったとは――ロン・ネイト・タック・エリッド」
そう、そこにいたのはオレと同じく模擬試合に出ていたロンだった。
「ロン? ああ、この姿か。これは周りを欺くためのトリックだ」
するとロンの身体が、火がついたロウソクのように解け始めたのだ。
その下から現れた素顔は、褐色の肌に斜め上に尖った耳。そして漆黒の背中に翼といった、魔人特有の人間とは異なるものであった。
同時に溢れ出す呪力。これもまた魔人だけが持つエネルギーである。
救護室でオレが感じたものと同じ質ではあるが、正体を見せたことで爆発的に量が増大した。
「……本物のロンとやらはどうした?」
ヒナテ曰く、エリッド家は間違いなく人間の貴族として存在している。まさか何十年も前から、人を欺くためだけにエリッド家を生み出したとは思えない。
「ああ、当然バレたら面倒だからすでに全員あの世に決まってるだろ? そんなつまんねえこと聞くなよバロォ」
やはり、かと納得する。こんなことを平気で行う輩が、目を付けた人間を生かしているとは思わない。
ただ言えることは、コイツに駒として選ばれたのが不運だったということだけだ。
「にしても初めて会った時や、今回のこともそうだが、てめえ……何者だ?」
初めて会った時、代表者決定戦を発表する掲示板で、生徒たちを魔圧で威嚇した時のことだろう。
「答える義務はないな」
「おいおい、俺は質問してるんじゃねえ。命令してんだよ。素直に言っとけ。俺様の正体を知ったら腰抜かしてビビり過ぎちまって答えられねえからよぉ」
「くどい奴だ。お前程度に答えるつもりなどないと言っている」
すると奴から怒りとともに凄まじい殺意が飛んでくる。
「てめえ……なら教えてやろうか。俺様の名は――レッドウォー。至高にて最強の『七魔』の一角――『強欲の魔王』様だよっ!」
勝ち名乗りのような態度で名乗るレッドウォー。
きっとオレが慌てふためく姿でも予想していたのだろう。しかし……。
「なるほどな、魔王の一人だったか。ならばこの呪力も納得できる」
王都中に数々の魔物を召喚しただけでなく、Sランクの魔物まで使役し、現行の勇者ですら破れないほどの呪力結界を生み出す実力者。
最上級魔人なのは当然だろうが、魔王というのであれば、その力も納得することができた。
それにしてもまさか学院長もジイも、魔王が攻め込んでくるなどとは思ってもいなかっただろう。
しかも生徒の一人に化けてまで、だ。
「何だコイツ、状況が理解できてねえのか?」
オレの落ち着きぶりに、さすがの魔王様も困惑している様子だ。
「さて、とりあえず一応聞いておこうか。何の目的があってこんなことをする? どうやら魔力を収集しているようだが?」
「カハハ、たかが人間に俺様の崇高な目的など理解できるまい」
「ほう、答えられないほど恥ずかしい野望なのか」
「!? いちいちふざけたことを言う奴だな。いいだろう、教えてやろう。どうせ貴様はすぐに死ぬがな」
額面通りの文句はいいからさっさと言え。
「我々魔人にとって人間どもなど矮小な害虫同然。しかしそんな害虫にも利用価値はある。それが魔力よ」
「魔力……ねぇ」
「遥か昔のことだ。ある奴が膨大な魔力を凝縮し結晶化させることに成功した」
…………ん?
「その結晶は、創世時代に生まれたとされる伝説の秘石だった。そしてその結晶は、ありとあらゆる願いを叶えるといわれている」
…………こ、これはまさか……!
「結晶の名は――――――《賢者の石》。最古の願望石と呼ばれる至宝よ」
その天井の上には、一人の人物が立っていた。
「ククククク……カーッハッハッハッハ! いい、いいぞ、いいぞっ! もっと騒げ! 血を流せ! 俺様を楽しませろ!」
そこから見える街並みを見ながら高笑いをしている。
街では魔物たちに襲撃を受けた人々が逃げ回り、血を流している姿があった。
「くぅぅっ、この人間どもの声! やはり……良いぃ。わざわざ出張ってきて正解だ! この王都を潰し、また格を上げて奴らを突き放してやろう!」
すると今度は足元に視線を落とす。
そこには穴が開いており、眼下にはバジリスクによってパニックになっている人間たちの姿が見える。
「そろそろ奴らも呼ぶか」
そう言うと、自分の指を噛んで血を流し、穴へとその血を滴り落としていく。
その血が地面に落着する。
「さあ、我が呪力を受けて現れよ――しもべどもよ!」
すると血が付着した部分から赤い陣が出現し、そこから何かが姿を見せた。
ミミズが何万倍と巨大化したようなその風貌。数は全部で十体。
それらは頭部にある大きな口を開き、息を吸い込むような仕草をする。
すると石化した生徒たちから、魔力が流れ出てきて、その生物の口の中へと吸い込まれていく。
戦っている教師たちも、突如現れた生物にギョッとしつつも、バジリスクの相手で手一杯といったところだ。
「カハハ……いいねぇ」
そうして混乱している光景を見て愉快げに笑っていると――。
「――――スネークワーム……なるほどな。すべての事件はお前のせいだったか」
不意に背後から聞こえてきた声に、その人物は即座に振り向く。
そこに立っていたのは――今回の〝新人際〟で、最も注目を浴びたであろうクリュウ・A・ユーダムその人だった。
※
「ほほう、俺に気づく奴がいるとはな」
オレは振り向くそいつを見て目を細める。
「しかしこうなるまで気づかなかったな。お前がまさか魔人だったとは――ロン・ネイト・タック・エリッド」
そう、そこにいたのはオレと同じく模擬試合に出ていたロンだった。
「ロン? ああ、この姿か。これは周りを欺くためのトリックだ」
するとロンの身体が、火がついたロウソクのように解け始めたのだ。
その下から現れた素顔は、褐色の肌に斜め上に尖った耳。そして漆黒の背中に翼といった、魔人特有の人間とは異なるものであった。
同時に溢れ出す呪力。これもまた魔人だけが持つエネルギーである。
救護室でオレが感じたものと同じ質ではあるが、正体を見せたことで爆発的に量が増大した。
「……本物のロンとやらはどうした?」
ヒナテ曰く、エリッド家は間違いなく人間の貴族として存在している。まさか何十年も前から、人を欺くためだけにエリッド家を生み出したとは思えない。
「ああ、当然バレたら面倒だからすでに全員あの世に決まってるだろ? そんなつまんねえこと聞くなよバロォ」
やはり、かと納得する。こんなことを平気で行う輩が、目を付けた人間を生かしているとは思わない。
ただ言えることは、コイツに駒として選ばれたのが不運だったということだけだ。
「にしても初めて会った時や、今回のこともそうだが、てめえ……何者だ?」
初めて会った時、代表者決定戦を発表する掲示板で、生徒たちを魔圧で威嚇した時のことだろう。
「答える義務はないな」
「おいおい、俺は質問してるんじゃねえ。命令してんだよ。素直に言っとけ。俺様の正体を知ったら腰抜かしてビビり過ぎちまって答えられねえからよぉ」
「くどい奴だ。お前程度に答えるつもりなどないと言っている」
すると奴から怒りとともに凄まじい殺意が飛んでくる。
「てめえ……なら教えてやろうか。俺様の名は――レッドウォー。至高にて最強の『七魔』の一角――『強欲の魔王』様だよっ!」
勝ち名乗りのような態度で名乗るレッドウォー。
きっとオレが慌てふためく姿でも予想していたのだろう。しかし……。
「なるほどな、魔王の一人だったか。ならばこの呪力も納得できる」
王都中に数々の魔物を召喚しただけでなく、Sランクの魔物まで使役し、現行の勇者ですら破れないほどの呪力結界を生み出す実力者。
最上級魔人なのは当然だろうが、魔王というのであれば、その力も納得することができた。
それにしてもまさか学院長もジイも、魔王が攻め込んでくるなどとは思ってもいなかっただろう。
しかも生徒の一人に化けてまで、だ。
「何だコイツ、状況が理解できてねえのか?」
オレの落ち着きぶりに、さすがの魔王様も困惑している様子だ。
「さて、とりあえず一応聞いておこうか。何の目的があってこんなことをする? どうやら魔力を収集しているようだが?」
「カハハ、たかが人間に俺様の崇高な目的など理解できるまい」
「ほう、答えられないほど恥ずかしい野望なのか」
「!? いちいちふざけたことを言う奴だな。いいだろう、教えてやろう。どうせ貴様はすぐに死ぬがな」
額面通りの文句はいいからさっさと言え。
「我々魔人にとって人間どもなど矮小な害虫同然。しかしそんな害虫にも利用価値はある。それが魔力よ」
「魔力……ねぇ」
「遥か昔のことだ。ある奴が膨大な魔力を凝縮し結晶化させることに成功した」
…………ん?
「その結晶は、創世時代に生まれたとされる伝説の秘石だった。そしてその結晶は、ありとあらゆる願いを叶えるといわれている」
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