23 / 69
22
――深夜。
以前ならここは、そこかしこにネオンが輝く眠らない町となっていた歓楽街の一種だったが、今は建物も崩れ街灯なども失われた闇の廃墟となっていた。
しかしそんな場所で、懐中電灯を装備した者たちが、キョロキョロと周囲を見回しながら歩いている。
「確かここらへんがコンビニだった……よな?」
「そうだっけ? 瓦礫に埋もれてるし暗くて分かんねえし」
明かりに照らされて、そこに立っているのが三人の男性だということが分かる。
この男たちは、現在ともに過ごし活動している。それぞれ名を勇也、武志、伸司といった。
「てか何でこんな夜に探索すんだよ。マジで何も見えねえじゃんか。ゾンビに襲われたらどうすんだよ!」
伸司が愚痴を言いながらも、手に持っている懐中電灯で瓦礫を照らして何かを探している。
「大声出すなって。しょうがねえだろ。この時間じゃなきゃ、他の連中に出くわしたりして下手すりゃ奪い合いの殺し合いになっちまうんだから」
勇也が諭すように言うと、
「そうそう。だからさっさと残ってる物資でも探して帰ろうぜ」
それに次いで武志が明るい声音を発した。
世界が終末を迎えたこの時代。無差別に襲い掛かってくるゾンビも恐ろしいが、それよりも厄介なのが同じ生きた人間たちである。
生きるためなら平気で他人を踏み躙る連中が一気に増加した。無秩序になったせいもあり、暴力で弱者を支配しようとする輩が増えたのである。
その中にはヤクザや不良、犯罪者だった連中もいて、平和に過ごしていた一般人にとってはゾンビと同様に厄介な存在でしかない。
実際に被害に遭ったという話は珍しくもないし、国や警察が機能していない以上、これからも増え続けていくのは間違いない。
そんな中で弱者である彼らができるのは、日中は音も立てずにひっそりと暮らし、こうして誰も出回らない時間帯に物資を探索することだけ。無論リスクは高い。
ゾンビは夜になると活性化し凶暴さが増すし、探索したとしても必ず物資が手に入るというわけでもない。それでも生きるためには食料や水は必要であり、危険を承知でもこうして探索しに来るしかないのである。
「はぁ……いつまでこんなこと続くんだよ」
「嘆いてないで動けって、伸司」
「へいへい……って、あれ? 武志は? アイツ、どこ行ったんだよ?」
近くにいるはずのもう一人の仲間の姿が見えずに、二人は顔を見合わせて首を傾げる。
「あの野郎、もしかしてビビッて逃げやがったな」
「マジかよ……じゃあ何か見つけてもアイツには無しだな」
「当然だな。水だっておちょこ一杯だけだ」
「ハハハ、そりゃいいや!」
恐ろしい環境の身の上にいるのにもかかわらず二人は楽しそうに笑う。いや、そうして無理矢理にでも明るくしていなければ、この状況に心が参ってしまうのだろう。
「ていうかさっきから何か臭くね?」
「……そうだな。何か腐ったようなニオイがするな」
二人はもしかして腐った死体でも近くにあるのか、それともゾンビが近づいてきているのかと不安になるが、そのまま沈黙が続いたまま何も起きない。
二人はホッと安堵し胸を撫で下ろした直後、すぐ傍にある瓦礫の奥の方からドサッという音が響く。
「!? ……今、何か音がしたよな?」
「あ、ああ……! もしかして武志の奴、俺らを驚かせようって隠れてんじゃねえだろうな?」
「へ? ……ちょっと見てくるわ」
伸司が探索していた手を止めて、音がした方へゆっくり向かって行く。
残った勇也が「気を付けろよ」と注意を促し、再び中腰になって物資探索に集中し始める……が、
「――うっ、うわぁぁぁぁぁっ!?」
突然探しに行ったはずの伸司の悲鳴が上がる。その声に、ただならぬものを感じた勇也は、弾かれるように身構えて伸司がいるであろう方角を見つめた。
「お、おい……し、伸司?」
しかし声をかけても伸司からの応答はない。
「あ、ははは……あ、あれだろ? お前も武志とグルになって俺を驚かせようッてしてんだろ?」
そう口にしているが、言葉が不安と恐怖からか震えてしまっている。
勇也が足を動かせずに立ち尽くしていると、ポタポタと何かが頭上から降ってくる感触があった。
「ひっ!? ……あ、雨……か?」
頭上を見上げても暗いからよく分からず、頬についたであろう雫を無造作に拭き取って、何気なく懐中電灯で照らして確認する。
そこで気づく。自分の頬に落ちたものが雨ではなかったことに。
よく見ればそれは緑色の液体であり、ドロリと粘着質をしていて……。
「熱っ!?」
何故かその液体から熱を感じて、反射的に手を大きく振った。すると同じように直接身体に付着した液体からも熱が発せられ、慌てて全身を振りながら手で払い落していく。
「っ!? ああもう、何だってんだよっ!」
訳も分からず焦っていると、目前に何か大きなものがドサッと落ちた。
ビクッとして硬直し、それでも確認しようとそこへ懐中電灯を向ける。
そこには――――緑色の液体に包まれゾンビのように腐食した伸司が横たわっていた。
「うわぁぁぁぁぁぁあああああっ!?」
思わず叫び声を上げながら腰が抜ける勇也。
「し、し、伸司……な、何で……っ!?」
パニックになる勇也だが、彼をさらに恐怖に陥れる事態が起きてしまう。
先ほどと同様に、またも頭上から緑色の液体が降ってくる。しかし今度は大小様々な塊で、それらが付着した地面はゆっくり溶け出していく。
「い、い、一体……何なん……っ!?」
手に持った懐中電灯で頭上を照らす。いや、照らしてしまった。
明かりの中にぽっかりと浮かび上がったのは、勇也を見下ろすほどに大きな〝バケモノ〟の姿。
思わず悲鳴を上げようとした瞬間、勇也は即座にして何かに包まれてしまい意識が闇の中へと溶けたのである。
以前ならここは、そこかしこにネオンが輝く眠らない町となっていた歓楽街の一種だったが、今は建物も崩れ街灯なども失われた闇の廃墟となっていた。
しかしそんな場所で、懐中電灯を装備した者たちが、キョロキョロと周囲を見回しながら歩いている。
「確かここらへんがコンビニだった……よな?」
「そうだっけ? 瓦礫に埋もれてるし暗くて分かんねえし」
明かりに照らされて、そこに立っているのが三人の男性だということが分かる。
この男たちは、現在ともに過ごし活動している。それぞれ名を勇也、武志、伸司といった。
「てか何でこんな夜に探索すんだよ。マジで何も見えねえじゃんか。ゾンビに襲われたらどうすんだよ!」
伸司が愚痴を言いながらも、手に持っている懐中電灯で瓦礫を照らして何かを探している。
「大声出すなって。しょうがねえだろ。この時間じゃなきゃ、他の連中に出くわしたりして下手すりゃ奪い合いの殺し合いになっちまうんだから」
勇也が諭すように言うと、
「そうそう。だからさっさと残ってる物資でも探して帰ろうぜ」
それに次いで武志が明るい声音を発した。
世界が終末を迎えたこの時代。無差別に襲い掛かってくるゾンビも恐ろしいが、それよりも厄介なのが同じ生きた人間たちである。
生きるためなら平気で他人を踏み躙る連中が一気に増加した。無秩序になったせいもあり、暴力で弱者を支配しようとする輩が増えたのである。
その中にはヤクザや不良、犯罪者だった連中もいて、平和に過ごしていた一般人にとってはゾンビと同様に厄介な存在でしかない。
実際に被害に遭ったという話は珍しくもないし、国や警察が機能していない以上、これからも増え続けていくのは間違いない。
そんな中で弱者である彼らができるのは、日中は音も立てずにひっそりと暮らし、こうして誰も出回らない時間帯に物資を探索することだけ。無論リスクは高い。
ゾンビは夜になると活性化し凶暴さが増すし、探索したとしても必ず物資が手に入るというわけでもない。それでも生きるためには食料や水は必要であり、危険を承知でもこうして探索しに来るしかないのである。
「はぁ……いつまでこんなこと続くんだよ」
「嘆いてないで動けって、伸司」
「へいへい……って、あれ? 武志は? アイツ、どこ行ったんだよ?」
近くにいるはずのもう一人の仲間の姿が見えずに、二人は顔を見合わせて首を傾げる。
「あの野郎、もしかしてビビッて逃げやがったな」
「マジかよ……じゃあ何か見つけてもアイツには無しだな」
「当然だな。水だっておちょこ一杯だけだ」
「ハハハ、そりゃいいや!」
恐ろしい環境の身の上にいるのにもかかわらず二人は楽しそうに笑う。いや、そうして無理矢理にでも明るくしていなければ、この状況に心が参ってしまうのだろう。
「ていうかさっきから何か臭くね?」
「……そうだな。何か腐ったようなニオイがするな」
二人はもしかして腐った死体でも近くにあるのか、それともゾンビが近づいてきているのかと不安になるが、そのまま沈黙が続いたまま何も起きない。
二人はホッと安堵し胸を撫で下ろした直後、すぐ傍にある瓦礫の奥の方からドサッという音が響く。
「!? ……今、何か音がしたよな?」
「あ、ああ……! もしかして武志の奴、俺らを驚かせようって隠れてんじゃねえだろうな?」
「へ? ……ちょっと見てくるわ」
伸司が探索していた手を止めて、音がした方へゆっくり向かって行く。
残った勇也が「気を付けろよ」と注意を促し、再び中腰になって物資探索に集中し始める……が、
「――うっ、うわぁぁぁぁぁっ!?」
突然探しに行ったはずの伸司の悲鳴が上がる。その声に、ただならぬものを感じた勇也は、弾かれるように身構えて伸司がいるであろう方角を見つめた。
「お、おい……し、伸司?」
しかし声をかけても伸司からの応答はない。
「あ、ははは……あ、あれだろ? お前も武志とグルになって俺を驚かせようッてしてんだろ?」
そう口にしているが、言葉が不安と恐怖からか震えてしまっている。
勇也が足を動かせずに立ち尽くしていると、ポタポタと何かが頭上から降ってくる感触があった。
「ひっ!? ……あ、雨……か?」
頭上を見上げても暗いからよく分からず、頬についたであろう雫を無造作に拭き取って、何気なく懐中電灯で照らして確認する。
そこで気づく。自分の頬に落ちたものが雨ではなかったことに。
よく見ればそれは緑色の液体であり、ドロリと粘着質をしていて……。
「熱っ!?」
何故かその液体から熱を感じて、反射的に手を大きく振った。すると同じように直接身体に付着した液体からも熱が発せられ、慌てて全身を振りながら手で払い落していく。
「っ!? ああもう、何だってんだよっ!」
訳も分からず焦っていると、目前に何か大きなものがドサッと落ちた。
ビクッとして硬直し、それでも確認しようとそこへ懐中電灯を向ける。
そこには――――緑色の液体に包まれゾンビのように腐食した伸司が横たわっていた。
「うわぁぁぁぁぁぁあああああっ!?」
思わず叫び声を上げながら腰が抜ける勇也。
「し、し、伸司……な、何で……っ!?」
パニックになる勇也だが、彼をさらに恐怖に陥れる事態が起きてしまう。
先ほどと同様に、またも頭上から緑色の液体が降ってくる。しかし今度は大小様々な塊で、それらが付着した地面はゆっくり溶け出していく。
「い、い、一体……何なん……っ!?」
手に持った懐中電灯で頭上を照らす。いや、照らしてしまった。
明かりの中にぽっかりと浮かび上がったのは、勇也を見下ろすほどに大きな〝バケモノ〟の姿。
思わず悲鳴を上げようとした瞬間、勇也は即座にして何かに包まれてしまい意識が闇の中へと溶けたのである。
あなたにおすすめの小説
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~
虎柄トラ
ファンタジー
下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。
意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。
女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。
敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。
剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。
一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。
快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~
仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。
ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。
ガチャ好きすぎて書いてしまった。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~
荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。
それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。
「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」
『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。
しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。
家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。
メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。
努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。
『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。