ただ一人、男なのに動かせるロボット戦記 ~女嫌いな少年傭兵~

十本スイ

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第四十話

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「――な、何だいあの機体は!?」

 その言葉は、突如現れた《精霊人機》が、リューカが相対しているフリーダの味方ではない可能性が高いと知る。

「見たことも無い機体だね。ということは……専用機? 一体何でこんな場所に? 誰が乗ってんだい?」

 疑問は尽きることはないようだ。
 それはリューカだってそうだが、眼下に佇む仲間たちを見て状況を把握できた。

「ウラシマがいない……それにあの子たちもどこだ?」

 以前自分と契約を試した三人の幼女たちが見当たらない。
 世廻と《精霊幼女》たちがいない。
 代わりに専用機らしき《精霊人機》が出現した。
 これが示すのはただ一つの答えだ。

「そうか……あの子たちと契約できる者が現れたということか」

 思えばリィズたちを初めて見た時、それは契約を施すための邂逅だった。
 しかしリューカと彼女たちとでは相性が悪かったらしく、残念ながら《宿主》になることができなかったのである。

 それからリィズたちは城に仕える者たちと儀式を行ったが、その都度失敗に終わっていた。
 リューカは、現在の《絆精霊》であるシュイニャオと出遭うことができたが、彼女たちは役立たずのレッテルを張られ、城から追い出される形で診療所へと預けられることになったのである。

 しばらくはその表情を陰らせ生活していたらしいが、優しいリーリラと接することで少しずつ元気を取り戻していったらしいが、やはり気にはなっていた。

「良かったな、《宿主》が見つかったのだな。それにしても……美しい機体だ」

 自分の《ブルーフォウル》もまた自慢できるほど美麗な佇まいではあるが、世廻の機体もまた凛としてその造形美に見惚れてしまう。

「ま、まあいい。専用機といえどどうせ一機だけじゃフェンリルに勝てやしないさ」
「さあ、それはどうかな」
「何?」
「アレに乗ってるのは、只者ではないぞ?」
「!? ……その言い分、やはり仲間かい。ちっ、そんな情報なんて無かったというのに。あのクソ女……また情報不足じゃないか」

 クソ女とは誰のことだか分からないが、確実に焦りが見えてほくそ笑んでしまう。
 同時にリューカの胸に安堵感とともに高揚感が込み上げてくる。
 何故だか分からないが、世廻に任せればきっと何とかしてくれるという不可思議な予感があるのだ。

「さあ、私たちもウラシマに負けないようにやるよ、シュイニャオ!」

 動揺を隠し切れていないフリーダに向かって突っ込んでいった。


     ※


 次に目の前に飛び込んできた光景は、見慣れないコックピットの中だった。
 視線の先にはモニターがあり、左右の両腕が伸びるところにはハンドグリップを模ったようなハンドルがそれぞれ設置されている。

 そのハンドルは《ドヴ》に搭載されていた両腕を置く水晶玉を削って作られているような色合いを持っていた。
 またグリップする指それぞれにボタンが備わっていて、恐らく細かな操作をこれでできるようにしているのだろう。

 考えるだけで動いていた《ドヴ》よりは、こうして自ら操作して動かせる方が世廻的には助かる。
 両足にはペダルもあり、それは《ドヴ》の時と変わらない。

 変わるとしたら、周りがプラネタリウムのようなドーム状になっていることか。
 鏡……ではないようだ。

「セカイさん、聞こえますか?」

 懐に入れたカードから声が聞こえたので三枚とも取り出す。

「そこにいるんだな、リィズたち」
「はい!」
「いるのだ!」
「いましゅ!」

 三人ともこんな状況になってもちゃんと会話できるようで何よりだ。

「セカイさん、モニターを見てください」

 リィズに促され確認してみると――。

〝PLEASE MY NAME〟

 直訳すれば名前が欲しいということだが。

「名付けろってことか?」
「はい。あたしたちの子供の名前です!」
「ぶっ!?」

 思わず吹いてしまった。いや、これが鼻血ではなくて良かったと思う。

「こ、子供ってリィズ?」
「だ、だって!」
「そうなのだ! この子はロクたちとセカ兄から生まれたのだ!」
「あ、あ、あ、愛の結晶なのでしゅぅ!」

 あ、愛……だと?

 と、鼻の奥から熱いものを感じたが、必死に堪えて喉の奥へと流した。
 喜ばしい限りだが、今はそれよりも優先すべきことを忘れてはならない。

「名前を付けてあげてください。それでこの子はきっと……戦えます!」
「…………分かった」

 スッと瞳を閉じる。
 とはいってもほんの僅かな時間だった。
 それはすぐに脳裏に浮かび上がってきたのだから。

「――――決めた。お前の名は――」

 スーッと息を吸い込み、刻み付けるように言い放つ。


「――――《三ツ巴》だ!」


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